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14局 帰還、そして

 

 利一達は領主パラとの対局を終え、今後の行き先を考えていた。王国は広くまだ旅は始まったばかりではあるが……


「かーえーりーたーい!」


 セシルの絶叫に利一は耳が痛そうである。


 なんとこの女、利一に隠れ装飾品を買い漁り、手持ちの金を使いきったのである。


 一国の姫ながら、身分不詳の男と麻雀を極めし旅に出る覚悟。利一も認めるモノではあったのだが……


 如何せんこの金銭感覚の無さたるや。


「てめえ馬鹿なの!? 死ぬの? どうやって移動するんだ?

 ああ?」


 頭を抱える利一の傍ら、いつもニコニコフィーリア。その横にはリーゼが私は知らぬ存ぜぬといった具合に座り込んでいる。


 そう、リーゼも旅の仲間となったのである。ほぼ無一文が二人から三人に増え、被扶養者の子どもが一人。


 宿代などはセシルのお金に依存する部分も多く、到底旅を継続できない状況となっていた。


「利一さん。こんなチラシ入ってましたけど」


(はじめてのアコミス。無職でも借りれるよん♪)


 (それだけはアカン)


 利一はそのチラシをビリビリに破り捨てた。


「あのお、言い辛いのですが、利一さん昨日酔っぱらってた時に雀荘行くって言ってま……」


 利一がリーゼの口を手で塞いだ。


「リーゼ君。その話はナシだ。分かるね?」


 リーゼは頷いた。

 そう、利一は昨晩酔っぱらった挙げ句に高レート雀荘へ行き、ほぼ全額を失っていたのである。


 自分を棚に上げながら悪びれもせずセシルを罵倒するこの胆力。圧倒的な才気を感じさせるものである。フィーリアの情操教育上においても、この上なくよろしくない。


「四の五の言ってられん。取り敢えずアストラルに帰る方法を考えよう」


 ―三時間後―


「フォルストさん、いえフォルスト様。どうかお金を貸していただけませんか」


 利一はそれはもう見事な土下座を敢行した。


「フィーリアもやるです。 貸してください」


 フィーリアまでも土下座をする。可愛いという以外に形容できないだろう。


 続いてセシルとリーゼも土下座をした。




 ―30分前―


「リーゼの親に借りよう。引率者の俺が土下座すればなんとかなるだろ」


 利一の提案にリーゼが答える。


「うちの親は貸し借りが大嫌いなのでダメかもしれませんよ?」


 (チッ。ならば……)


「フィーリアもDOGEZAしようぜ。おれの故郷では子どもも土下座するの、流行ってたんだぜ」


「そうなの? 利一にいちゃんとなら、してもいいよ?」


 フィーリアは何の抵抗もない。だがセシルは異議を唱えた。


「ちょ、ちょっとアンタ正気なの?」


「う、うるせー! 金がねえんだよ。おめえも土下座だ。DO☆GE☆ZA!」


 そして今に至る……



「アストラル様に土下座させるなど恐れ多いです。仕方ありません。馬車代くらいならなんとか」


 セシルは立ち上がり、再度頭を下げ一言。


「城に戻り次第利息分を合わせて使いの者に持ってこさせます」



 なんやかんやで前途多難ではあるが、アストラルへの馬車を確保した利一達は安堵したものの、借りたのは馬車代のみで食費がないことは誰も気付いていないのであった……


「そういや、フィーリアはアストラル初めてだな」


「はい! セシルお姉ちゃんのお城楽しみなのです」


 馬車内ではいつも通り、利一がフィーリアを愛でている間、セシルが麻雀の勉強をしている。そこにリーゼも加わり些か賑やかなパーティーになったものである。



 ―数日後―

 アストラルにて。


「ホンット信じらんない! 姫である私がセミや雑草を食べるなんて思わなかったわよ!」


「はいそーですか悪かったですねそれは。無事着いたからいいじゃん」


 利一は言葉と態度が一致していない。

 険悪な雰囲気だが、フィーリアが場を和ませる。正にバランサーの役割を果たしている。


「わー! おっきいお城です!」


 リーゼも圧倒された様子である。普段の振る舞いが姫のイメージと乖離しているために、その驚きはひとしおであった。


 城門をくぐり抜け、城の中に入っていく。


 城の中は相変わらずで、セシル以外には馴染みのない光景であるが、利一は態度が大きく、場内をポケットに手を入れて闊歩している。


 闘牌場の前を通り抜け、大広間へと歩みを進めるが、闘牌場からは麻雀牌の打牌音や発声。さらには利一の残した参考書による授業が行われていた。


「ポン!」

「ツモ2000オール!」

「先行嵌チャン即リーを打つべし!」


 賑やかなものである。こうしてアストラルの麻雀の力は底上げされていくのだろう。


 一行が大広間に到着すると領主や臣下が待っていた。


「リーチ殿、先日の対局見事であった。また次の旅に備え城内でゆっくりするとよい」


 リーゼにつられて利一はお辞儀をする。一応の礼儀は心得ている様子だ。


「して、セシルはどこじゃ?」


 領主の問いに臣下の一人が答える。


「は、そこの利一なる者に道中汚されたため、お風呂に入ると言って出ていかれましたが」


 (ファー)


「利一殿? その話、徹夜麻雀をしながらじっくり聞かせてもらえんかのう?」


 領主は相も変わらず、至上の微笑みを利一に向けた。

 そして、領主に連れられ闘牌場へ……


 このあとメチャクチャ麻雀した。


1章は次で終わりの予定です。

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