番外編 芹澤絵茉と一日デート 前編
注意事項⚠️
こちらの話は本編とは少々違う部分がございます
キャラの性格や行動、喋り方や関係などが少々異なります
あくまでIFストーリー、番外編であることをご了承ください
本編ではまだ現れていないキャラや設定が登場する場合がありますがそこは瞳をそっと閉じて無視していただけますと幸いです。
「気になるんだ」
鉄秀次ことてつは一点を凝視しながらいきなり呟いた
「何が? 」
〈? 〉
授業も終わりHRも終了し殆どの生徒が教室を出て帰り静まった教室
僕とイグニカは頭に疑問符を浮かべながらてつがジッと見つめている視線の先に目をやった。
「zzz」
そこに居たのは
「zzzzzz」
僕の隣の席の生徒
「zzzzzzzzz」
芹澤絵茉さんだった。
芹澤絵茉[せりざわ えま] 年齢16歳
身長 160cm程
体重 不明[痩せ形]
スリーサイズ 不明[当たり前だ]
趣味特技 不明
特記 学校にいる間はほぼ寝ている
「クラスでの聞き込みの結果、彼女と会話したことがあるものは殆どいない」
てつは唐突に聞き込み調査の話をし始めた
て言うかてつ、お前学生会の仕事もあるのにそんな事してたのか
「だがそれもそのはず、彼女は学校にいる間殆ど寝ている事が多くそも会話が出来ない」
「zzzzzzzzzzzz」
「「……」」
〈でも確かに絵茉さんの事、僕も気になるかも〉
〈私の場合興味というか心配があります
こんなにも寝れるのは体質か若しくは何らかの病気の可能性があります〉
〈……確かに、改めて考えるとそうだよね〉
彼女は授業中は体育以外ほぼ寝ている
その体育ですらテストや練習試合以外は何処かで寝ている。
ならば成績はズタボロなのかと言うとそんな事はなく
全ての科目で常にトップ5に入る成績を維持している。
点数はトップクラスなのに内申は0という両極端
その上授業中の質問には100%の正答率で答える為先生方は一部を除き彼女の睡眠を無視というか殆ど黙認している。
それには別の理由もあった
「起こそうものなら不機嫌極まりない顔でキレてくるからコミュニケーションの取りようが無いんだよな……」
そうなのだ
僕はあまり経験がないが絵茉さんは起こされるとキレる
いや授業中寝てる貴方が悪いよねと正論を言いたくなるが
絵茉さんの気迫と眼力に気圧され自分が悪いと誤認してしまう者が後を立たない。
「僕の時はそうでもないけどね」
「金森は芹澤係だからな」
「え、何それ?僕そんな風に言われてるの」
初めて聴くワードに驚く僕
「唯一芹澤を起こしても怒られない人間って事で付いたあだ名だ」
「嬉しい様な嬉しくない様な微妙なあだ名……」
聞くとどうやらクラス全員そう思っているらしい
そんな会話をしていると
ガタッ
「……んぅ」
さっきまで寝ていた絵茉さんが顔を上げた。
「……」
教室の時計を確認しながら数回瞬きをして
椅子から立ち上がり鞄に荷物をしまい
椅子を戻す、この間10秒弱
「じゃ」
気怠そうに僕等に挨拶をしそのまま教室を出た。
「「「……」」」
そこから僕等は教室の扉を開け顔を出し廊下を覗く
すると絵茉さんの姿はそこに無かった。
「「「!?」」」
この教室から一番近い階段までは走っても10秒以上はかかる、ちなみに僕なら20秒は堅い
「くそ!まただ」
そう言いながらてつは膝に握り拳を落とす
これで何度目かは分からないがこの様子からもう幾度も見失っているようだ。
「芹澤が教室を出てその後を追うといつも居ない!どうなってるんだ!?あいつは忍者なのか」
そう言いながらてつが僕の肩を掴み揺さぶってくる
「イヤッんな、ことッ言われても」
「前に一回芹澤が教室を出るのに付いて行ったら凄い顔で変態と罵られたんだよ!! 」
「そんな事をカミングアウトされてもさぁ!? 」
〈まさかのストーキング趣味が発覚ですね〉
〈いやイグニカそんな事……あるわけないよな?てつ、ないよね? 〉
馬鹿な想像を広げながらてつをなだめる
てつも段々と落ち着きを取り戻す
「……喋った回数なんて片手で数えられる程度だが
芹澤は悪い奴じゃない、確かに態度はあまり良くないが
俺の仕事を手伝ってくれたり潮の事を助けてくれたり
根は絶対に良いやつなんだよ
だから、せっかく出来た縁を大切にしたいんだよ
友達になりたいじゃんかよ……」
「てつ……」
〈しかし、その結果がストーキングでは〉
〈イグニカ黙って〉
〈失礼しました〉
ピンポンパンポーン
「学生会所属の全生徒へ、会議を行いますので至急学生会本部へ来てください……繰り返し連絡します……」
学生会所属生徒への連絡放送
つまり、てつも行かなければならない。
「……いかん忘れてた……今日はHR終わったら早めに本部に来いって会長に言われてたんだった」
「てつにしては珍しいミスだね
それじゃ、いってらっしゃい」
「はぁ……ヨシッ行ってくる」
「うん」
頬を叩き気合を入れ直したてつを見送り
僕は誰も居なくなった教室で自分の席に座った。
「どうしました?潮」
「いや、ちょっとね」
イグニカが心の中でなく声で話しかけてくる
本来なら学校にまだいるのだから止めたほうがいいのかも知れないが
時間は17時半になろうとしている、この時間帯に教室にわざわざ戻ってくる生徒はまず居ない。
「友達になりたいってさ……」
「てつ君が言っていましたね」
「うん、考えてみたら僕も絵茉さんと話した事はあるけど友達かって言われるとそんなこと無いし
……じゃあ仲良くなりたくないかって言われるとそんな事もない……つまり」
「潮も絵茉さんとお友達になりたいという事ですね」
「……うん」
僕の思考の結論をイグニカに言い当てられ若干恥ずかしくなる
改めて考えると自分の思考が気持ち悪く感じるが
本心なんて大なり小なり皆身勝手で気持ち悪いもの、の筈だ。
「であれば、来週からは積極的にお喋りを試みてみましょうか」
「うーん、それは」
「大丈夫ですよ、芹澤係の潮なら」
「その芹澤係ってのだけは、未だに納得いかないけど」
「私がなんだ? 」
「「!?!? 」」
突然僕等の間に割って入ってくる別の人物の声
しかも、この声は
「えッぇ絵茉さん!? 」
「なんだ? 」
「ななななんでここに? 」
「生徒の私が居たら不自然か? 」
「いやそうだけど!! 」
確かに正論ごもっともだけれども、絵茉さんさっき
「帰ったんじゃなかったの」
「あぁ、あれは嘘だ」
「嘘ぉ!? 」
「あぁ」
え?え?え?ドユコトデスカ?
