ミーナの力3
鬼神のことで悩み続けた私は気分転換がてら、見晴台に足を運んでいた。
「チュンッ!!」
私が来たことを知った小鳥たちがゾロゾロと集まり、私はパンを千切って与える。
「……はぁ。考えすぎて頭が痛い……」
「チュン?」
小鳥が私の顔を見て少し顔を傾げる。
「ん? アハハ……アンタたちに心配されるなんてね。もう大丈夫よ。さ、食べなさい」
再び私が千切ったパンをつつく小鳥。
その様子を見ていた私にある人物が声をかけてくる。
「ここにいたのか。ミーナ」
声が聞こえた方向に目を向けると、そこには父の姿があった。
「珍しいわね……お父さんがここに来るなんて」
「お義父様が行ってから、ミーナの様子がおかしかったから見に来たんだよ。部屋にはいなかったし、ジークくんに聞いたら多分ここだって」
ジークめ……余計なことを言って。
お父さんと一緒なことをしないでもらいたいわ。
「話はジークくんとシャフリちゃんから聞いたよ。自分の力……鬼神について悩んでいるそうだな」
「余計なお世話よ。というか、あの2人喋りすぎよ」
「それだけ2人はミーナを気にしているんだよ」
私は父から小鳥に視線を移し、再びパンを千切る。
数分間の沈黙が続く中、父は空を見ながら再び私に話しかける。
「使い方……だけで悩んでいたわけじゃないんだろう?」
「流石……って言っておこうかな。なんで分かったの?」
「親子だからね。それくらいはね」
「……正直、鬼神が左手に纏った瞬間、私は自分の体から出てきたものじゃないって思っているの。フレア・ソードとはまた違う……出所が分からないの」
父は私に目を向けることなく、思いを口にしてくる。
「ジークくんたちの見解はミーナが吸血することによって鬼神を使える……か。僕は違うと思う」
「どうしてそう思うの?」
喰い気味に尋ねたが、父は笑みを浮べて私に言葉を返す。
「分からない……だけど、そんな単純な答えだとは思わない。確かに吸血鬼が血を吸うと鬼のような力を使えるのは事実。しかし、半分人間で半分吸血鬼のミーナの力が、鬼と同じ程度の力とは思えない。鬼以上の力があると僕は思っている」
「何を根拠に……」
「根拠はある。僕は暴走しているミーナと何度も戦ったんだ。それも生きるか死ぬかの次元で。だけど、何度も感じたあの力は鬼神の力じゃなかった。それだけは断言できる。何故なら、僕は鬼と……ヒビキさんと戦ったことがあるからね」
ヒビキ……ジークの育て親であり、イクセプト最後の鬼だったという噂の人。
そんな人と戦ったなんて……。
「憶測ばかりだけど、鬼神が使えたのはジークくんの血、だからじゃないのかな?」
「ジークの……血だから?」
「本当はサロミアちゃんやお義父様が言った方が現実味があるんだろうと思うけど、完全な吸血鬼じゃないミーナは、他人の血の影響を受けやすいんじゃないかと思う。だから暴走も起こしたし、ジークくんが使える鬼神も使えたんじゃないかな?」
憶測ばかりの父の話より、ジークたちの言っていたことの方が現実味はあったが、お父さんの言っていることも分かる。
なんなら、私はお父さんの方が正しいと思える。現に、私も疑っていたからだ。
「……お父さん」
親身になって相談に乗ってくれて、自分の考えも話してくれた父に感謝の言葉を口にしようとした瞬間、通信バットが飛び込んできて、父の肩の上に止まる。
「誰だ?」
父が通信相手に語りかけるが、一方的な連絡通信であったため、相手には父の声が届いていなかった。
そして、声の主は……。
『メイド長、カーリー・ステイルから緊急連絡。ソフィア・グラン。サラス・ツェリーゼ2名が数キロ離れた林道にて、軍人数十名の襲撃を受けた模様。両名とも怪我はないが、戦闘訓練直後であったため、疲労、魔力は底を尽きかけているとのこと。至急、応援に向かう。直ちに準備を』
淡々とした口調でカーリーはソフィアとサラスの危機を伝える。
内容を聞いた私はパニックになり、どうすれば良いか分からなくなる。
「落ち着け。ミーナ」
父が私の気持ちを静めようとするが、私は父の手を振り払う。
「落ち着けないでしょ!! ソフィアとサラスが……」
「危機的状況だからこそ落ち着くんだ。そして、どうするべきかを考えろ」
どう……するべきか。
私は……ソフィアとサラスを助けたい。だけど、私なんかじゃ軍人には敵わない。でも、もたもたしていたら間に合わない。
「自信を持て。君は僕とサロミアちゃんの娘だ。やれば出来るんだ」
「お父……さん?」
父は私にある物を握らせ、一歩下がる。
私は手を開き、握っていた物が何なのかを確認する。
「これは……血?」
私が握っていたのは少量の血が入った試験管2本だった。
「それはジークくんとシャフリちゃんの血だよ」
「ジークと……シャフリの?」
「君が暴走したとき、血を吸わせて止めさせることを、サロミアちゃんはジークくんとシャフリちゃんに提案していたんだ。もし2人が怖じ気づいて吸血させられなかったとき用に、僕が2人の血を保管して持っていたんだ。暴走はしないとお義父様は言っていたが、万が一の保険として持っていくんだ。さあ、早く!!」
「お父さん……ありがとう。心配してくれて」
人間の姿に戻っていた私は再び吸血鬼の姿に変わる薬を服用し、吸血鬼となる。
「それと……」
「どうした?」
「今の私じゃ、ジークの血を飲むことになる。そして、鬼神を使うと思う。でも、鬼神を使う理由……家族を守りたいって気持ちじゃ、ダメなのかな?」
父は驚きの顔を一瞬浮べるが、笑みを浮べて答える。
「理由は結果を正当化させるためのものだ。どんな結果になろうとも、僕やサロミアちゃん、屋敷のみんなはミーナの思いを理解しているよ」
父の言葉には安心感があり、私は笑みを浮べて見晴台から身を乗り出す。
「ありがとう。それじゃあ、行ってくる」
翼を羽ばたかせ、カーリーの情報を頼りに、私はソフィアとサラスのいる場所へと向かった。
「……サロミアちゃん。ミーナは立派に飛び立っていったよ」
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