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貴方の側に置いてください  作者: 茶納福
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お出掛けと僕


「それではマスター、いきましょうか」


そう言いながらイグニカさんは僕の目の前で透明になっていく。

側にいると言われてはいるし信頼もしているが目の前に居ないのはやはり寂しい


「私は構わないのですがマスター、透明化を解除すると捕まる可能性が激増しますよ? 勿論お守り致しますので心配は無用ですが」

「いや、どっちにしろダメじゃん」


僕の寂しいと言う心を読んでくれたのか少し鬱陶しい動きをしながら僕に話しかけてくれる

お陰か寂しい気持ちは薄れていった、本当に彼女は僕のためなら何でもしてくれるのだろう……そう思える。


「あ」

「どうされました?」

「いや、僕お金が……」


今回のお出掛けに浮かれて根本的な事を忘れていた

だが折角のお出掛けを今更中止すると言うのは余りにも辛い話だ。


〈……生活費を削ればいけるはずだ〉

「何でもない! 行こう」

「マスター、ご心配なく」


僕の心を読んだのだろう、彼女は安心させるように僕の前に立つ

余計な心配をさせてしまったと少し後悔する

そう考えた瞬間


「!?」


僕の制服のズボンが突然、いや正確には左のポケットが重くなった

そしてポケットが先程より膨らんでいた。


「?」


何が起きたのかと思い僕は左ポケットに手を入れる

そして中に入っていた物が原因で膨らんでいた事に気付いた

手を引き出すと4cm程厚みを増した僕の財布があった。


「……」


重たくなった財布を開けると

何枚もの紙が重なり白い帯に縛られたTVでしか見たことのないヤツが3つ入っていた。


「えっと……イグニカさん?」

「はい」

「こ、こここ、これは!?」

「お金ですね」

「どうやったの!? こんな大金!!」

「必要かと思いまして」

「ましてって……」


彼女の言葉に僕は全身から力が抜け床にへたり込んだ。


〈もぅ何でもありだな〉


僕の傷を治し透明になりついにはお金を出した

彼女はきっと魔法使いか何かなのだろう。


「魔法少女イグニカとお呼びください」

「本気にしないでよ……」



その後ひとまず今日のお出掛けに必要な分だけ差し引いて残りは家に置いておくことにした

恐くて持って行く事が出来なかったからだ

彼女に返す事も考えたが3回やり取りを繰り返して諦めた。



「それじゃ行こうか」

「はい」


心配の種も無くなり僕らは玄関を開けて外へ出た。

この後の予定はまずお昼ご飯を食べて彼女の服を買って遊びに行く

ここに越してきてから街に行くのは買い物かバイトの時のみだ

初体験だらけでどうなるかは分からないが彼女とならきっと何をしても楽しいと思えた。



僕らは学生寮から出て20分ほど歩き夜代市の商店街に着く

夜代高校の学生寮は街の中央広場から続く坂道で行き来出来る

更にそこから続く大通りを行けば商店街まで辿り着く便利な立地だ。


商店街には車道を挟んでコンビニや料理店個人経営の事務所等が並んでいる

その入り口に門の様な出で立ちの看板があり夜代商店街と書かれ

商店街だけでなくその周りにもお店が沢山存在している。


その光景を僕はじっと見ていた。


ここに引っ越してきて1か月

ここはバイトと買い物の為に何度も通った道だ見慣れた光景の筈だ

しかし僕は言葉を飲んでただ立っていた。


「マスター?」


彼女が耳元で僕に囁く

学生寮からここに来るまでに街の中で怪しまれないように

耳元で囁く彼女と会話をする練習をしていた

慣らしておいて正解だった、少し反応した程度で周りには怪しまれていない。


「……いや何か新鮮に感じちゃってお昼に街へ来た事なんて無かったから

初めてなんだ、何て言うか慣れなくてバイトと買い物の為に通る事しかなくて」

「そうだったんですね」

「……うん」


僕は小声で彼女と会話する


〈そうだ……今はお出掛けだけどこれが終わったらいつも通りバイトがあって、そしたら〉


段々と思考がネガティブになる

遊びにいくはずだったのにどんどんと気持ちが現実に帰っていく。

そんな嫌な思考のるつぼに嵌まっていく僕を優しい現実に連れ戻してくれる感触が左手を包む


その感触は僕の手をこそばゆい感覚と共に気持ちが落ち着いていく

左手を握ってくれる存在は見えないが僕にはちゃんと彼女が見えていた。


「でしたら早く行きましょうマスター、時間が有限ならば余計に楽しまなければ損と言うものでしょう?」


そう言うと僕の指に彼女は指を絡めながら自分の方へ引っ張る。


「うん」


僕は手を引かれながら彼女に返事を返す

そして僕らは互いの歩幅を確認するようにゆっくりと歩き出しながら街の賑わいに溶け込んでいった。



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