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貴方の側に置いてください  作者: 茶納福
13/44

朝食と僕

中々続けて投稿出来なくて申し訳ないです


「潮、朝御飯は何が食べたいですか?」

「そうだな、今までまともに食べたことないからな」

「なら、私の考えた完璧な献立で良いですね」

「うん、お願い」


洗面所で寝癖を直しながらイグニカと朝食の話をする

しっかりと目覚めたからかイグニカはいつもの調子を取り戻し

僕もスケベな思考から登校モード思考をへ移行していた。


「……よし」


寝癖が直り綺麗な黒髪は形も美しく決まっている

イグニカも満足そうな表情だ。


「では準備しますので待っててください」

「うん」


そう言いイグニカはキッチンへ

僕は部屋へ戻り学校の支度を始める。



「はァ……」


壁にかけてあるリュックを取り

今日のカリキュラムで使う教科書を詰めながらため息を吐く


今日は木曜日

週の中で少しやる気が無くなり中弛みをしてしまう曜日

元々あまり勤勉ではない僕にとって

週6日間を学業に費やさなければならない事がそもそも辛く

更に木曜日には必ず体育があることがやる気を減退させるのに拍車をかける

毎日バイトをしている僕にとって体力消費が免れない体育は拷問でしかない。


「……」


それにまたあいつ等に会うと考えると憂鬱になると言うものだ

昨日学校をずる休みしたのも何となく行きづらく

行きたくない理由を上げればキリがない

そう思いつつクローゼットから体操着を取り出す。


「あ」


そう言えばと思い出す

イグニカも服を買ったのだからこれからは洗濯物を洗う日が前より増える事になる。


女性物なのだからネットや洗い分けもしなければならなかった様な思い出がある

それ用の道具やハンガーと物干しも増やさなければならない


〈また買い物に行かないとな〉


こう考えてみるとまだまだ必要なものは多い

2人での生活しかも男女となれば

僕も少しは勉強しなければイグニカの負担を増やしてしまう。


そう考えながら支度を終え

クローゼットを開き学生服に手を掛ける


「ん?」


かけてある学生服の中に

一式だけ少しよれている上に所々破けている物があった。


これは昨日着ていたものだ

イグニカが治療の為に着替えさせてくれた時に

そのまま仕舞っておいてくれたのだろう。


「……」


昨日の事を思い出すがすぐに頭を軽く振る

あいつ等は昨日僕に会ったことを覚えていない

あいつ等が知らない事を僕だけが気にしても何も変わらない

ならば僕だけが気にしていてもただ気持ちが落ち込むだけではないか。


ボロボロの制服から視線を切り替え

別の制服を取りだしクローゼットを閉める


「……?」


すると

何とも食欲をそそる香りが鼻をくすぐった

香りに釣られ視線を動かすと発信源はキッチンだ

ぐゥッとお腹の虫が食欲を訴える。


そして


「お待たせしました」


イグニカが皿に盛られた二人分のハムエッグと

こんがり焼けたサンドイッチを持って現れた

その光景にまたお腹の虫が催促してきた。


「……少しお待たせし過ぎてしまいましたね」


くすりと笑い笑顔で準備を続けるイグニカに

お腹の音を聴かれたのが途轍もなく恥ずかしくて

気を紛らわす為に手伝おうと動くものの


気付いたときには机にメインのお皿と

両手が塞がっていたはずなのに

何処からか取り出したホットミルクが入ったコップを置いて朝の食卓は完成していた。


「ふォお」


思わず口から漏れた感嘆の声

恥ずかしい気持ちは消え去り眼前の光景に眼を奪われる。


近くで嗅ぐ香りはまた格別で嗅覚と視覚から美味しさが伝わってくる。


「本日のメニューは日替わりイグニカ朝ごはんです」

「ありがとうイグニカ!! すごく美味しそう」

「えぇ、絶対に美味しいです」


少し語呂が悪く感じる名前だが

ふんすと胸を張って良いほどのポテンシャルを感じる朝食だ。


「それじゃあ、いただきます!」

