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2局 謎の女はストーカー?

一章の前書きで一度書きましたが、再掲載。麻雀表現は下記通り。


m=マンズ

p=ピンズ

s=ソウズ

字牌はそのままです。


例:打s1

意味:イーソーを切る


例:ツモ西

意味:西もツモした

 

(何故、俺の正体を知っている……)


 女は利一からひとまずは距離をおいたが、相変わらずニヤニヤしながら目線を外さず、囁くように話し始める。


「誕生日は7月14日、血液型はAB型、雀荘みどりでご両親の寵愛を受けすくすくと成長。プロ資格を取り、至上最年少で名人位を載冠する。またネット麻雀では10段位と最高レートを保持する天才……」


 利一は唾をゴクリと飲み込み、少し間をおいた後、言葉を捻り出す。


「だいたい読めたぜ。お前日本人…… だよな?」


 女は相変わらず目線を切らず、口角を更に上げて微笑む。実に不気味というか、心情が読めない表情をするものだ。


 普段の利一ならブチ切れている頃だろう。だが、この女の独特な雰囲気には、利一も攻めあぐねているといった印象を受ける。


 だが女は利一の虚をつくように、唐突に話し出す。


「そうね、麻雀プロならプロらしく、私に勝って全て聞き出したらどうかしら?」


「本当だな? 着いてこい」


 利一は最寄りの雀荘へ向かおうとするが、雑貨屋にフィーリアを置いたままではないか。


 しかし、利一は冷静であるようで、先に雑貨屋へ向かう。


「待たせたなフィーリア。お兄ちゃんちょっとこの女の人と麻雀するから一緒に着いてきてくれ」


 フィーリアは頷いたあと、女をじっと見つめ、利一の腰をツンと小突いた。


「お兄ちゃん、この人カノジョ?」


 利一が首を横に振った瞬間と、ほぼ同時に女がフィーリアへ話しかける。


「そうよ♪」



 プフッ!

 利一はまるでギャグマンガのように吹き出した。


「違うから! 断じて。ま、ま、ま、麻雀友達だよ。雀トモってやつさ」


「じゃんとも?」


 フィーリアは小首を傾げる。


 そうこうしてる内に、最寄りの雀荘に到着した。


 さすが大都市であり、雀荘を探すにも一切の苦労はない。


「らっしゃい!」


 ざっくばらんな挨拶で出迎えられる利一達一行。


「セット一卓、あと、一人店員で空いているヤツはいねえか?」


 利一の言葉にいかにもな中年オヤジが現れ、手早く面子を調達が完了する。早速ではあるが場決めの上、卓に座る。


 基本ルールは東南アリアリ。25000点の30000点返し、赤1-2-1、トビ有のルールで一回勝負となった。


 東家 フィーリア

 南家 謎の女

 西家 雀荘店員

 北家 利一


 フィーリアはご機嫌そうで、鼻歌交じりでサイコロを振る。


 東1局 利一の配牌

 m4468 p3699 s8 西北發發


 役牌はあるものの、少し物足りないか……

 ただし、上家が雀荘店員であることから、副露期待度は非常に高いと言えるだろう。


 利一初巡目、


 m4468 p3699 s8 西北發發 ツモp1


 打西。


 その瞬間である。


 謎の女の透き通るような、だがしかし力強い発声が響く。


「ポン」


 女は利一が切ったオタ風の西を取り、牌を曝した。


 そして、打 s1


 タンッ!


 牌が小気味良い音をたてるが、利一の様な不快な強打でもなく、絶妙な力加減である。


(――コイツ、打ち方がやけに様になってやがる。ナニモンだぁ……)


 そのタイミングで心を読んだかのように、利一に向けて「フッ」っと笑った。


 7巡目、女は更にフィーリアからのs6をチー。二鳴き目が入る。


(――役牌バックか、南はカラ。なんにせよ掴んだ白や發中あたりは切れんな)


 m4468 p123699 發發 ツモ白


 利一は現物のm6切りを選択。これはオリざるを得ないだろう。


 そして二巡後。


「ロン。中ドラ1 2000」


 女は雀荘店員が無造作に切り飛ばした、中を討ち取り、片和了。


 雀荘店員は途端に不機嫌になる。


「カァー! これだから女はやなんだよなぁ! セコい打ち方しやがって」


(やはりこの世界の主流な打ち筋ではないな……)


 利一は不信感を強めながらも、油断せぬよう気を引き締めた。



 東2局


 利一の配牌は愚形5シャンテン。孤立役牌もなく、よほどでないと和了れないだろう……


 だが、この局はフィーリアが好調そうだ。

 序盤から中張牌が溢れ、手も早そうなことから、撤退。利一は早々にオリを決断する。


 次巡にはフィーリアからリーチが入る。


 謎の女もリーチを受けて、オリ気配である。


 攻めない、ベタオリである。

 この場は天才フィーリアの独壇場。フィーリアがツモるか、全ツッパ全自動振り込みマシーンの雀荘店員が放銃するか……


「ツモ! です。リーチ、ツモ、ピンフ…… ふにゅっ!」


 フィーリアが裏ドラを捲るため、可愛いらしく精一杯手を伸ばす。


「えーっと、裏が一個でいちさんにーろく、です!」


 皆がそれを見て癒されている。この場限りは全員が和解…… いや、この『萌え』といった感覚を刺激されていた。



 そして、その圧倒的『萌え』が和らぎ、再び引き締まったこの空間で、東3局が始まろうとしていた……




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