真実2
サロミアに連れられたジークとシャフリは、執務室のソファーに腰をかけていた。
そして、対面で冷静に紅茶を飲んでいるサロミアに尋ねる。
「奥様……」
「落ちつきないわね~、ジークくん。少しは落ち着いたらどう?」
「どうして冷静でいられるんですか!? ミーナちゃんがあんな状態なのに……」
「シャフリ様」
感情的になっているシャフリをジークは優しく宥める。
心の底から溢れ出てくる感情を抑え込んだシャフリは、視線を下に逸らし、出された紅茶に口をつける。
「……そうね。少し落ち着きすぎたかもしれないわね。でもね、私はミーナちゃんがいずれ全てを知るときが来ると思っていたの」
「覚悟が出来ていたから冷静でいられると?」
「そういうこと」
いつもの緩い口調で言葉を返すサロミア。その隣で佇んでいるエディックも表情を変えることはなく、会話を見守り続ける。
「……ジークくんとシャフリちゃん。いえ、私とエディック以外の屋敷の住人は、危機的状況だと思っているでしょう?」
「はい。ミーナちゃんの様子を見る限り、何が起きてもおかしくありません」
いつも優しい表情を浮かべるシャフリが、サロミアを睨みつけながら喰い気味に言葉を返す。
しかし、サロミアは動じることなく、ジークとシャフリを交互に見て、ため息をつく。
「何が起きると思っているの?」
「それは……私の口からは」
「良いわ。言ってみて」
サロミアから目を逸らし、シャフリは震える声で思いを口にする。
「ミーナちゃんが……罪の意識で自ら命を絶つ可能性があります。それなのに、サロミアさんとエディックさんはなんで……」
サロミアとエディックは瞼を閉じ、思いを口にしようとするが、ジークが口を開き、2人に変わってシャフリの問いに答える。
「シャフリ様。それは絶対にあり得ません」
シャフリは「どうして?」と尋ね、ジークの思いを聞こうと、サロミアとエディックは口を閉じる。
「自分が屋敷に来る前から、お嬢様は自分自身の存在を嫌っていました。それこそ、自決する思いで……」
「それなのにどうしてあり得ないなんて言うんですか?」
「悪い言葉で言うのであれば、覚悟が出来ていないからです。本気で死のうと思うのであれば、即行動に移します。そして、良い言葉で言うのであれば、優しすぎるからです。お嬢様は生きる者、全ての命を大切にしているのです。勿論、自分の命も」
「だから……あり得ないって?」
「はい。そして、自分はお嬢様を信じています。だから自決はあり得ません」
ジークの真剣な眼差しに貫かれたシャフリは、反射的に体を震わせ、開いた口が塞がらなくなる。
「ですよね? 奥様」
「大正解よ。ジークくん。だけど、100点満点の回答にしては蛇足ね」
ジークはにっこりと笑みを浮べ、満点回答に辿り着いたことを知ったサロミアも笑みを浮べる。
「シャフリちゃんはまだまだ時間が必要だったみたいね。ジークくん。危険を承知の上で、貴方が血を提供してくれて感謝しているわ」
「いえ。自分の血液でお嬢様を守れるのであれば、何度でも。ところで、詳細はあえて聞かなかったのですが、奥様は何故、暴走したお嬢様を止める方法を知っていたのですか?」
呆気にとられていたシャフリとエディックが口を揃えて「そういえば」と呟く。サロミアは笑みを浮べたまま、紅茶を飲み、一息ついてから言葉を返す。
「長くなるわよ?」
「構いません。今聞いておかないとタイミングがありません」
「そう……なら話すわ」
ジークはコクリと頷き、シャフリとエディックはゴクリと唾を呑む。
「そもそも吸血鬼ってどんな存在か知っている?」
「いえ」
「分かりません」
「エディックは知っているでしょう?」
突然話を振られたエディックは、後頭部をガリガリと掻きながら言葉を返す。
「サロミアちゃん。実は良く分かっていなくて……」
「あら? 20年近く一緒にいて、分からないの?」
「ごめん。ただ、日光が弱点ではないことは理解しているけど」
「間違った吸血鬼の存在は1回忘れて頂戴。吸血鬼……血を吸って生きるのではなく、血を吸うことによって、鬼のような力を得る存在よ」
鬼という言葉に反応したジークは思わず立ち上がり、立ち上がったジークを見て、シャフリはキョトンとする。
「鬼の話が出れば早いわね」
「あの~。鬼って……あの鬼のことですか?」
理解が追いつかないシャフリは率直に尋ねる。
「そうよ。人間、人外種から恐れられ、神ですら脅威を感じるほどの種族。たった1人で国を滅ぼせるほどの力を持ち、睨みつけるだけで力ないものは意識を失う」
「たった1人で!?」
「ええ。だけど、繁殖能力は高くなく、徐々に数が減っていき、10年前に絶滅したわ」
絶滅という言葉を聞いてシャフリはホッとするが、隣でジークは拳を作り、奥歯を噛みしめる。
「少し話がそれたわね。私たち吸血鬼は、眠っている力を解放することが出来るの。内容は人それぞれで、攻撃的なものもあれば、守備的なものもあるわ。ただ、血を吸って力を得るには3つ条件があるの」
『条件?』
ジークとシャフリは声を重ね、サロミアはコクリと頷いて話を続ける。
「1つ目は精神が安定していること。不安定な状態だと眠っている力に飲み込まれることもあるわ。2つ目。吸血鬼以外の種族で、お互いに信頼している関係でないと吸血してはいけない。これは前にも言ったとおり、拒否反応が出て、どちらかが死ぬことになるわ。そして3つ目……」
サロミアはソッと瞼を閉じて、3つ目の条件を口にする。
「吸血鬼であることよ」
『え?』
その場にいる3人は目を丸くするが、サロミアは決して冗談で言ったわけではなかった。
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