一難去って2
「リギルッ!! リギルはいるか!?」
部屋の扉を勢いよく開けたヨハネスは、ソファーにふんぞり返っているリギルを見て、ツカツカと歩み寄る。
「ノックもしないで入ってくるとは、何の用だ? 父上」
ヨハネスの怒りの意味を知っている上で、リギルは白々しい態度を取る。
完全に血が頭に昇っているヨハネスは、リギルの胸ぐらを掴み、怒声を浴びせる。
「この大馬鹿者が!! 何故ミストレーヴ家に兵など送った!? あの一家が何をしたと言うのだ!?」
「何をした? 何も分からないのに口を出さないでくれないか?」
「何だと!?」
「奴らの敷地に入った一般人3人が行方不明になり、消息が分からなくなっているのです。屋敷の主である、サロミア・スカイ・ミストレーヴに事情を聞こうと、兵士を向かわせましたが、どうやら返り討ちに遭ったようで。抵抗してくるところを見ると、これは限りなく黒に近いと……」
「何が一般人だ!? 行方不明になった者の詳細は知っている!! 奴らは指名手配されていた暗殺者ではないか!!」
「結構知ってるじゃん。流石は国民を愛する国王様」
ヨハネスは怒りを抑えきれず、リギルの左頬に向けて思いっきり拳を振るう。
「ガフッ……軽いな。力が入らないってのは本当のようだな」
リギルの左頬は赤くはなるが、効いている様子ではなかった。
「ああ。それと奴らが反抗してきた出来事がもう1つ。アンタが口にする食事が、妙に濃かったはずだ。シェフに味付けを濃くしろと指示した犯人を見つけたが、これも返り討ち。命こそ取られなかったが、間違いなく奴らが……」
「リギルよ……貴様がそれほど愚かだとは思わなかった。犯人とはソフィア・グラン。サラス・ツェリーゼのことだろ?」
リギルは目を細くし、ヨハネスを睨みつける。ヨハネスはリギルを見下し、硬い拳を作る。
「だったら何だ?」
「あの2人はクロノの元専属騎士だ。日中はクロノの警護をし、休息時は音楽団の練習をしていた。真っ直ぐで優しい子たちだ。私にも忠誠を誓ってくれた。彼女たちに疑う余地はない!」
「はんッ!! さっきの返答より曖昧じゃないか! 確固たる証拠が……」
「確かに音楽団が解散され、王宮を去り、人外種である彼女たちを疑うのも無理はない。だが、彼女たちは私やクロノを……人間を愛していた。その気持ちは嘘ではなかった!!」
「感情的だな。くだらない」
リギルは服装を整え、深くため息をつく。
「信じているとか反吐が出る。お前のその甘い考えが昔から大っ嫌いだんだよ」
「リギル……」
「俺は人外種を許さない。忘れたとは言わせないぞ。お袋が死んだ原因を」
ヨハネスは握力を緩め、拳を作るのをやめる。
「人間にいじめられていた人外種の子供を庇ったばっかりに……人間たちからは白い目で見られ、助けた人外種の成体にいじめていた人間と勘違いされて殺された。人外種の得体の知れない力に、お袋の体は……俺はあの時を一瞬たりとも忘れたことはない!」
「……だから人外種を、恨むのか?」
「……その一言でようやく分かった。俺と父上……いや、親父の考え方は違う」
リギルは腰に携えている剣に手をかけ、窓ガラスを破り、外に飛び降りる。
「リギル!!」
「あばよ! 親父! 残り短い人生、せいぜい楽しむことだな!」
リギルが落下する場所には馬が待機しており、飛び乗ったリギルは颯爽と馬を走らせ、王宮から去っていく。
「リギル……アルカディアの血を引いていても、やはり王の器ではなかったか」
◇◇◇
「ねぇ、何の話をしていたの?」
深刻そうな表情を浮かべている母と父と祖父の3人に、私は率直に尋ねる。
「アルカディアの兵士たちの動きについて話していたんだ。ミーナは気にすることはない」
正直に話のテーマを教える祖父だが、私は食い下がる。
「そう言うわけにはいかないわ。家族を守るって決めたもの。話を聞かせてもらうわよ」
「そうか。分かった……と、言いたいところだが、全く分からない状況なんだ」
人間の姿に戻って嘘は見抜けなくなったけど、祖父は嘘がつけない。今言っていることは本当だ。
「……仕方ないわね」
「ところでどうだった? 自分の力は?」
母が何の気無しに、私の力のことを尋ねてくる。
「私の力? あれは私の力じゃないわ。ジークとシャフリの力よ」
しかし、祖父は笑みを浮かべて、私の思いを否定してくる。
「いや。あれは紛れもなくお前の力だ。正確にいえば力の片鱗だ」
「片鱗? と言うかお祖父様、見ていたの?」
「遠くから見ていたぞ。信頼している者の血を吸って、その力を一時的に得る。だがそれは、本来の力の一部分にしかあらず。本来の力が目覚めるのはまだまだ先だろうが、お前の力は紛れもなく……それだ」
私はジークとシャフリを交互に見て、2人はキョトンとした表情を浮かべる。
「だそうよ。予想が外れて残念ね」
「自分たちが……お嬢様の力に?」
「なんか……責任重大な気が」
完全に縮こまっている2人を見て、祖父が高らかに笑う。
「お前たちが重荷に感じることはない。寧ろ感じるのはミーナの方だ」
「え? 私?」
「当然であろう? 他人の力を使って家族を守れませんでした……なんて言ってみろ。ミストレーヴ家の恥だぞ?」
私以外の全員がクスクスと笑い、最終的には声を大にして笑う。
ぜ……ぜ!
「絶対守るわよ!! 死ぬ気でみんなを守るもん!!」
つい感情的になってしまい、私は頬を膨らませる。
しかし……このみんなが笑っている瞬間は、本当に好き。
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