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ジークの企み1

「……ん? ん~、今日も快眠だった~」


 自然と3時間で目が覚めた私は、ベッドから体を起こす。そして前日に捻挫した右足首に触れると、痛みは完全になく、自由に動かせる状態に戻っていた。


「よし。治ってる」


 テーブルの上にジークが用意した着替えに手をかけ、私は寝巻きから薄手のピンク色のドレスに着替える。


「お嬢様」


 着替えが終了すると同時に、扉の向こうからジークが声をかける。


「どうぞ」


「失礼します。目覚めはよろしかったですか?」


「ええ。目覚めの紅茶があれば、なお良いんだけどね」


「そう仰ると思いまして……」


 ジークが軽く指を鳴らすと、テーブルの上に紅茶が注がれたティーカップが突如現れる。


「あんたは手品師か」


 以前、何もないところから紅茶を出現させた手品を覚えていた私は、思ったことをそのまま口にした。


「手品師さん程、完璧で人を魅了するような手品は扱えませんが、この程度の手品なら幼い頃に教えてもらいまして……」


 どこのどいつよ。子供に手品の種を明かして教えるなんて。


 椅子に座って足を組みながら紅茶を飲み、改めて捻挫していた右足首の動きを確認する。するとジークが興味津々の様子で、私の右足首を見つめる。


「おや? 確かそっちの足は……」


「ん? ああ。あんたは知らないよね。私の体はトコトン特殊でね。人間状態の時に負った怪我は、一度吸血鬼状態になると完全回復するの。アイツの見立てだと、心臓が動いている限り、どんな怪我も回復するんだって」


「アイツと言いますと?」


「アイツってのは母のことよ」


 ジークは眉をハの字にし、私にある指摘をしてくる。


「お言葉ですが、奥様のことをアイツというのは如何なものかと」


「何よ。私がアイツのことをどう呼ぼうと勝手でしょ?」


「確かにそうでございますが……」


 納得しがたい表情を浮かべるジークに、私はイラつき始める。


「何か言いたいことでもあるの? 怒らないから言ってみなさい」


 ジークは一息ついて、思いを口にする。


「ミーナお嬢様。奥様はかけがえのない家族なのですから、もっと大切にしてくださいね」


 絶対ヤダ。

 

 事後報告当たり前、動くと厄介ごとばかり持ってくるヤツを家族として認めたくない。


「……次はお嬢様が納得していませんね」


「当然よ。でも、怒らないって約束したし、この話は終わりにしましょう。それよりも、昨日出来なかったバスケットボール? ってヤツをやってみた……」


 ジークの顔に視線を向けると、いつも笑みを浮かべているジークが、悲しげな表情を浮かべて私を見つめていた。その表情を見た瞬間、私は無意識に口を止めていた。


「……すみません。治ったとはいえ、今日まで安静にしていましょう。明日、もし天気が良ければバスケットボールをやりましょう。それでは、後ほど」


 一方的に言葉を放ったジークは、悲しげな表情のまま部屋を後にした。


 呼び止める言葉が出なかった私は、ティーカップに残っている紅茶に映し出されている自分の顔を見つめた。


 あいつも……悲しそうな顔するんだ。



 ◇◇◇



「あー、もう。昨日は良いところだったのに……」


「今日はの間違いだよ。サロミアちゃん。まさかジークくんが一瞬の気配を感じて攻撃してくるなんて、僕でも予想できないよ」


 デスクに顔を伏せるサロミアに、エディックは苦笑いを浮かべて言葉を添える。


「あら。イクセプトで最強の暗殺者のあなたでも?」


「昔の話を掘り返すのはやめてくれよ。色んな国に利用されてきた僕は、君と出会ってようやく殺しの道から抜け出せたんだから」


 サロミアはクスクスと笑い、勢いよく立ち上がった後、エディックに抱きつく。


「暗殺者の時のあなたも、今のあなたも素敵よ」


「サロミアちゃん……」


 2人の顔が急接近し、口と口が重なろうとしたその時。


「コホン。失礼します」


 背後から聞こえた声に驚いた2人は、体をビクつかせて背後を見る。


『じ、ジークくん!?』


「いつからそこにいたの?」


「あー、もう。からノックをしていましたが、返事がなかったものなので、勝手ながら入室させてもらいました」


(全部聞かれてたああぁぁッ!!)


 2人は顔を引きつり、バツ悪そうな表情を浮かべる。


「やはり、昨日の気配は奥様と旦那様でしたか……」


「勘違いしないで! ジークくん。別に覗こうとしたわけじゃないのよ。たまたまあそこでダーリンと夜景を楽しんでいたら……」


 必死に弁明するサロミアだったが、ジークの様子がおかしいことを察し、口を止める。


「いきなりの質問、お許しください。奥様、旦那様。お嬢様から普段どう呼ばれていますか?」


 サロミアとエディックは顔を見合わせて、ミーナにどう呼ばれていたかを思い出す。


「おい! ……かしら?」

「僕も同じだね」


 するとジークは、ミーナに見せた悲しげな表情を、2人にも見せる。笑顔が似合っているジークが、悲しげな表情を浮かべたことに驚いた2人は目を丸くする。


 そして、ジークは2人に頭を下げ、あるお願いをする。


「……ジークくん。あなたの言っていることは正しいわ」


「僕らが出来ることは何でもするよ」


「奥様……旦那様。ありがとうございます」


 再び、ジークに笑みが戻り、3人はあることを企て始める。

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