竜人族3
地下室のベッドに、竜人族の少年を寝かせ、申し訳ないが両手を拘束させてもらった。
「これで暴れても大丈夫です」
「すまないわね。嫌なことさせて」
「お気になさらず。仕事ですから」
「傷口は開いてなかったけど、暴れられるのは困るから鎮静薬と精神安定薬を投与したよ」
私はコクリと頷いて、近くにあった椅子に座る。
「……ジーク、シャフリ。頼みがあるわ」
「何でしょう?」
「何?」
「この子は人間に対して強い憎しみを抱いているわ。だから、しばらくの間、面倒は私や人外種のソフィアたちが見るわ」
「そんな! 危ないよミーナちゃん! 私が連れて来たんだから私が責任を持って最後まで……」
「私は半分人間で半分吸血鬼。人間でもあり、人外種でもあるわ。いざとなれば、また取り押さえる。それに、アンタをこれ以上、危険な目に合わせたくない」
「ミーナちゃん……」
真剣な眼差しでシャフリを見つめ、シャフリは言葉を返すことが出来ず、視線を下に向ける。
「自分はお気持ちを尊重させていただきます」
「ジークさん!」
「ですが、条件があります」
「条件? 言ってみなさい」
「彼に提供するお料理は、自分とシャフリ様がご用意します」
「え?」
「ふーん……」
突然名前を挙げられたシャフリはジークを二度見し、私は顎に手を当てて、ジークの目論見を見抜こうとする。
「ちょ、ちょっと待ってください! ジークさん! 私、料理は出来ますけど、他人に振る舞えるような腕じゃ……」
「それは自分と一緒に練習しましょう。料理も魔法と同じです。努力して、思いを込めて作れば、きっと美味しいって言ってもらえますよ」
「……なるほど。分かったわ。アンタたちに頼むわ」
私はゆっくりと立ち上がり、地下室の扉を開けて、部屋を出ようとする。
「……ジーク」
「はい」
「……きっと上手くいくわ。ジークの思っている通りに」
「お嬢様の期待を裏切らないよう、頑張ります」
私は2人より先に地下室を後にし、ジークはシャフリの手を握って目を輝かせる。
「それでは早速、シャフリ様の腕前を拝見させてもらいましょうか」
「え? 今ですか?」
「はい! 思い立ったら即行動です!」
ジークとシャフリが勢いよく地下室を飛び出し、シャフリは涙を浮かべて叫び声を上げる。
「私は思い立ってないですよぉ〜!!」
◇◇◇
執務室に戻ったエディックは、通信バットを使ってサロミアに先刻の出来事を報告する。
「サロミアちゃん。今良いかな?」
『大丈夫よ。一体どうしたの?』
「竜人族の少年が目を覚ました。だけど、自我を失っていたみたいで、僕たちに攻撃を……酷く人間を憎んでいたよ」
『そう……それで? 取り押さえたの?』
「うん。ミーナが取り押さえてくれたよ。また意識を失って、今は地下室に監禁しているよ」
『そっか……分かったわ』
サロミアの声が低くなったことを感じたエディックは、向こうの状況を聞き出そうとする。
「そっちはどう? もう着いたの?」
『いや。雨が酷くて中々前に進めないの。もうしばらくかかるんだけど……嫌なものを見てしまってね』
「嫌なもの?」
エディックは目を細め、サロミアに言葉の続きを求める。
『数分前だけど、500人ほどのアルカディア兵士たちを見かけたわ……重装備でね』
「アルカディア兵士……シャフリちゃんの推測は正しかったか」
『兵士たちの中に……事件の元凶と思われる人物を確認したわ』
「……いたの? リギル・アルカディアが」
『ええ』
シャフリとミーナの推測が当たり、エディックは眉をハの字にする。
『私とお父様は竜人族の集落を見てくるわ。多分……ダメでしょうけど』
「気をつけてね。よろしく頼むよ」
『ええ。出来るだけ無駄な戦闘は避けるつもりよ。安心して。それで……アナタはどうするの?』
瞼を閉じて、深く息を吸い込んだエディックは、通信バットを強く握り、思いを口にする。
「今からアルカディア国王のところへ行ってくる」
握っている通信バットが「ピーッ!!」と鳴き、苦しそうにもがく。強く握りすぎたことを知ったエディックは、思わず通信バットを放す。
『恐らくヨハネスも、一連の事件は知っているわ。ヨハネスが今知りたいのは……』
「リギル王子の目的。そして、現在地……目的は未だに分からないけど、サロミアちゃんが目撃した場所を教えてくるよ。全く知らないよりはマシだと思うし」
『……アナタには迷惑かけるわね。よろしく頼むわ。だけど、竜人族の少年のことを最優先に考えて、動いてね。大切な証言者なんだから。絶対に死なせないでね』
「了解」
通信を終了し、飛び去っていく通信バットを見つめながら、エディックは雨合羽に袖を通す。
「……盗み聞きとは感心しないね。カーリーちゃん」
入り口の扉が開き、エディックに姿を見せたカーリーは執務室の中に入り、扉を閉める。
「申し訳ございません。故意でやろうとしたわけではありません」
「分かっているよ……付いてくるつもりかい?」
「不要と思われるかもしれませんが、自分を護衛に。屋敷のことはメイドたちやソフィアさんたちに任せています。それに、お嬢様とジークさんがいるので問題はないと思います」
カーリーの瞳を見た瞬間、エディックは何かを感じ取り、笑みを浮かべてコクリと頷く。
「分かった。頼むよ」
「御意」
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