奇怪と僕
音が聞こえる
金属を打つような
若しくは擦るような音
段々と大きくなる音
その音は前から聞こえる
[…ッ…ァ…ッ…]
声がする
それも前からだ
少しすると目の前に音の主の背中が見えた
ガッシリとした背中、恐らく男性だろう。
すると男性がこちらを振り向いた、気がした
[ハ…ァ…ッ!?]
驚いた様な声と共に男性の気配が離れていく
そして先程と同じ音がけたたましく鳴り響く
音の正体は足音だった様だ。
その背を眺めつつ視界を周りにやる
ここは何処だ?
周囲は暗い、夜なのだろうか
それにしても暗い、何も見えない
そんな中どんどんと離れていく背中
悩んでいても仕方がない
その背中を追いかけようと足に力を込め走り出す
すると結構離れていた筈なのに
ものの数秒で追い付いた。
そして背中の主の肩を叩く
主は肩を震わせながらこちらにゆっくりと振り向く
[ッァ…ッツ…カ…]
振り向きながら何かを喋っている
しかし声が小さくて聞き取りづらい
気になって主の肩を掴み振り向かせる
そして、顔が見え…
〈し…う…お…〉
[ん…]
誰?声が
〈潮、潮起きて、潮〉
[イグ、ニカ…]
これは、イグニカの声だ
でも、何で?
[おい、起きる]
[…ぇ]
[寝ぼけるな]
別の声が聞こえる、左からだ
顔を上げ声の発信源へ向く
そこには不機嫌そうな顔の絵茉さんが居た
[私に起こされて、どうする]
[絵茉さん、]
[起きたか?]
[…うん]
[全く]
そう言うと絵茉さんは机に伏せた
恐らく眠るのだろう
人を起こしておいて自分は寝るとはひどい人だ…。
〈潮、大丈夫ですか?〉
〈ん、まだちょっとぼーっとしてるけど〉
イグニカの言葉に未だ呆けたままの頭で相槌を返す。
のそっと身体を起こし目の前に視線を向ける
柴先生がテキストを読みながら黒板に板書をしている
まだ国語の授業中だ
恐らく柴先生に怒られたばかりの僕が居眠りをしていたので
心配…?して起こしてくれたんだろう…多分
〈睡魔に負けちゃったのか〉
〈その様ですね〉
ご飯の後だったし、今日は良い陽気だ
睡魔に取り憑かれるのも仕方ない
〈じゃあ、さっきのは夢か…〉
〈どんな夢を見たんです?〉
〈えっと…〉
思い出そうと頭を捻る
しかし…思い出せない
試み続けるも、結果は同じ
〈ごめん、思い出せないや〉
〈…さっきの女の夢、って事はないです?〉
何か嫉妬に似た空気を醸し出しながら
質問…尋問をしてくる。
〈ないよ、ないない〉
〈ほんとですね〉
〈誓って〉
〈…なら良いです〉
僕の返答に不満気な声で答えるイグニカ
その後授業が終わるまで自分の胸を持ち上げながら
[もう少し…開いて…]etc
と何か不穏な事を呟いていた。