「どうぞ、お召し上がりください」


作ってくれたイグニカに感謝しながら手を合わせ

いただきますの挨拶をする

それに合わせてどうぞと笑顔で応えてくれるイグニカに僕も笑顔で返す。


まずはサンドイッチを手に取る

サクりとこんがりと焼けた表面が音を立てて僕の指を迎える

ほんの少し熱く感じるがそれが心地好い


そして温かさと触感が次の行程へ僕を誘う。


僕の手より少し大きいサンドイッチに合うように口を大きく開き

端の方から入れていき丁度良い所で止め

口を閉じていき温かい表面に歯を立てる。


最初に歯の侵入に一瞬の抵抗を見せるもそのまま中に誘ってくれる

弾むような食間が歯茎に伝わり気持ちいい


続いて噛みごたえのある内面の層へ歯が入っていく

そこを優しく通してくれそのまま中の具材にたどり着く。


入っていた具はレタス、トマトにカリッと焼かれたベーコン

レタスとトマトの瑞々しさと優しい酸味

そしてベーコンの油の旨味が口一杯に続いて鼻と喉にも抜けていく。


ようやく完全に口を閉じ咀嚼をし始める


すると口の中で更に混じり合った食感と旨味が歯と舌に伝わり

脳へ快楽刺激の様な多幸感と共に

僕にある言葉を言わせようと信号を送り続ける。


「ッッぉおぃいしぃ~い!!」


顔が緩み笑顔へ眉と頬から力みが失せて

表情きんが笑顔になる動きを止められない

幸せな気持ちのまま更に続きを噛みながら

凄い早さでサンドイッチを1枚パクりッと完食してしまった。


食事でこんなに幸せな気持ちになったのは一体いつぶりの事だろうか

いや、今まであったのだろうか


驚きと多幸感を身体中で感じながら

その幸せを作ってくれたイグニカの方を見る。


とても嬉しそうにニコッと笑っているが何故か少しぎこちない

よく見ると必死にピクッピクッと動く口元を抑えていた。


しかし僕にはその理由が聞こえていた


〈ッッッツツツおォッツしゃあああアッ!!!!!!!〉


感動のし過ぎで試合に勝ったアスリートみたいなキャラになっていた

キャラ崩壊を僕の前でするのが恥ずかしいのだろう。



イグニカの反応を堪能した後

次は箸を手に取りお皿に乗ったハムエッグにターゲットを切り替える。


箸で黄身に触れるとぷるりと動く

伝わってくる振動すら美味しそうに感じる半熟だ。


箸を動かし黄身を縦に割る

すると、とろりと中身が出てくる

出てきた黄身と白身を合わせる

続いて自分もいるよと主張してくるハムを箸で切り分け

黄身と白身と仲良く一緒に口へ運ぶ。


箸から伝わる柔らかさをそのままに

口の中で卵の甘味とハムの旨味が官能的に心を満たす

そこにもう一枚のサンドイッチを手に取り口へ運ぶ。


その瞬間口の中で

まるで1+1は3になるのだと言わんばかりに

口中の旨味達が数学の摂理を超越した新たな公式でスパークした。


とろとろとサクサクが

最高の相棒を得たとばかりに躍りだし

舌と歯から伝わる刺激は僕の意識を更なる旨味の地平へ送り出していった。



「はふゥ……」


この数分の間に僕は何度感動しただろうか

たかが食事と思っていた僕の思考は遥か過去

僕は今食の桃源郷から帰還し

正しくほっとミルクを飲んで心と腹を満たす満足感に浸っていた。


徐々に落ち着いてきた僕が視線を前に向けると

イグニカも丁度食事を終えていた


いたのだが

さっき見た時とは違い手をガッと握りガッツポーズを決め

戦い抜いた戦士の様な顔で感動を味わっていた。


暫くして僕の視線に気付いたのか

焦りはしたものの

嬉しい半分恥ずかしい半分のにやけた顔を向けてきた

僕もそれに釣られて顔がにやける。


これから毎日こんな幸せが続くのかと思うと幸せの多量摂取で肥えるのではと心配になる。


〈無論バッチ来いだ!!〉



ミルクを飲み終えコップを置き空になったお皿達を見て


「ごちそうさまでした!!」

「お粗末様でした!!」


幸せな朝食が終了した。



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