ジークの企み2
私は指で机をトントンと鳴らして、苛立ちながらもジークが来るのを待ち続けた。
これだけ待たせて面白くない遊戯を持ってきたらキレてやろう。
「ミーナお嬢様。ジークです」
私は扉の向こうにいるジークの入室を許可する。
「遅いッ!! あれから1時間以上も待ったわよッ!!」
「大変申し訳ございません。少々準備に手間取りまして……」
私はため息をつきつつも、ジークが用意した遊戯に期待を膨らませる。
「で? 今日は何を持ってきたの?」
私の問いに反応するかのように、ジークは机の上に緑色のボードに8×8マス目が引かれた物を置く。そして、裏表が黒と白に塗り分けられた円盤状の石が、傍に置かれる。
私は石を1つ摘まんで、マジマジと観察する。
「何これ?」
「今日お嬢様に遊んでいただく遊戯は、オセロです」
「オセロ?」
「数あるボードゲームの1つです。黒色の面を使用するプレイヤーと、白色の面を使用するプレイヤー2人で遊びます。ルールは簡単です。盤面中央の4マスに黒と白を2つずつ置きます」
ジークは石を4つ取り、黒石と白石を互い違いに配置する。
「そして、自分のターンに一度、石を置いて縦・横・斜めのいずれかの方向で挟んだ相手の色を裏返しにして自分の色に変えます。これを何度も繰り返して、最終的に枚数が多い方が勝ちとなります」
思っていた以上に単純な遊びね……見ただけだと。
「まあ、説明はやりながらでも出来るでしょ? 早くやりましょ」
ジークと私は向かい合うように座り、ゲーム準備を整える。
「先攻後攻はお嬢様がお決めください」
「あら? 良いの? それじゃあ、最初は攻めさせてもらおうかしら」
「承知しました。それでは黒色の石がお嬢様の石となります」
コクリと頷いた私は、石を1つ摘まみ、白色の石を挟んで1つ裏返す。そして考えることなく、ジークも石を置き、石を裏返す。
会話はなく、黙々とゲームが進んでいき、中盤に差し掛かった頃、私は盤面を見て心の中で笑う。
おや? これは……私が勝っちゃうんじゃないかしら?
ジークの石より私の石の方が多い……それにジークは1つとか2つ程度の石しか裏返さない。様子を伺っているつもりなんだろうけど、動こうとしたときには手遅れよ。
このまま押し切っちゃうんだから!
私は攻めの手を緩めることなく、積極的に多くの石を取りにいった。しかし、後から気づくが、愚かな考えだったと思う。
「……宜しいのですか? お嬢様」
「何が?」
「オセロに於いて絶対に誰にも取られることがなく、その後の展開も有利に進めることが出来るマスがあることをご存じですか?」
「な、何よそれ」
ジークはフッと笑みを溢して、あるマスに石を置く。
「なッ!? 角!?」
「そうです。オセロは角を制する者が、ゲームを制すると言っても過言ではありません」
縦・斜めの石が裏返され、石の数ではまだ私が勝っているが、間違いなく私が不利な立場になった。
そしてもう一つ、私はあることに気づき、摘まんでいた石を机の上に置く。
「お……置く場所がない。ジークの石を挟める場所がない!」
「石が置けないときは自動的に手番がスキップされます。もう一度私の手番です」
容赦なくジークは石を置き、私の黒石を白へと変えていった。
「まだお嬢様が置ける場所はありませんね。もう一度私です」
やられた……ジークは最初から角を……私が攻めにくくなるのをずっと待っていたんだ。
終盤になればなるほど、数が少ない方は残っているマスほとんどに石を置くことが出来る。対して、多く取っている方はリードしているが、置く場所が限られてしまう。
この遊びも昨日やったインディアンポーカーと同じ……駆け引きが非常に重要な遊び。
初めてとはいえ、完全に踊らされていた……。
「……負けよ。私の」
「ありがとうございました」
ジークはペコリと頭を下げ、勝利を手にする。
「勝てないのは十分理解していたけど、ほぼ全てのマスが白色になるとは思ってもいなかったわ」
「攻めばかりでは勝てません。様子を見て、次に相手がどこに置いてくるのだろうと考えることも必要です」
その割にはほとんどノータイムで石置いていたじゃん。
「攻め時を待ち、そして絶好のタイミングで仕掛けるのも大切となっていきます」
私はボードを見つめながら、一手一手を思い出し、こうすれば良かったと脳内で反省する。
「ふむふむ……今まで遊戯では勝ち負けしか拘ってこなかったけど、盤面を見返して反省してみるのも悪くないわね」
ジークはニッコリと笑みを浮かべて、私のティーカップに紅茶のおかわりを入れる。
「流石はお嬢様。普通の人だと、中々その考えまで辿り着けません。反省を活かして、次に繋げるのは一番大切なことです。そして、同じ失敗は繰り返さないことも重要です」
私はチラッとジークに目を向け、紅茶を一口飲む。
「さて、次のゲームの準備に入るわよ」
盤面の上に並んでいる石を片付けようとしたその時、部屋の扉がノックされる。
「誰?」
「私よ~。ミーナちゃん」
声を聞いただけで、私は顔を歪め、思わず舌打ちしてしまう。
「お嬢様。奥様ですよ」
そんなの分かっている。
私はジークを背後に退かせ、母を部屋に入れるか入れないか、少し悩む。
……しかし、いつもはノックもしないで入ってくるのにどうしたの? 何か、調子狂っちゃう。
「……はぁ。良いよ。入って」
「失礼するわよ~」
ノックはしてくれたものの、扉を開ける勢いは今までと変わらず、思いっきり開けてきた。
「何の用? また面倒ごとでも持ってきたの?」
皮肉交じりの言葉を母に投げるが、母は笑みを崩さず、言葉も返すことなく私を見つめてくる。私は首を傾げて、頭上に疑問符を浮かべる。
…………はよ用件言わんかいッ!!
その時、背後にいるジークが母とアイコンタクトを取っていたことを、私は知らなかった。
いつもご覧になっていただき、ありがとうございます!
続きが気になる方はブックマーク登録よろしくお願いします!
誤字脱字、文章的におかしな部分がありましたら、報告お願いします!
これからも楽しんでいいただけるよう頑張りますので、よろしくお願いします!




