フォルテ4
「見つけた!」
屋敷に向かって侵攻しているアルカディア兵士たちを発見し、私は足を止めさせるためフレア・ソード2本を彼らの足元に投げつける。
「警戒!」
目論見通り、兵士たちは足を止め、上空にいる私に視線を向けてくる。
「どうも、兵隊さんたち。今度はウチに何の用ですか?」
「炎の剣に幼さが残るその顔は……ミーナ・アリスト・ミストレーヴか」
呼び捨てかよ。敵意剥き出しなのが丸分かりね。
「前日の理由と同じで、サロミア・スカイ・ミストレーヴ。ソフィア・グラン。サラス・ツェリーゼの身柄を拘束しに来た。それと、ミーナ・アリスト・ミストレーヴ。貴様は激しく抵抗した理由で逮捕命令が出ている。抵抗するのであれば殺害許可も出ている」
殺害許可……穏やかじゃないわね。
「あら? 大事な家族を傷つけられて抵抗したまでよ。正当防衛じゃないの?」
「この期に及んで減らず口を……これだから人外種は」
「前も言ったはずよ。私は半分人間で半分吸血鬼よ。勝手に人外種に部類しないで」
「ええい! お喋りに付き合っている暇はない! 飛行魔導隊! 目標に攻撃開始!」
先頭に立っている兵士の合図で、20人ほどの兵士が飛行魔法を使用して私との距離を詰めて、躊躇うことなく魔法を放ってくる。
「大人しく帰ってくれれば何もしなかったのに」
冷静に魔法を回避しながら彼らとの距離を詰め、スカートのポケットからジークの血が入った試験管を取り出し、噛み砕く。
左目の色が青色に変わり、左手に鬼神を纏った私は、次々と兵士たちに左拳を当てていく。
「な、何だ!? 魔法が……」
「使えない……一体何が?」
鬼神を当てたことにより、兵士たちは魔法が使えなくなり、墜落していく。
「ぐぬぬ……まあいい。魔導隊が相手をしている隙に屋敷へ向かうぞ!」
再び侵攻しようとする兵士たち。それに気づいた私は思わず「待ちなさい!」と叫んでしまう。
しかし、兵士たちが先に進むことはなかった。
「一閃!」
「鬼神!」
最前列にいる兵士数名に斬撃が直撃し、後列にいた兵士たちは空から強襲してきた人物によって吹き飛ばされる。
「なッ!? 今度は何だ!?」
倒れている兵士たちの真ん中に立っていたのは。
「来たわね。ジーク。カーリー」
「やっと追いつきました。お待たせしてすみません。お嬢様」
「ジークくんから聞いたわよ。勝手に飛び出したんだって? お嬢様。後で奥様と旦那様に報告しておきますよ」
「どうぞ。勝手にして」
鬼神を拳に纏わせたジークと、長太刀を携えたカーリーが私に笑みを見せて手を振る。
「地上はお任せください」
「飛行魔導隊はお願いしますよ。私たちは飛ぶの得意じゃないので」
構える2人の前に、重装備の兵士たちが武器を手にする。
「結構全力で斬撃を飛ばしたけど、全然減ってないわね」
「装備がしっかりしていますので、仕方ないですよ。確実に1人ずつ無力化していきましょうか」
「2人とも! 出来るだけ傷つけないでね!」
「えーッ!? そんな無茶な……」
カーリーが文句を言っているが、私は聞く耳を持たなかった。
「頼んだわよ!」
飛行魔導隊が再び魔法を放ち、私は高速飛行で回避する。
「全く……無茶な命令を」
「ですが、お嬢様らしい命令です。メイド長。早急に終わらせましょうか」
「言われなくても」
2人は駆け出し、目にも止まらぬ速さで、兵士たちを次々と無力化していく。
◇◇◇
ミーナたちがアルカディア兵士たちと戦っていることを聞いたシャフリは、慌てて外に出ようとする。
「もう! 部屋に行ってみれば誰もいないし、私に一言言ってくれても良いじゃない!」
文句を呟きながら回復薬を準備し、窓を開けて飛行魔法で飛び立とうとする。
『シャフリ様!』
「わッ!! あわわわわッ!!」
背後から呼び止められたシャフリは驚き、床に尻餅をつく。
「あたた……びっくりした。あれ? ソフィアさん。それにサラスさん。一体どうしたんですか?」
シャフリを呼び止めたのはソフィアとサラスだった。
「何でここにいるんですか? ミーナちゃんたちの所には行かないんですか?」
「今から向かうところです。ですがその前に……」
「シャフリ様にお願いしたいことが……」
2人の真剣な眼差しを見て、シャフリは数回瞬きする。
「私に? 一体何を?」
2人は顔を見合わせ、洋服の袖を捲る。
2人が望んでいることを察したシャフリは、新品の試験管と注射器、ゴムバンドを準備し、ソフィアとサラスの腕を消毒する。
「シャフリ様……」
「ありがとうございます」
ソフィアとサラスはシャフリに頭を下げ、シャフリは手を動かしながら2人に言葉を返す。
「お安い御用ですよ。2人のお気持ち……ミーナちゃんはきっと受け止めてくれますよ」
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