お父さんも遊びたい3
10本先取であるにもかかわらず、ジークと父の1対1バスケット勝負は長く続いていた。
お互い激しい攻防を繰り広げ、最初にリーチがかかったのは父の方だった。
「はぁ……はぁ、先取点取られたときは負けるかな? って思ってたけど……やっとここまで来た。勝たせてもらうよ。ジークくん」
「そう簡単に負けるわけにはいきません。全力で自分も勝ちに行きます」
父はジークにボールを渡し、守りに入る。ジークはゆっくりとドリブルをつき、父の守りを分析する。
だんだん慣れてきたのか、父の守り方が良くなり、明らかにジークは攻めづらそうな動きを見せる。
「まさか経験者のジークを追い詰めるなんて……アイツも結構やるね」
「さあ、来ても良いよ!」
その時、父の挑発に対して笑みを浮かべたジークは、その場でシュートモーションに入り、遠距離からシュートを放つ。
私と父はボールが描く軌道を眺め、ボールは何にも阻まれることなく、ゴールに入る。
「なぁ!?」
あまりのショックに父は声を上げ、綺麗な弾道で入ったシュートに感動した私は声も出せずにいた。
綺麗すぎる……初心者の私が見ても今のシュートは綺麗だった。あまりの綺麗さに、鳥肌が立ちそう……。
「これでイーブンですね。旦那様」
「ぐぬぬ……わざわざリスクを背負ってまで同点にしてきたか」
「旦那様の守りが強固になってきたため、遠距離シュートを選択させてもらいました。賭けでしたが、入ってホッとしています」
しかし、ジークの表情は誰がどう見ても、入って当然でしょ? と言わんばかりの表情だった。
とてもホッとしているような人の表情には見えないんだけど? 嘘つくなら、もっとまともな嘘つくか、本当にホッとしている態度を取りなさいよ。
「……まあ、良いや。追いつかれただけだ。僕がシュートを決めれば勝ちが決まる」
「お言葉ですが、私が大人しくシュートを決めさせると思いますか?」
2人は軽く笑みを浮かべ、一瞬の静寂が緊張を感じさせる。私は唾を飲み込み、2人の勝負の結末を見守った。
ジークは父にボールを渡し、父はボールを手に取った瞬間、ゴールに向かって一気に駆け出す。
「突っ込んだ!?」
ジークは驚いたような表情を浮かべながらも、懸命に父を止めようと足を動かす。父はジークが自分に並んでくるだろうと思った瞬間、ピタッと足を止め、ペースを崩す。
完全にタイミングをずらしたと確信した父は、ゴールに向かってシュートを放とうとする……が、持っていたボールは無情にも自分の手からすっぽ抜けてしまう。
「何ッ!?」
下に視線を向けると、そこにはジークの手があり、シュートモーション前に弾かれていたのだった。
「緩急をつけるのは見事ですが、ボールの位置が低すぎます。それだと今みたいに弾かれてしまいますよ」
「ぐぬぬ……」
見事ゴールを死守したジークに、もう一度攻めのチャンスが訪れ、父から渡されるボールを待っていた。
父はジークにボールを渡す前に、深呼吸を行い、集中力を高める。
そして、ジークの手にボールが……渡る。
ボールを手にしたジークはトップスピードで父を抜き去ろうとする。ギリギリ反応した父はジークに並び併走する。
「抜かせないッ!!」
ジークの前に立った父は両腕を伸ばし、ジークのシュートを阻止する体勢に入る。しかし、ジークはスピードを落とすことなく、地面を踏み切り、高く跳ぶ。
「これで終わりです!」
「絶対止める!!」
父も高く跳び、ボールをはたき落とそうとする。だが、悲しくも父の手は空を裂いただけだった。
「なッ!?」
父は目を丸くし、滞空しているジークを見つめる。そして、ジークは容赦なくゴールにそのままボールをぶち込む。
けたたましい音と共に、ジークの勝利が確定する。
「む……無理矢理押し込んだ」
あまりの衝撃プレーに私は目を丸くする。手に汗握る激闘の末、勝ったのは経験者のジークだった。
父は地面に寝そべり、乱れた呼吸を整えようとする。
「はぁ……はぁ、負けたか」
「対戦ありがとうございます。とても楽しかったです。旦那様」
ジークは寝ている父に手を差し伸べ、父はガッチリとその手を掴んだ。
「こっちも楽しかったよ。久しぶりに運動できてスッキリした」
父は上半身を起こし、私は2人に駆け寄る。
「すっごい!! 2人とも凄かったよ!!」
「ミーナ……」
「お嬢様……楽しんでいただけて何よりです」
私は負けて少し悔しそうな表情を浮かべている父に視線を合わし、率直に思ったことを口にする。
「お……お父さん。か……格好よかったよ」
父は目を丸くして、私と目を合わせる。
何か……見つめられると恥ずかしい。
「ミーナ……もう一回言って」
嫌だ……だけど……。
「……また遊んでね」
父は言葉を返すことなく、ニッコリと笑みを浮かべる。私も自然と笑みを浮かべ、転がっているボールを拾う。
「私も上手くなるから、いずれ勝負してね」
「分かったよ」
その時、通信バットが上空を飛び回り、私の頭上に降り立とうとしていた。
「え? 通信バット?」
通信バットを見た瞬間、父は顔を青ざめ、私とジークは首を傾げる。
『あ、ミーナちゃ~ん』
通信バットが放つ声は母の声だった。
「何? 私の頭上に通信バット降り立たせないでよ」
『ああ……そんなところに降り立ってしまったの? ごめんね~』
絶対謝る気ないでしょ?
「何のようなの?」
『いやいや、そこにいる1時間以上もサボっている男を連れ戻して欲しいなぁって思ってるの』
私とジークは同時に父に目を向け、父は上着を持ってどこかに逃げようとしていた。
「そう言うことなので、僕はこれにて……」
その時、ジークが父の肩に手を置き、逃がさないようにしていた。
「奥様。今お連れしますね」
『頼むわ~。ジークくん。さあ、あなた。しっかりサボった分の仕事はしてもらいますからね~』
父は恐怖からなのか体を震わせ、ジークに強制連行されていった。
「ゆ、許してぇ!! サロミアちゃん!! ミーナ! 一緒に弁明してくれぇ!!」
嫌だよ。誰が弁明するかよ。自業自得だろ。
私は少し悩んだフリをし、背を向けて手を振る。そして、父の悲鳴が綺麗な青空に響き渡った。
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