「お前に話があってな」
「ぼ、僕に? 」
「そうだ」
話?なんの事だ、駄目だビックリしすぎて頭が回らない
「明日私とデートをしよう」
……
…………
………………
「…………すみません、もう一度お願い致します」
「……あのなぁ、私だって恥ずかしいんだぞ? 」
「だと思います」
「なら……はぁ、良いか?よく聴け
明日、私とデートをしよう」
……
…………
………………
「へぇッ?」
「流石に私も傷つくぞ」
「……」
〈「じゃ、明日寮のお前の部屋に迎えに行くから部屋番を教えろ」〉
〈「さ、303です」〉
〈「分かった」〉
あれから寮の部屋へ戻りイグニカお手製の夕飯食べている
いつもなら美味しくて止まらないはずの箸がフラフラと皿を行ったり来たりしている
「潮、迷い箸は行儀が悪いですよ」
「ぁあ、ごめん」
「全く、このままでは明日のデートも心配ですね」
「でー、と……デート!? 」
驚きと共に机に膝を強打する
揺れる机の上のお皿を器用に空中で回収するイグニカ
僕は膝を抑えながら呻き暴れる。
「大丈夫ですか?潮」
お皿を置き呆れ顔で僕の心配をするイグニカ
「ゔん、大丈夫」
僕は震えた声で痛みに耐えながら返事をする
「これでは食事もままなりませんね」
そう言いながらイグニカはお皿の料理にラップをし汁物はタッパーに入れ冷蔵庫へしまう。
「さて、では潮」
机の上をキレイに片付けたイグニカがベッドの方へ行き僕を手招きする
それに従い僕もベッドへ向かう
すると
「とりゃ!! 」
「へっ!? 」
イグニカが突然僕を布団でぐるぐるの簀巻きにしだした。
「え?え?え?イグニカァ!?これは一体何」
「潮には明日の絵茉さんとのデートの為の勉強をしてもらいます」
「いやこの状況でどうしろと!? 」
「安心してください」
バッ!!
「テテテテッテテー、デート睡眠学習装置〜」
「……」
〈何かいけない気がする紹介の仕方だぁあ!! 〉
「これを付けて寝ればあ〜ら不思議朝には貴方もデートマスターに大変身」
「いや!?何かヤバイよバチバチいってるもん
やめてー!?イグニカ、マスターの危機ですよぉ!?」
「私はこれから明日のデート用の衣服とデートプラン作成の為忙しいので、これしか方法がないんです我慢してください」
「嫌だー!!助けてー!!ママぁー!! 」
「それでは潮、良い夢を」
「あ」
バチンッ
8時間後……
強制的な睡眠学習の成果とイグニカの完璧なデートプランを引っさげた僕は
イグニカお手製の初デート用の服を身に纏う
普段なら絶対に着ない様な白の無地にジャケット
過度な意匠のないその姿は面白みはないが清潔感とナチュラルなカッコ良さを演出している、らしい。
ピンポーン
玄関からチャイムの音が聴こえる
絵茉さんが来たようだ、時間通りである。
「ふぅ」
僕は呼吸を整え、髪を上げ彼女を出迎えた
「やぁ絵茉さん、じゃあ行こうか」
そう言い僕は手を差し出した
その手を絵茉さんは
「きめぇ、顔洗って出直して来い」
物凄く鬱陶しそうな顔で払いながら突き離した。
バタンッ
「……」
「……」
「イグニカ……」
「……何がいけなかったのか」
僕は半分涙目になりながらイグニカに助けを求め
そのイグニカは完璧と思っていた自分の計画がにべもなくあしらわれた事に驚愕していた。
ガチャッ
放心状態の僕等の前で扉がひとりでに開く
「……」
開けたのは絵茉さんだった。
「悪かった……ただそんなに緊張するなよ、いつも通りのお前で良い」
「わかッ……うん」
「よし、行くぞ」
そう言って出してきた絵茉さんの手を握る
引かれながら扉を出て、僕等は歩き出した。
本編の更新ではなくて誠に申し訳ありません
本編更新を待っていらっしゃる読者の方には大変申し訳ありませんが
こちらの話は前から一度書いてみたかったのと
今回本編で潮が気を失った所だったのでチャンスと思って書かせて頂きました
次回更新はデートの後編となります
それが終わりましたら本編の方を再開いたします
作者の都合で申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。
もし逆にこいつの番外編が見たい等のご意見があったら
Twitterなどで言っていただけたら大変嬉しいです。




