サロミアの父5
「暴走しないって……何を根拠に?」
類稀で存在自体が奇跡と言われている混血である私の……その原因不明の暴走が起きないって、何で言い切れるの?
「見たこともないのに何を言っている? みたいな顔をしているな。お前より遥か……サロミアの倍近く生きている私には分かる。いや、正確には見てきたと言った方が良いかな?」
祖父は父が座っていたソファーに座り、詳細を話す。
「サロミアが生まれる前、私がこの屋敷の主だった時に、とある国に属している同胞が訪ねてきたのだ。その同胞はミーナ……お前と同じ、吸血鬼と人間……ではないが、吸血鬼とエルフとの混血。奴もまた奇跡の混血と呼ばれていた奴だ」
その場の全員が驚きの表情を浮かべ、話を聞いていた母が言葉を付け足す。
「種族が違うもの同士で子供を授かる可能性は約1%未満。確率から見て他人からは奇跡だとか言われているけど、実際は前例のない異質な存在。そしてその方も貴女と同じ、他人の血液を見て、自我を失う暴走があった」
そんな……私だけじゃなかったんだ。
「暴走があったって……じゃあ、その人も私と同じで」
「察しが良いな。そうだ。奴も同じで最も信頼を置いていた存在の血を飲んで自我を取り戻したが……血を捧げた相手は死んだ」
私は思わず口を手で隠し、ジークに視線を向ける。
ジークは表情を崩すことなく祖父を見つめ続け、再び首筋に手を当てる。
「奴の場合、飲まされたと言った方が正解だな。だが、一度血を飲んでから、奴は暴走することはなかった」
「だから……私もしないって言いたいわけ?」
「絶対しないとは言い切れないところが残念だが、暴走する可能性は低いと思っている。そして、奴とは違い、お前が吸血した対象はまだ存命している」
祖父はジークに視線を向け、笑みを浮かべる。
「大した男だ。危険だと承知の上で血を吸わせるとは」
「自分の中でそれが最善だと思ったからです」
「ヒビキと全く同じことを言いよる。まるで生まれ変わりのようだな」
「自分はヒビキさんには及びません。あの人は本当に……」
「待て待て。昔話は時間がある時にしよう。今はミーナの力について話すとしようか」
「私の……力?」
「そうだ。我々吸血鬼は血を吸うことにより、強力な力を使うことが出来る。その力は1人1人違う。そして、ミーナ。お前はまだその力が何なのかを理解していない」
私の力……私が血を吸ったら、何が?
「まあ、お前の性格上、戦うために使うことはないだろう。だが、いずれお前はその力を呼び起こし、使う日が来る。近いうちにな」
「……」
私は視線を落とし、自分の中にある力のことを考える。
「ミーナちゃん……」
「お嬢様……」
終始口を閉ざしていたシャフリと隣で私の様子を見守っていたジークが声をかけてくれるが、私は顔を上げることが出来なかった。
「今は悩むが良い。その力はお前が強い意志を持っていれば、必ず応えてくれる。心配は無用だ」
祖父は優しく私の頭を撫で、満面の笑みを浮かべてゆっくりと立ち上がる。
「さて、私は行くとしようか」
「お父様。もう少しゆっくりしていけば……」
母が祖父を引き留めようとしたが、祖父は首を横に振って断る。
「風呂に入ってワインも飲み、可愛い孫と娘に会えたのだ。十分ゆっくりした。それに、お前たちもこれから忙しくなるのだろう? アルカディアの王位継承式絡みで」
「知っていたのですね」
「ヨハネスの腑抜けた顔でも拝んで、私はまた旅に出る。まあ、旅と言っても老後の旅行のようなものだがな」
高らかに笑った祖父は部屋から出て行こうとする。
ジークが扉を開け、廊下出た瞬間、祖父は足を止め、私に言葉を残していく。
「ミーナよ。お前の母は素晴らしい主だ。だが、それ以上にお前は良い主になる。自信を持て」
顔を上げだ時には祖父の姿はなく、外から馬の鳴き声が聞こえ、蹄の音が遠くなっていった。
「お祖父様……」
◇◇◇
「やれやれ……颯爽と屋敷を出たのは良いが、サロミアの奴は一体何をしたのだ?」
王国市街地に向かう道中、ジアスは中隊規模のアルカディア軍と対面していた。
「一般市民の行く先を塞ぐのが軍のやり方か?」
「我々はこの先の屋敷の主、サロミア・スカイ・ミストレーヴの身柄を拘束するために進行している。道を開けろ!」
「ほう? 拘束か……容疑は?」
「拉致、または殺害の容疑だ。その屋敷に連れ込まれた一般人3名が消息不明となっている。これは国王ご子息、リギル・アルカディア様の命令だ。分かったなら道を開けろ!」
「理解はした。しかし……」
ジアスは内ポケットから血液が入った試験管を取り出し、思いっきり噛み砕く。
「ここは退いてもらおうか」
ジアスの周囲に紅い球体が6個現れ、ジアスはその球体に指示を出す。
「行け。ファンネル」
球体が勢いよく飛んで行き、アルカディア軍が所持している武器に、紅い光線を放って破壊していく。
「な、なんだ!?」
「中隊長!! 武器が全て破壊されました!!」
「何だと!?」
「そのリギルとか言う小童に伝えておけ。これは警告だ。もし、私の娘……孫に手を出そうものなら、アルカディアに明日はないと」
ジアスは目を細め、彼らにも感じ取れるほどの殺気を放つ。
兵士たちは完全に怯み、武器も破壊され、目的を達成するのが困難だと判断した中隊長は撤退を指示し、屋敷から遠ざかっていった。
「サロミア。ミーナ。この国は……どこかに陰りがある。気をつけてくれ」
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