プロローグ
始まりは、母の一言だった。
「ミーナちゃん。今日からあなた専属の従者をつけることにしたから」
我が耳を疑い、目を丸くして笑顔を浮かべる母を見つめる。
「は……はぁ!?」
◇◇◇
昼だというのに部屋のカーテンを閉め切って、ベッドの上で何も考えずに過ごしている私はミーナ・アリスト・ミストレーヴ。
半分吸血鬼で半分人間の中途半端な存在。母譲りの銀髪と紅い瞳。父譲りの人間らしい顔立ち。世間では「奇跡の混血」と言われ、羨ましがられることがあるが、私は自分自身が大っ嫌いだ。
そんな大っ嫌いな自分を守るように、外部を遮断し、部屋に出入りを許したのは母と父と私が認めたメイドのみ。出来る限り外部との接点を無くそうとするが、不本意ながら窓の外から聞こえる様々な種族の声や音が、私の耳に届いてしまう。
非常に耳障りだ。
苛立ちを抑えながらも、目を閉じようとしたその時。
「ミーナちゃ~んッ! 入るわよ~」
容赦なく部屋の扉を開けて入ってきたのは、母のサロミア・スカイ・ミストレーヴ。
女の私から見ても美しく、綺麗な顔をしていて、ナイスな……いや、女性が誰でも欲するような神秘的な体。おまけに高身長。ウエーブが掛かった銀髪で、黒の薄手の長袖ワンピースを身に纏っている。
外見は派手だが、性格はゆるふわで事後の報告が多い。
「いつも言ってるでしょ? 入る前に声をかけてよ」
「そうだっけ? それにしてもまた部屋を暗くして~。性格まで暗くなっちゃうぞ~」
うっざ!! 私の勝手でしょ。
母は勝手に部屋のシャンデリアを点け、部屋を明るくさせた。
「何? 何か用なの?」
「そうそう! ミーナちゃん。今日からあなた専属の従者をつけることにしたから」
「……え? なんて?」
「だ~か~ら。あなた専用の従者を雇ったの」
「は……はぁ!?」
勢いよく体を起こして、私はニッコリと笑みを浮かべている母の顔を睨みつける。
「意味分からないし!! そんなのいらないから!!」
「もう雇っちゃったわよ」
「と言うかまた事後報告じゃん!! 毎回言っているよね? 話し通してから物事決めてって!!」
母は笑顔を崩すことなく、私に言葉を返してくる。
「だって、ミーナちゃんに話し通したら全部拒否するじゃない」
流石は母。私の性格を熟知している。
「とにかく顔を合わせてみましょうよ。会わずに拒否するのは良くないわよ」
「会いたくない。そもそも従者を増やす必要あるの? 私の記憶が正しかったら10人ほどメイドがいたじゃない」
母はクスクスと笑って従者を増やす理由を述べる。
「数日前に半分ほどやめてしまったのよ~」
「なんで?」
「全員理由がお嬢様のワガママに応えられなくなったそうよ」
原因は私か……。
自分の頭上にタライが落ちてきたのかと思うほど鈍い衝撃が走り、私は頭を抱える。
「幸い古株さんたちは残ってくれたけど、負担をかけるのはあまり良くないと思ったの。そこであなた専属の従者を募集したら良い人が見つかったの~」
事の成り行きを知った私は、深くため息をついて、覚悟を決める。
「……あー、もう! 分かったわ! 会うだけ会えば良いんでしょ? 早く連れてきてよ」
「理解してくれて嬉しいわ~。じゃあ、早速入ってきてもらうわね」
母は扉の向こうにいる人物に声をかけ、部屋の中に招き入れた。そして入ってきた人物を見て、私は目を丸くする。
「え? ちょっと、ちょっと!」
「ミーナちゃん。紹介するね。この人があなた専属の従者になる」
「ジーク・アルヴェルドです。初めまして、お嬢様」
お、お……。
男が来たああああぁぁぁぁッ!!
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伊澄ユウイチです。
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