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貴方の側に置いてください  作者: 茶納福
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質問と僕


〈警察? 警察が何で僕に? 何かした? そんな筈は?〉


疑問符が頭の上を飛び回ると同時に冷や汗が垂れる

記憶は有りもしない筈の罪を探し始めて奔走する。


そんな僕の困惑を見抜いたように彼女、杷柴さんは優しく話し始める。


「大丈夫ですよ取って食おうとか逮捕とかしに来たわけではないんです

先程も言った通り聞きたいことがあるだけなんですよ」

「……ッはい」


彼女の言葉を咀嚼するように聴きながら冷静さを取り戻すよう努める


〈でも、何で警察が僕に?〉


僕が落ち着きを取り戻したと見たのか把柴さんはニコッと笑い口を開いた。


「話を続けても構いませんか?」

「……大丈夫です」

「ではまず、金森さん貴方は夜代高校に通っていますね?」

「はい」

「でしたら、学校の女性徒が1人行方不明な事は知ってますね?」

「はい、聞きました」

「では続いて、貴方は3日前の午後5時過ぎに頭山に行っていますね?」

「……」


〈なぜその事を? いやそれ以前に何故その事を今聞く必要が?〉


「どうですか?」

「……はい、行ってます」

「そこで何を?」

「……いじめです、不良に絡まれて頭山に肝試しに行けって感じで」

「……失礼しました、言いにくい所を話してくれてありがとうございます」

「……いえ」


頭を下げてくる杷柴さん、その態度は実に真摯だ


しかし

今の所この人の目的が分からない


〈事件の捜査……なのだろうけど、なら何でわざわざ僕に? それとも学校関係者全員に聞いているのか?〉


考えながら杷柴さんを見る

彼女は頭を下げた姿勢から顔を上げた所だ

すると右手を前に出し手首を見た

右手首には腕時計がしてあり時間を確認したのだ。


「あぁすみません、時間を取らせないと言ったのに3分も経ってしまいましたね

申し訳ないのですけれども、もう少しだけお時間を頂けますか?」

「あ、はい大丈夫です」

「ありがとうございます」


〈時間の事を気にしていたのか、律儀な人だな〉


しかし、その律儀さと丁寧さが逆に不安感を助長した


「これ以上時間を取らせても申し訳ないので出来るだけ簡潔に伺いますね」

「はい」

「……実は今回起きてる事件の被害者の何名かが失踪前に頭山に行っている事が分かっています」

「……」

「そしてその数日後、その方達は何かしら精神に変調を来たし皆一様に傷害事件を起こしています」

「!?」

「その後その人達は再び頭山へ向かい後の消息は分からずじまい」

「……」

「私はその事を独自に捜査し、頭山の登山道や人が登頂可能な入り口に監視カメラを仕掛けました」

「……」

「そしてその内のカメラの1つの映像で貴方を見たんです」

「ッ」


杷柴さんの目付きが鋭くなる

こちらの心を射抜く様な眼光だ


「金森さん、貴方が登山道の入り口から山に入るのは映像に残っていましたから確認しています、しかしその後降りた映像は確認できなかった」

「……ッ」



原因はわかっている

イグニカが僕を運ぶ際に何かしらの力を使っていたからだろう

しかしそれをこの人に説明しても理解を得られる筈もない


「はッ……」


無意識に呼吸が浅くなっていく

僕を見る視線の圧力が強くなった


「どうやって降りたのか、若しくは……何があったのか

それを教えてください」

「……」

「金森さん、どうですか?」


じっと僕の顔をいや、表情に眼の動きすら逃さず見つめている

僕の挙動を見落とさないようにしている、まるで獲物を見る猛禽類の様だ。


口調は優しくとも彼女は明らかに僕を怪しんでいる


「ッ」


突然肩に凄まじい衝撃が走った


「!?」

「金森、店長が呼んでるぜ」


……いや違った、単純に僕が緊張で無防備になっていただけだ


後ろを向くと龍さんが右手をひらひらしながら

ニカッと歯を見せて笑っていた。


「あ、はい」

「……これは失礼、結局時間を取らせてしまいましたね すみませんでした金森さん」

「いえ……こちらこそ」

「あんたが金森のお客さんか、すまねぇな話を切っちまったか?」

「いえいえ、大丈夫ですよお話は丁度終わりましたので

では金森さんお時間を取らせまして失礼しました」

「はい……」


杷柴さんは軽く会釈をし僕も会釈を返した

それを見てニコッと笑い彼女は帰っていった

僕は彼女が店を出るまで見送った。


目を離したら後ろにでも立っていそうな感じがしたからだ。


「龍さん、店長は?」

「嘘だよ」

「え?」


その言葉を聞き龍さんの方を向く

龍さんの顔は強張っていた


「何となくお前が困ってるみたいだったからな

2人で妙な空気感醸してて、無論勘違いかもしれんが

お前の顔から見て当たってたみたいだな」

「……」


そんな風に見えていたのか

まぁ確かに、杷柴さんとの会話は少し心にきた。


「まぁ今日は新入りの教育も重なってるからな、あんまり無茶するなよ?

また帰りに差し入れしてやるからそれまで頑張れ」

「はい!」

「よし!」


龍さんが僕の背を叩く

刺激が身体を巡り滞っていたやる気にスイッチが入る

その顔を見て龍さんはニヤッと笑い僕らは仕事に戻った。


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