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ミーナの力2

「ねえ……ジーク。何、これ?」


 目を白黒させて私は黒い炎を纏っている左手を、ジークに近づける。


「ミーナちゃん……落ち着いて」


「私のフレア・ソードは紅色よ? 炎を纏っても紅色のはずだよ? ……これってまさか」


「落ち着いて」


「ジークが言っていた鬼神なの?」


 鬼神という言葉を口にした瞬間、ジークは私の目を見て、さらに驚きの表情を浮かべる。


「ミーナちゃん……左目が」


「え?」


 ジークは手鏡を私に差し出し、私は自分の顔を見る。

 鏡に映った私の左目は右目と同じ紅色ではなく、鮮やかな青色だった。


「どうなっているの? 一体何なのよ!?」


 頭の中がぐちゃぐちゃ……もう何が何だか分からない……。


「ミーナちゃん……」


 頭の中が混乱している中、ジークが自分の手に鬼神を纏い、鬼神であろうものを纏っている私の左手を優しく握りしめてくる。


 我に戻った私はジークの顔を見つめる。


「ジーク……何を?」


「心を落ち着けて。鬼神は強い意志を持っていないと飲み込んでくるよ。だから、落ち着いて……僕の顔をずっと見ていて」


 一瞬だけ左手に目を向けたが、私はジークの顔を見続け、心を落ち着かせる。

 耳の奥から聞こえる私の鼓動音……最初は早かったけど、少しずつ間隔が開いていき、通常の速度に戻っていく。


 ジークは私の左手に目を向け、鬼神の炎が小さくなっていくのを確認する。

 やがて完全に消え、ホッとした様子を見せ、自分の鬼神も消し、再び私に目を向ける。


「落ち着いた?」


「う……うん」


「瞳の色も元に戻ったね」


 私は手鏡で瞳の色を確認する。

 左右同じ紅色に染まっているのを確認し、私もホッと胸を撫で下ろし、その場に崩れる。


「ミーナちゃん!?」


「大丈夫……安心して力が抜けただけ。それにしても何だったの?」


「いろんな考察があるけど、取り敢えず部屋に戻ろうか? 屋根の上だと危ないし」


「……うん。って、わぁ!?」


 ジークは私を抱えて、歩き始める。


「ちょ、ちょっと!!」


「良いから。久しぶりに運ばせてよ」


 久しぶり? ……ああ、そういえば以前にも抱えられたっけ?

 だけど……。


「あ、あの時は夜中で誰も見てなかったでしょッ!? 今は誰かに見られてもおかしくないわよッ!!」


 ジークは聞こえていないのか、真っ直ぐ前だけ見て歩み続ける。


 私は顔が熱くなり、ジークから目を背けて小さく呟く。


「バカ……ありがとう」




 ◇◇◇




 部屋に戻った私はシャフリを呼び出し、起きたことを全て話した。


「え? 血を飲んだら鬼神を? 本当に鬼神だったんですか?」


 ジークに真偽を求めるシャフリ。

 ジークはコクリと頷き、シャフリは顎に手を当てる。


「吸血鬼は血を吸って鬼のような力を得る……となるとミーナちゃんが吸血して鬼と同じ力、鬼神が使えても不思議じゃないですね」


「シャフリ様の考えは、やはりそれですか」


「ジークさんは違うんですか?」


「いえ、大方自分もそれだと思っています。鬼神を見た時は驚きましたが、納得はできます」


「凄いよミーナちゃん!」


「何が凄いの?」


 私は頬杖を付いて、シャフリに言葉を返す。


「だって、鬼神はありとあらゆる力を無力化するんだよ!? それが使えるのは凄いことだよ!!」


「ありとあらゆるは言い過ぎですが、正確に言いますと、攻撃魔法、防御魔法、加護などを無効に出来ます。ただし、その種族特有の力などは無効には出来ませんが……」


「鬼神の特性は前に聞いたわ。私が言っているのは、使えるから何が凄いのって聞いているの。何のために使えるの?」


「何がって……」


 シャフリは答えることが出来ず、視線を落とす。

 するとジークは再び自分の手に鬼神を纏い、拳を作る。


「昔……自分もお嬢様と同じことを思っていました。ヒビキさんはこの力は戦うための力だと言っていました。ですが、自分は違うと思いました」


「守る……力ね」


 私は目を細め、ジークに話を続けるように促す。


「はい。鬼神を使えるようになってから数年間、自分は何を守りたいのかを考えていました。考えているうちにヒビキさんは居なくなり、本当に自分が守りたいものは何なのか分からなくなりました。そんな時、奥様が自分を拾ってくださったのです。そしてお嬢様と出会いました。初めて会って、執事という身分でありながらも、自分はお嬢様に好意を抱いてしまいました」


「なッ!? ちょっと!! ジーク!! いきなり何言っているの!? シャフリがいる前で……」


 絶対シャフリがニヤついている……あーもう! 最悪!!


 チラッとシャフリの方に視線を向けたが、シャフリは真面目な表情で私たちを見守っていた。

 そして、ジークが言葉の続きを口にし、私はジークに視線を戻す。


「自分の鬼神は愛するお嬢様のために使う。お嬢様を守るために使うと心に誓いました。お嬢様はどう思いますか? 戦うための力でもあり、何かを守るための力。お嬢様はどちらですか?」


 本当なら即決で答えるとこだが、私は答えを口にすることはできなかった。


「……まだ、分からない」


 ジークは笑みを浮かべて、拳に纏わせている鬼神を消す。


「良かったです。今この場で答えをもらえなくて」


「え?」


「先ほども言いましたが、中途半端な覚悟だと鬼神の炎に飲み込まれます。口では簡単に言えますが、心の底から……揺るぎない覚悟を持つことが大切です。今しばらく、悩んでください」


「……分かった。悪いけど、1人で考えたいから……」


「分かりました。シャフリ様」


 ジークに誘導されるシャフリは私に何も言わず、部屋から出ていく。

 そして、1人になった私は、天井を見つめる。


 ジークの言っていることは理解できる。

 理解できるけど……違うの。

 守りたいものは私にだってある……そのためなら私は鬼神を使う覚悟は出来ている。

 だけど……何かが違う。


 私は自分の左手を見つめ、思わず眉をハの字にする。


 この鬼神は……私の力じゃない。

いつもご覧になっていただき、ありがとうございます!

伊澄ユウイチです!


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