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シャフリの拾い物

 アルカディア兵士を撃退した翌日。


 強い雨が降りしきる中、シャフリはダッシュで林道を駆けていた。


「もう! 今日は降らないはずなのに!! なんで降ってきたの!?」


 雨に対し苛立ちを覚えながら、ひたすら足を動かす。


「ううぅ……飛びたいけど雷怖いし……あー、もう! 下着までびしょびしょ。屋敷に戻ったらお風呂に……ん?」


 何かに反応したシャフリは足を止め、周囲を見渡す。


 雨音が響く中、何の音か気になり、シャフリは耳を澄ます。


「雨の音……それとこれは?」


「……くッ! ううぅ……」


「声?」


 声の聞こえた方向に足を運び、恐る恐る茂みを掻き分ける。


 そして、声の主であろう人物を見つけたシャフリは目を見開く。




 ◇◇◇




「あー、雨かぁ」


「ミーナちゃんは雨が嫌い?」


 部屋の窓から外の様子を見て気分が下がる私。そんな私の表情を見て、ジークが尋ねる。


「まあね。私はどんよりと雲が広がっていて、冷たい風が吹く天気が好き」


「これまた独特な好みで……」


「だって、太陽が出ていると日焼けしちゃうし、雨はジメジメするし……って、今独特って言わなかった?」


「いや?」


 絶対言った。とぼけてるけど、絶対言った!


「ジーク!!」


 ジークに飛びかかろうとした瞬間、私の頭上に通信バットが降り立ち、口を開けようとする。


「何故そこに止まる?」


「まあまあ、お嬢様……ところで、どなたですか?」


『ソフィアです。業務中のところ、失礼します。ジークさん。急ぎ、お湯とタオルの準備を』


 通信バットからソフィアの落ち着いた口調が聞こえた。


「一体どうしたのですか?」


『詳細はシャフリ様に聞いてください。今サラスと一緒に屋敷に入ります。それでは』


 頭の上に乗っている通信バットが飛び去り、私はジークに目を向ける。


「一方的に切ったわね……何なの?」


「分かりませんが、急ぎのようなので準備してきます」


 一瞬にしてジークの姿が消え、私は部屋に取り残される。


 よくよく考えたら、外出禁止令が出ているのに何でシャフリは外にいるの?


 疑問を抱きながらも、私は部屋を出て、ジークの後を追う。


「暇だし、私も行こうっと」




 ◇◇◇




 玄関に辿り着くと、既にジークとサラスが慌ただしく動いていた。


「今すぐ着替えをお持ちします! 部屋はこの先の宿泊室へ!」


「シャフリ様〜。どんどん体温が下がってますよ〜」


「急いで! かなり衰弱しているから早く温めて!」


 珍しく真剣な表情を浮かべているシャフリを見て、私は呆然と立ち尽くしてしまった。


「ちょっとミーナちゃん! 見てないで手伝って!」


「あ……はい」


 声をかけられた私は我に返り、駆け足でシャフリに近づく。

 サラスが抱えているものを見て、私は数回瞬きをする。


「これって……」


「だから見てないで動いてって!」


「あ、はい……」


 シャフリの勢いに負けた私は、サラスと共に宿泊室へ向かう。


 宿泊室へ向かっている最中、私はサラスが抱えているものをチラチラと見る。


「サラス……それって」


「ん? ああ。竜人族の子供ですね」


 私やシャフリよりもずっと幼い男の子の頭から、竜の角が生えており、背中には翼、お尻と腰の間から尻尾があった。


「これが竜人……アルカディアとネプカトゥーレの国境付近で生息している人外種が、何で中心部に?」


「今は推測している暇はありません。とにかく、部屋の扉を開けてもらってもよろしいですか?」


「うん」


 命がかかっていることを知った私は即座に扉を開け、サラスと共に竜人族の少年をベッドに寝かせた。


「取り敢えず服を脱がせましょうか」


「え? 服を?」


「濡れてますし、体にも良くないので脱がさないと……」


「で、でも……」


 私は視線を逸らして、服を脱がすことを躊躇う。


 その時入口の扉が勢いよく開き、シャフリとジークが飛び込んでくる。


「まだ服を脱がせてないの!? 後は私とジークさんがやりますから!」


「シャフリ様。それではよろしくお願いします」


 サラスは足早に出ていき、私はどうすれば良いか分からなくなり、その場に立ち尽くす。


「どうしたの? ミーナちゃん? 手伝うなら手伝って。手伝わないなら部屋から出て行って」


 なんか……今日のシャフリ怖い。いつもの能天気がどこかへ行っちゃってる。


「わ……分かった」


「お嬢様」


 部屋から出て行こうとするとジークが声をかけてくる。


「しばらく不便をかけますが、ご了承ください」


「……分かった」


 私は部屋の扉を閉め、自室に戻らず、ある部屋に向かった。




 ◇◇◇




「……嫌な雨ね」


「今日は晴れる予報だったけど、仕方ないね」


 窓から外の様子を見るサロミアとエディック。


 サロミアは目を細めて、エディックを茶化し始める。


「ホントは嬉しいんでしょ? 外回りの仕事がなくなって」


「そ、そんな訳ないよ! 本当は外回りに行きたかったよ!」


「どうだか……」


 いちゃついている2人を他所に、ジアスは紅茶を啜って一息つく。


「……仲が良すぎるのう。夫婦というものはもっと喧嘩するものなのだが……それよりも私がいるのだから、少しは自重して欲しいのだが……」


 その時、扉がノックされ、3人は同時に扉に目を向ける。


「あら? 誰かしら? どうぞ〜」


 部屋に入ってきたのは浮かない顔をしているミーナだった。


「ミーナちゃん?」


 サロミアとエディックは首を傾げ、ジアスは横目でミーナを見つめる。


「……ちょっと、混ぜて」

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伊澄ユウイチです!


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