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一難去って1

 突如現れたジアスはソファーに腰を下ろし、深く息を吐く。


「お、お父様……ミーナちゃんの力っていうのは?」


「ん? ああ。その話は本人が来てから話すとしようか。それよりもサロミア。お前一体何をしたんだ? お前を拘束するために中隊規模の兵士たちがここに向かっていたぞ?」


「私を?」


「何でも一般人3人がこの屋敷に近づいてから行方不明になっているそうだ。屋敷の主であるお前に拉致と殺人の容疑がかけられているそうだ」


 一般人3人が行方不明と聞いた瞬間、サロミアは顔を青くさせ、表情が変わったことを見抜いたジアスは頭を抱えて深く息を吐く。


「やっぱりそうか……監禁しているのか? それとも……」


「は……はい。その、やってしまいました……」


「お義父様。その一般人というのは暗殺者でして、ミーナちゃんとサロミアちゃんの命を狙ってきたんです。過剰かもしれませんが、正当防衛だと思います」


「私は当時の状況は知らないが、殺すのは感心せんな。少しはミーナを見習ったらどうだ?」


「す……すみません。ちょっと頭に血が昇ってしまって……」


 ジアスは胸ポケットから葉巻を取り出し、口に咥える。


 火を欲しているのに気づいたサロミアがマッチに火をつけ、葉巻に近づける。火がついた葉巻の香りを楽しむジアス。


 数秒考えた後、ため息をついて再び葉巻に口をつける。


「やってしまったことは仕方ない。ちょっと反省をしろ」


「はい……」


「しかし……どうも引っかかる。サロミアと門番をやっている2人を捕まえるのであれば、わざわざ兵を割く必要はないはず。何故2回に分けて攻めてきた?」


「確かに……お義父様。中隊規模の兵士たちと会ったのは何分ほど前ですか?」


「ん? 出ていってすぐだから……3時間くらい前か?」


「そうなると順番も逆ですね……普通なら少人数部隊の方が先に到着するはず……その後、本隊で制圧する。違和感を感じますね」


 エディックが顎に手を当てて考え込み始める。


 サロミアとジアスもそれぞれ考えるが、相手の意図が掴めなかった。


「ダメね……全く分からない。何でヨハネスは私たちを……」


「ヨハネス? 私が追っ払った兵士たちは、リギルとか言っていたが?」


『リギル?』


 サロミアとエディックは声を重ね、共に頭上に疑問符を浮かべる。


「何だ? 2人とも?」


「お父様……本当にリギル王子の名前を口にしていたのですか?」


「知っているだろう? 私は嘘がつけないんだ」


 サロミアとエディックは顔を合わせる。


「と、言うことは……」


「この騒動全てリギル王子が起こしていること。ヨハネスはこのことを知っているのかしら?」


「因みにだが、王宮に行ってみたが、ヨハネスは外出中のことだそうだ」


『外出?』


 2人が再び声を重ねた瞬間、入り口の扉がノックされ、勢いよく開く。


「戻ったわよ! はぁ〜、戻った瞬間、疲れが出てきたわ……」


「ミーナちゃん。ノックして返事が来る前に扉開けるのは……」


「アンタにだけは言われたくないわよ。クソシャフリ……あれ? お祖父様、戻ってきたの? それにどうしたの? 深刻そうな顔して」


 疲れたという言葉を口にした割には元気そうなミーナを見て、サロミアたちは苦笑いを浮かべる。




 ◇◇◇




 アルカディア国王、ヨハネスは王宮地下のとある部屋を目指していた。


「国王様……お待ちしておりました。異常はありません」


 部屋の警備をしていた騎士がヨハネスに敬礼し、警備の報告をする。


「警備、ご苦労様。現物の状態を確認したい。施錠を解除してくれ」


「はッ!」


 部屋の扉前に立っていた騎士が施錠を解除する。


 扉を開け、ヨハネスは部屋の中に入り、部屋中央にポツンと置かれた鍵付きの箱の前に立つ。


「箱を開ける。部屋の施錠を頼む」


「失礼します」


 入り口の扉が閉ざされ、鍵がかかったことを確認したヨハネスは、洋服の内ポケットから1本の鍵を取り出す。その鍵を箱の鍵穴に突っ込み、施錠を解除する。


 そして、箱の中身を確認する。


「問題は……なさそうだな」


 箱の中に入っていたものを手にし、ヨハネスは目を細める。


「はるか昔……アルカディアを創ったと言われている紅神竜こうしんりゅう・フレイア。その力が宿っている神石……フレイアの雫。いつ見ても優しい輝きだ……」


 ヨハネスは神石・フレイアの雫に触れようとしたが、寸前で手を止める。


「……お父様から代々受け継がれる石。どうか、罪深い自分を……許してください」


 ヨハネスは瞼を閉じて祈りを捧げる。

 満足するまで祈りを捧げたヨハネスは再び箱を施錠し、部屋の外にいる騎士たちに部屋の扉を開けさせる。


「すまなかったな。それでは……警備を頼む」


「ヨハネス様!!」


 騎士たちに警備の指示を出した瞬間、1人の男がヨハネスに駆け寄る。


「ファルトマン……ここをどこだと思っている? いくらお前といえども、入ってきては良い場所ではないぞ」


 ファルトマンは乱れている呼吸を落ち着かせて、深々と頭を下げる。


「大変申し訳ございません! 罰は後ほど何でも受けます! しかし、緊急事態です!!」


「どうした?」


「リギル様がミストレーヴ家に対し、小隊と中隊を送り込んだとのことです!」


「何だと!?」


 リギル、そしてミストレーヴの名前が出た瞬間、ヨハネスは怒りの形相を浮かべて地下通路を歩む。


「ミストレーヴ家は無事か?」


 歩みながらファルトマンに状況を尋ねる。


「小隊は未だ帰還していませんが、中隊は全ての武器を失って帰還しています……誰一人欠けることなく」


「何だと? 武器を全て? いや……とにかく事実確認だ。リギルはどこにいる!?」


 ファルトマンからリギルの位置を聞いたヨハネスは歩く速度を上げ、リギルの元へ向かう。


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伊澄ユウイチです!


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