2局 残念、死にました
「おい起きろ」
「は?!」
男は何事かと目覚める。
見覚えのない景色に辺りを見回した。
「誰だお前は?」
その場には男しかいない。
真っ白な世界に何も見えない地平線。
ただ異様と形容すべきその光景に、男は動揺を隠せない。
「お前は死んだのだ」
何処から聞こえているのか声の出所は掴めない。
「死んだってなんだよ?」
男は大声で叫ぶ。
「物分かりの悪いやつだな」
男はその言葉に怒鳴って返す。
「意味がわからねえんだけど!」
すると、一人の老人が現れた。
白髪に白髭、正に仙人といった風体だ。
「間違えて殺してしまったんだ。すまなかったな」
「すまねえじゃねえよ! 俺はどうなんの?」
「いやはや、神でも間違いはあるもの。お詫びをしたい」
神と名乗る老人は男を宥めた。
男は間違いで殺されては敵わないと感じ、神を糾弾する。
「じゃあ生き返らせろよ」
(なんで俺が死ななきゃならないんだ。冗談ではない)
神は申し訳無さそうな顔で応じる。
「それが同じ世界に生き返ることは、いくら神でもできんのじゃ。別世界で転生してみる気はないかの?」
(――別世界? さしずめファンタジーの世界といったところか)
「で、どんな世界なんだ?」
神は首を捻る。
「お主には三つの世界から選ばせてやろう」
神が提示した世界は三つ。
一つ、魔王が支配する世界に転生する。
二つ、群雄割拠の乱世に転生する。
三つ、未だに中世レベルの文明世界に転生する。
「一番と二番なんか死ぬ未来しか見えないんですけど!?」
男は至極まともな発言をした。
「そうじゃのう。だが、転生枠はこの三つしかないのじゃ」
無茶苦茶な提案に男は、再び怒りを露にする。
そして、神に対し暴言を吐こうと思った瞬間、神が口を挟んだ。
「じゃが特典をつけよう。肉体強化、運気上昇。どちらか選ぶがいい」
もったいつけるのも程々にして欲しいというもの。
詫びとして、チート能力でもいただけるのだろう。
そう考え、男は神に尋ねる。
「で、どれくらい強くなんの?」
神はすぐさま答える。
「そうじゃのう。肉体強化は筋力が少し増す程度。120km投げる投手が140km投げられる程度といったところかのう」
――微妙すぎるだろう……
そんな力では、到底生き残れない。
男は呆れながらも『運気上昇』について尋ねる。
「運気上昇は多少運が上がる程度じゃ」
「多少!? 多少じゃ困るんですけども!」
間違えて殺された挙げ句に、予想外の微妙な特典に男は激昂した。
「と、言われてものう。とにかく転生先と特典をどちらか選ぶのじゃ」
神は面倒になったのか、投げ槍な口調になる。
一番と二番目の選択肢は死ぬ未来しか見えない。なら肉体強化特典を貰って三番が安牌だろうか……
男は自分の得意なことを思い出す。
生前は麻雀のプロ。天才的若手の異名で、二十歳にして名人位を保持していた。だが、異世界に麻雀なんて有るわけがない。
男はそう考え、肉体強化を選ぼうとする。
その刹那。男に電流が走る。
(麻雀が無いのなら、その世界に麻雀を広めてしまえばいいじゃないか。運気上昇を選んで、ステマに次ぐステマで麻雀をメジャーにしてしまおう。それなら無敵だ!)
「浅はかなり」
神は首を横に振った。
「思考を読むなクソジジイ。ぶん殴るぞ」
神は可哀想な物を見るような目で男を眺める。
「じゃあ三番の世界で運気上昇じゃな? 早速転生させるからのう」
この神は、もはや面倒臭そうな表情を隠さなくなってきた。
「あ、あとサービスに言語の概念は日本語にしといてやるわい」
「てめえ見てろよ」
「ハイハイわかったからさっさと行け」
神はそう言うと、指を鳴らした。すると、純白の世界が崩れていく。
「せいぜい頑張ることじゃな」
男はここで意識を失った……




