生きる意味2
床に転がっている私を起こそうと、ジークは手を差し伸べてくる。
しかし、私はジークの手を取ることは出来なかった。
「ジー……ク」
「気をしっかり持ってください。しっかり自分を見てください」
「でも……私、メイドたちを……アンタを傷つけたのよ? 開き直るなんて……」
ジークから視線を逸らし、シーツで再び顔を隠す。
鏡を見ていないけど、今の私は誰にも見せられない顔をしていると思う。ましてはジークには見せたくない。
「……失礼」
ジークが呟いた数秒後、顔を隠していたシーツが剥がされる。
「いやぁ!!」
「大丈夫です。自分を見てください」
「いやぁ!! お願い!! お願い!! もう……」
言葉を口にしようとした瞬間、私はジークに……唇を奪われた。
「んん!?」
数秒ほど私と口づけをしたジークは、優しい表情を浮かべる。
「大変失礼しました。ですが、こうでもしないとお嬢様は自分を見ていただけないと思って……」
「ジーク……」
「それと……自分や亡くなったメイドさんたちのことは気にしないでください」
「……え?」
「自分はお嬢様を救いたい一心で、このような結果になってしまっただけです」
ジークは首筋に付いているガーゼに手を当てる。
「メイドさんたちも同じです。ただ、力及ばなかっただけです。彼女たちは、お嬢様を恨んでなどいませんよ」
すると、私を悩ませていたメイドたちの幻影がジークの背後に現れる。
血まみれだった姿とは違い、全員綺麗なメイド服を纏って、私に笑みを向ける。
「あ……ああ」
涙腺から涙が溢れ、私は涙を流しながらメイドたちに笑みを見せる。
私の笑みを見たメイドたちは風景と同化するように消えていき、私はジークに思いっきり抱きつく。
「ジーク……」
「はい」
「もう一回……良い?」
意味を理解したジークはにっこりと笑みを浮べ、私の唇を奪ってくれた。
◇◇◇
真実を知ってから3日後。
衰弱していた私の心身が回復に向かい、やっと歩けるようになった私はジークに付き添ってもらいながら、とある場所に向かっていた。
「大丈夫ですか? お嬢様」
「ありがとう。ジーク。まだ力が入らないけど、大丈夫」
「正直驚いていますよ。かなり精神的に参っていたはずなのに、ここまで回復するとは」
「アンタのお陰よ。それはそうと……」
「はい?」
「あの時……ミーナって呼んだでしょ?」
「あ、いや……そのですね……」
「……良いよ、ジーク。2人の時は」
「え?」
私はジークから視線を逸らし、歩みながらもう一度思いを口にする。
「だから……二人っきりの時は良いよ。ミーナって呼んで。それと敬語もやめて」
「お嬢様……」
「むぅ……」
名前を呼んでくれず、私は思わず頬を膨らませ、マズいと察したジークは苦笑いを浮べて照れくさそうに私の名前を口にする。
「み……ミーナ」
「うん……ジーク」
他人が聞いていたら赤面してしまう会話をしながら、私たちは目的地に辿り着く。
「見晴台……久しぶりに来たような気がする」
「ミーナ。こっちだよ」
見晴台から少し離れた場所に、真新しい慰霊碑があり、私は慰霊碑の前で片膝をつく。
「……急なお願いだったのに、想像以上に綺麗で豪華な慰霊碑が出来たわね」
「この程度、大丈夫。それよりも、メイドさんたちの名前に間違いはありませんか?」
慰霊碑に彫られた名前を手でなぞり、私は1人1人の名前を呟く。
「……間違いないわ。全員の名前はあるわ」
「それは良かった」
「せっかく作ってもらったけど……出来ればこの慰霊碑にもう名前を彫りたくないわね」
「同感です」
私とジークは同時に目を閉じ、1分間黙祷する。
再び目を開けると、冷たい風が私とジークを包むように吹き、ジークはソッと私を抱き寄せる。
「……みんな、ごめんね。私が未熟で臆病だったからこんなことになって……でも、ありがとう。私はもう過ちを犯さない。暴走した力も誰かを傷つけるためじゃなく、誰かを守るために使うわ。だから……私を信じて……眠って」
屋敷に戻ろうとしたその時、いつも餌付けしている小鳥たちが一斉に私の体に集まる。
「わッ!! ちょっと!! 何~? くすぐったいよ~」
「久しぶりにミーナが顔を出したから嬉しいんだよ。はい。いつものパンの耳も用意しているよ」
私はジークからパンの耳を受け取り、小鳥たちに与える。
久しぶりに心が安らぎ、私はジークと視線を合わせて笑みを浮べた。
◇◇◇
「やれやれ……どうやら立ち直ってくれたみたいですな」
屋敷のとある部屋からジークとミーナの様子を見守っていたバルディゴ、サロミア、エディックがホッと胸を撫で下ろす。
「衰弱しているって聞いたときは心配したけど……ジークくんのお陰だね。サロミアちゃん」
「ええ。だけどエディック良いの?」
「え? 何が?」
「大事な娘が男と結ばれたのよ?」
「え? え? どういうこと!?」
「え? まだ理解していないの?」
「さ、サロミアちゃん!! 一体どういうこと!? ねえ! 教えて!」
サロミアは頭を抱え、叫いているエディックを無視し、バルディゴに話を振る。
「バルディゴ。例の件だけど……」
「ああ。生憎だが、私の体はまだ本調子じゃない。だからシャフリにことを任せている。大丈夫だ。おっちょこちょいだが、魔法薬師としての腕は確かだ。ご要望にはきっと応えよう」
「助かるわ。あとは……あの子に話しを通すだけね」
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