竜人族2
「国際問題? それってマズいんじゃ……」
震えた声で父に尋ねようとした瞬間、シャフリが冷静な口調で口を挟む。
「それはあり得ません」
「あ、あり得ないって……何で言い切れるの?」
「シャフリちゃん。意見を聞かせてもらおうか」
私たちに背を向けたまま、シャフリは思いを口にする。
「ネプカトゥーレの兵士たちは魔法を使っても、近接武器に纏う方法です。切り傷なら可能性はありましたが、この子の傷は弾傷がほとんどです。ネプカトゥーレが攻撃したとは考えられません」
「そんな……それじゃあ、一体誰が?」
「可能性があるとすれば……」
「アルカディア」
シャフリの言葉の続きを父が口にし、私は目を見開く。
「そんな……何で慕っている種族に攻撃を?」
「詳しいことはこの子が目を覚めてからじゃないと分からないけど、私はそう思っている。ネプカトゥーレがそんなことをするはずがない」
私はシャフリを無理やり向き合わせ、服を掴む。
「アンタ……ネプカトゥーレ出身だからって贔屓しているの?」
「ミーナ、やめろ」
父が静止に入るが、私は沸々と込み上げてくる思いを口にする。
「アルカディアが……国王がそんなことするはずないわよ!」
大声を出しかけた瞬間、父が口に手を当ててくる。
「……静かにしてくれ。先に言われただろ?」
冷静さを取り戻した私は一歩下がって、大きく息を吸う。
「……ごめん。大声出さない約束だったわね」
「ううん。気持ちは分かるよ。だけどね、ミーナちゃんも分かるでしょ? 今のアルカディアは何かがおかしい。友好関係を築いているサロミアさんや私たちにも攻撃を仕掛けているし、目的は分からないけど、竜人族を攻撃してもおかしくないよ」
考えたくないが、シャフリの言っていることは事実。
アルカディア兵士たちが連日、私たちに対して攻撃を仕掛けてきている。
「そうだとしても……一体誰が?」
もし、本当にアルカディアが竜人族を攻撃したのなら……竜人族……人外種?
「……まさか、アイツ」
シャフリはコクリと頷き、私の脳裏にある人物の顔が浮かんだ。
「リギル・アルカディア」
ヤツしか考えられない。
人外種を心底嫌い、私や人外種とつるんでいるシャフリにまで暴言を吐いた……アイツが!!
シャフリに目を向けた瞬間、シャフリの背後に殺気立つ瞳が見え、私はシャフリの体を引き寄せる。
「シャフリ危ないッ!!」
「わッ!?」
背後で眠っていたはずの竜人族の少年が鋭い爪で、シャフリを引き裂こうとしていた。
「ミーナ! シャフリちゃん!」
私たちと少年の間に入る父。ナイフを手に取り、少年を押さえ込もうとする。
「お父さん!!」
「早く逃げろ!!」
「お前たち……人間。僕の……父さんを、母さんを、みんなを、殺した。人間……殺す!」
少年が父に襲いかかり、父は全力で押し返そうと腕に力を込める。
「自我を失っているのか?」
父は少年を押し返し、私たちに目を向ける。
「早く逃げろ!! 竜人族は戦闘能力に長けている種族だ!! 少年といえども、油断していたら殺されるぞ!!」
「で、でも……」
私が躊躇っている間に、少年が体勢を整え、再び父に襲い掛かる。
父は冷静に対処し、少年の攻撃を全て受け流す。
「ミーナ!!」
父の怒りに近い声を聞いた私は、シャフリに立ち上がれるかを尋ね、ゆっくりと出口へ向かう。
「逃がさない」
少年が父を交わし、部屋の隅に置いてあったモップを手に取り、私とシャフリに矛先を向けてくる。
「ミーナちゃん!」
シャフリが私の前に出て、腹部にモップが当たる。
「がはぁッ!!」
シャフリが吹き飛ばされた瞬間、私の中で何かが切れる。
常備している吸血鬼になる薬を飲み、姿が変わりきる前に少年の顔面を鷲掴みにし、壁と窓を突き破り、中庭でマウントを取る。
「ぐっ!!」
「助けてもらった恩を仇で返すつもり? それが竜人族のやり方? あんまり私を怒らせないで」
少年は全力で対抗するが、私はフレア・ソードを作り出し、少年の喉元めがけて突き刺そうとする。
「ミーナやめろ!」
「ミーナちゃん!」
父とシャフリの声が響き渡り、私はわざと少年の喉元を外す。
フレア・ソードを地面に突き刺した瞬間、少年は目を丸くし、糸が切れたように意識を失う。
「……ミーナちゃん」
雨が降りしきる中、私はゆっくり立ち上がり、少年を抱えて屋根の下に入る。
「お父さん……お願い。この子を地下室に閉じ込めても良いかな?」
「……ああ。サロミアちゃんには僕から言っておくよ」
「……ありがとう」
私はシャフリに目を向けて、付いて来てと合図する。
「ミーナちゃん……あのね!」
「こうするしかなかったの。だけど、シャフリが拾った命を奪うことはしないわ。それに……厄介だと思ってないわ」
「ミーナちゃん……」
「確かにシャフリを傷つけられたことには腹が立ったわ。だけど、この子は親を失ったって言ったわ」
見つめる視線の先にジークが現れ、私はジークに少年を預ける。
「これ以上、この子から何も奪えない。色々聞きたいことがあるかもしれないけど……今はゆっくり休ませてあげましょう」
ジークは笑みを浮かべ、私たちは地下室へと向かっていった。
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