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ミーナの力1

 祖父の言葉を思い返しながら、私は屋根の上で空を見つめる。


「こんなところにいたんだね。ミーナちゃん」


 私の顔を覗き込みながら声を掛けてきたのはジークだった。

 私はジークの顔の向こうで広がっている空を見つめ続けながら、思っていることを口にする。


「……ねえ。ジーク」


「どうしたの?」


「……血。吸っても良いかな?」


「いきなりどうしたの? 一体……」


 私は上半身を起こし、空を見つめながら隣に座るジークに意図を説明する。


「お祖父様が言っていた私の力……一体どんなものか気になって」


「気持ちは分からなくもないけど、大丈夫?」


「何が?」


 顔は動かさず、視線だけジークに向け、ジークは困った表情を浮かべて私に言葉を返す。


「……血の吸い方。奥様から習ったの?」


「いや……習ってないけど、どうして?」


 ポリポリと頬を掻き、私から少し視線を逸らす。

 そして、視線を再び私に戻して、口を開ける。


「この前血を吸われたとき、貧血を起こしたんだよ」


「貧血?」


「奥様曰く、ミーナちゃんは血の吸い方をまだ知らないから、貧血が起きるって……」


 え? もしかして私の吸い方間違っているの? でも、吸うって言うから思いっきり吸い込むものじゃないの? ダメだ……暴走していたときの吸血方法を鮮明に思い出せない。

 だけど、間違っているなら、お祖父様が言っていた吸血鬼とエルフの混血が吸血した相手のように……。

 もしそうなったらジークが……嫌! それだけは絶対嫌!!


「それなら、夜にならないと聞けないわね」


「夜……ああ。なるほど」


「お母さん……疲労と安心感で寝てしまったから夜まで起きないわね。仕方ない、今は我慢しておきましょうか」


「でも……少しだけなら血を吸うことは出来るよ」


「え?」


「正確には飲むって言った方が正しいかな? シャフリ様に頼まれて、ミーナちゃんが万が一暴走したとき用に、僕の血を試験管に……」


 ジークが胸ポケットから血の入った試験管を取り出し、私に差し出してくる。


 最初からそれを出しなさいよ。

 まあ、直接噛みついて吸血する方法はジークのためにも、どのみち聞かなきゃいけないけど……。


「取り敢えず、飲んでも良いかな?」


「良いですけど……」


「けど?」


 私は試験管のゴム栓を外し、今すぐにでも血を飲める状態に入る。


「まずは吸血鬼になる薬を飲んでね?」


 完全に忘れてた。

 人間の姿で飲む気満々だったわ。




 ◇◇◇




 ミストレーヴ家の屋敷から数キロ離れた場所にて、ソフィアとサラスが準備運動を行っていた。


「本当に大丈夫なの?」


 眉をハの字にしたサラスがソフィアに尋ねる。

 ソフィアは屈伸運動を行いながらサラスに言葉を返す。


「門番の仕事は1時間ほどメイド長が代わりにやってくれる。問題はないわ」


「そうじゃなくて。戦闘訓練なら私じゃなくても……」


「サラス」


「何?」


 屈伸運動をやめたソフィアがサラスの目を見つめ、携えている剣を鞘から出す。


「勘違いしないで欲しい。これは私のための訓練じゃなくて、貴女の訓練よ」


「私の? どうして?」


「平和慣れしすぎ。サラス。騎士として王宮で働いていた頃を思い出して」


「王宮で?」


「私たちはクロノ様を命懸けで守ることを第一に考えていた。今は主が違えど、クロノ様をお守りしたい気持ちは変わらないはず」


 クロノの名前が出た瞬間、サラスの目つきが変わり、サラスはソフィアに尋ねる。


「……そこまで真剣になるなんて、貴女の超聴覚は何を耳にしたのかしら?」


「今は余計なことは聞かないで、私と一戦やってくれないか? 本気で」


 真剣な眼差しで見つめられたサラスは、仕方なさそうな表情を浮かべて、構える。


「良いよ。久しぶりに本気を出してあげる」


 サラスは自分の右腕に魔力を集中させ、透明な盾を生成する。


「イージス!」


「イージス……サラスが王宮で盾と呼ばれていた頃を思い出す」


「もう! 記憶を掘り返すのも良いけど、さっさとやりましょうよ! 来ないなら私は帰るよ!」


「す、すまない。それじゃあ……頼む」


 ソフィアは迷うことなく一直線にサラスの体めがけて剣を振る。

 剣の軌道を見切ったサラスはイージスで攻撃を受け止め、魔法で反撃する。

 サラスが放った魔法を回避しつつ、後退するソフィア。

 そして、イージスを見つめ、笑みを浮べる。


「流石サラス……結構全力で行ったんだけど、割れる気がしないわね」


「全力? 舐められたものね。全力なら……もう一段階、あるでしょう?」」


 サラスは首に吊していた笛を手に取り、嬉しそうな表情を浮かべたソフィアも笛を口にする。


『フォルテ!!』


 甲高い音が響き渡り、サラスとソフィアの動きが一段階速くなる。




 ◇◇◇




 吸血鬼の姿になる薬を飲み、吸血鬼となった私は試験管に入ったジークの血を飲む。


 意識がある状態で血を飲むのは初めて。

 どんな味か気なっていたが、無味無臭。まるで水を飲んでいるようだった。

 まあ、味はともかく……体に変化がないかを確かめたが、至って変わったところはなかった。


「……何も起こらない?」


「保管された血ではダメなのかな?」


「やっぱり直接吸血しないとダメなのかな?」


 変化が起きずに落ち込む私だったが、それは突然来た。


「ッ!? み、ミーナちゃん」


「ジーク? 一体どうしたの?」


 ジークは私の左手を見て、驚きの声を上げていた。

 何のことか分からない私はジークが見つめる先に視線を向ける。

 すると、視界に入った私の左手が……黒い炎を纏っていた。


「……え?」

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伊澄ユウイチです!


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