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フォルテ2

「良いリズム……良い音」


 私は目を閉じながらピアノの鍵盤を弾き、ジークのトランペットにメロディを合わせる。


 頭の中に浮かんでいる楽譜がラストに近づき、ジークの音に合わせてフィニッシュ。


「……ふぅ。ミーナちゃん。合わせてくれてありがとう。お陰で気持ちよく吹けたよ」


「構わないわ。だけど、久しぶりにピアノを弾いたけど、楽しい上に気持ちが昂るわね」


「良い暇つぶしになるでしょう?」


「まあね」


 ピアノの鍵盤を見つめながら撫でていると、扉がノックされ、ジークが扉の向こうにいる人物に声をかける。


「どなたでしょう?」


「ソフィアとサラスです」


 ジークは私に目で入室の許可を得てくる。私はコクリと頷き、ジークは扉を開ける。


「来たわね。ソフィア。サラス。待っていたわ」


 部屋に入ってきたソフィアとサラスが戸惑いながら私に言葉を返す。


「待っていた?」


「ミーナお嬢様。もしかして、私とソフィアが来ることを……」


「いや。演奏していたら耳の良いソフィアが気づいて来るんじゃないかな? って思っていただけよ」


 正解だったのか、2人は言葉を返さず、私から視線を逸らす。


「ほら。ボサっとしていないで準備しなさい」


「ご、ご一緒しても良いのですか?」


「ここに来た時点でアンタたちに拒否権はないわ。さっさと自慢のフルートを準備しなさい。あ、サラス。ピアノ弾く?」


 サラスは首を横に振り、とある楽器の用意を始める。


「ピアノはお嬢様にお願いします。私とソフィアはこう見えて、どんな楽器も演奏出来るんですよ」


「へぇ……クラリネットねぇ。何でも良いけど、私のアレンジに対応できるかな?」


 ソフィアとサラスは苦笑いを浮かべ、組み立てた楽器を手にする。


『お手柔らかに……』


「ジーク。悪いけど、もう一曲だけ付き合いなさい」


「はい。自分もそのつもりですよ」


 ソフィアとサラスに楽譜を手渡し、私は再びピアノに向き合う。


 全員の準備が整い、深く息を吸って、演奏を始める。


 流石は元アルカディア音楽団の団員。私とジークのフォローをしつつ、自分たちも音色を主張する。2人の心を表しているような透明な音色。


 ソフィア……あの時を思い出しちゃった。もう我慢できないけど対応できるかな?


 一瞬だけソフィアに目を向け、私は唐突にアレンジを加える。


 アレンジだと判断したジークはトランペットから口を離し、アレンジ部分を見守る。


 流石ジーク。良い判断ね。さて……ソフィアとサラスは?


 2人に目を向けると、涼しい顔をして私のアレンジに対応していた。


 こうも簡単に理想的な対応をされると、ちょっと自信無くすわね。


 私の無茶振りもあったが、曲は無事にフィナーレを迎え、全員同時に音を止める。


「……ふぅ。流石ね。2人とも」


 私とジークは2人に拍手を送り、2人は照れくさそうに笑みを浮かべる。


「お嬢様のピアノが完璧だからこそ自信を持って演奏することができました」


「ピアノを触っていた立場からすると、悔しいくらい良い音色でした。教えて欲しいくらいですよ〜」


「何言ってるのよサラス。でも、久しぶりにピアノも弾けて、みんなと演奏できて嬉しいわ」


 私はピアノから離れ、ジークに紅茶の用意をお願いする。


「ちょっと休憩。アンタたちもどう?」


「いえ……他のメイドさんたちに門番を任せているので、私たちは……」


「お嬢様の気持ちは嬉しいのですが、そういうことですので……」


 仕事を理由にして私のお茶を断るとは良い度胸ね。ならば禁断の言葉。


「命令よ。2人とも座りなさい。門番しているメイドたちには私から言っておくから」


 命令という言葉に逆らえなかった2人は渋々椅子に座り、ジークが用意した紅茶を見つめる。


「うーん! 演奏した後のジークの紅茶は最高ね!」


「そう言ってもらえると嬉しいです」


 紅茶の感想を口にしつつ、私は再び紅茶を啜る。ソフィアとサラスも紅茶を飲み、表情を和らげる。


「……それで? 何か悩んでいるでしょう?」


 ソフィアは驚きの表情を浮かべ、サラスは驚きのあまり、紅茶が気管に入り、むせ返る。


「お、お嬢様……唐突にどうしたのですか?」


「唐突なのはアレンジだけで結構ですよ〜。ケホッ……」


 私は2人の顔を指差し、ニヤリと笑みを浮かべる。


「顔を見れば分かるわよ。2人とも表情が暗い。演奏していた時の顔とは全然違うわよ」


 ソフィアはため息をつき、サラスは顔に出ていたことを気にし、思わず口元を手で隠す。


「全く……化け狐なのに表情を隠せないなんて、可笑しな話だわ。それで、何で悩んでたの? 私で良ければ相談に乗るわよ」


 2人は顔を見合わせ、ソフィアが私に悩みを打ち明ける。


「なるほどね……そのフォルテって魔法を完成させられなくて悩んでいたのね」


「自分は以前身をもって体験しましたが、あれはあれで完成されていたと思いますが……」


 ジークの言葉にソフィアとサラスは首を横に振る。


「確かに今のフォルテでもある程度は戦えます。ですが、体への負担が大きく、長時間の使用、連続使用は出来ません」


「デメリットを消し、メリットを伸ばそうと試行錯誤して頑張っているのですが……中々上手くいかなくて」


 私は手に持っているティーカップを置き、視線を下げている2人を見て、微かに笑みを浮かべる。

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伊澄ユウイチです!


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