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竜人族1

 紅茶を差し出された私は、カップを手に取ることなく、一点だけを見つめ続ける。


「どうした? 飲まないのか?」


 祖父が優しく声をかけてくれて、私はようやくカップに手を伸ばす。


「……ふぅ」


「どうしたんだ? さっきから暗いぞ?」


「ありがとう。お祖父様。実はシャフリが、とある人外種を拾ってきて……」


「ほう……」


「他のみんなはテキパキと手伝っていたんだけど、私……何も出来なくて……怒られちゃって」


 話を聞いていた父と母が顔を見合わせて、笑みを浮かべる。


「何笑っているの?」


「いや……少し前のミーナちゃんからは出てくることがない言葉だったから、つい……」


「ああ……嬉しいんだ」


 勝手に喜んでいる父と母を尻目に、祖父が尋ねてくる。


「暗い理由は分かった。それで、連れ込んできた人外種とは?」


「サラスが言うには、竜人族って……」


 私が竜人と口にした瞬間、3人の表情が変わり、母は通信バットを使って誰かと話し始める。


「ミーナよ。本当に竜人族なのか?」


「え? あ、はい。確かに竜人って」


 祖父は私に確認をとった瞬間、クローゼットから雨合羽を取り出し、部屋を出ようとする。


「ミーナ! エディックくん! すまないが、少しの間、留守を頼む! サロミア!」


「乗馬の用意を頼みました。お父様」


「え? 一体何なの?」


「詳しいことはエディックに聞きなさい。私も行ってくるわ」


 母も雨合羽を纏い、祖父の後を追って部屋から出ていく。


「お母さん……お祖父様」


 父が私の肩に手を置き、優しい口調で頼み事をする。


「ミーナ。取り敢えず、その竜人族に会っても良いかな?」


「わ、分かった……でも、シャフリに聞いてみないと」


「構わないよ」




 ◇◇◇




 竜人族の少年が運び込まれた宿泊室の前に着くと、ソフィアが扉を守っていた。


「ソフィア? どうしてここに?」


「シャフリ様に頼まれまして、お戻りになられるまで誰も入れないでくれと」


「私はシャフリに用があってきたんだけど、どこに行ったの?」


「シャフリ様は浴場にいます。もう少ししたら戻られるかと……」


「あれ? ミーナちゃん?」


 背後から話しかけられた私は即座に振り向く。


 そこには寝巻きで、濡れた髪をタオルで拭いているシャフリの姿があった。


「なんて格好してるのよ……」


「代わりの服がなくて、寝巻きを代用しているだけだよ」


「あそう……」


「エディックさんも一緒でどうしたんですか?」


 先ほどの危機迫った口調ではなく、いつもの明るい口調のシャフリ。


 私の隣に立っている父を見て、首を傾げて尋ねる。


「ミーナから聞いたんだが、竜人族を助けたと聞いたのだが……」


「ああ! そうです! 結構幼い男の子のですけど、確かに竜人族ですね」


「申し訳ないんだけど、会うことってできないかな?」


 シャフリは微笑んで、父に言葉を返す。


「体温も落ち着きましたし、外傷も回復薬を塗り込んだので、大丈夫ですよ。ただ、触ったり、大声を出すのはダメですよ。まだ動ける状態じゃないですからね」


「分かった」


 すんなりと了承するシャフリ。


 条件付きとはいえ、竜人族に会うことができた父は、シャフリに頭を下げる。


「その前に……ミーナちゃん。ごめんね。酷いこと言っちゃって」


「え……いや。私は何も出来なかったし、シャフリやみんなの邪魔ばかりしたし……」


「様子を見に来ててくれただけでも嬉しかったよ。だけど、私も余裕がなくて……ごめんね」


「良いわよ……それよりも、お願い」


「うん。ソフィアさん、忙しいのにありがとう」


「それでは、失礼します」


 扉を守っていたソフィアが去っていき、シャフリはゆっくりと扉を開ける。


 シャフリの後に続き、私と父はベッドに横たわっている竜人族の少年に目を向ける。


「……確かに竜人族だね」


「ねえ。聞きたいんだけど、竜人族ってそんなに珍しいの? 絶滅危惧の種族でもないのに」


「確かに珍しくもないし、絶滅危惧でもない。だけど……彼らは代々、アルカディア国の国王に忠誠を誓っていて、種族総出でネプカトゥーレに面している国境を警備していたんだ」


「え? それじゃあ何でこの子は、本国ど真ん中にいるの?」


 シャフリがベッド脇の椅子に座り、竜人族の少年の寝顔を見ながら、私の疑問に対して言葉を返す。


「分からない……分からないけど、この子の傷口から微かに魔力を感じたよ」


「魔力?」


「うん。それも攻撃性の高い魔法。回復薬の効きが遅いのもそのせいだよ」


「色々考えたいところだけど、竜人族はミストレーヴ家が援助している種族。万が一、何かあったら……」


「何かあったら?」


 父は考えたくないと言わんばかりの顔を浮かべ、私は言葉の続きを待つ。


「ネプカトゥーレとの国際問題にもなりかねない」

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伊澄ユウイチです!


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