2:心機一転、新学年の始まり
さて、僕が…いや私も通っている清明高校の校門にたどり着けば、何やら白いクラウンが止まり…ん?なにか見覚えがある。
「そのような気遣いは無用ですよ…おはようございます、一希…いや、和希?」
声のした方向を向けば…そこには高貴な雰囲気を纏った、私と同じ制服を着たモデルがいる。そんな雰囲気とか出で立ちからしてどこぞのお嬢様かと思うけど…私と僕の名前を知っているのはともかく、なんで私にそんなに親しげなのだろう?
「あの…どちらさまで?」
「大丈夫ですか…?わたしは福山 光ですけど。」
ひかり…?そこからさほど時間はかからず、僕の親友の「光」(ひかる)を連想した。
「って、ええええ!?」
「あら、なぜ驚いていらして?」
そこで私は、今朝からのことの次第を光に話した。
「つまり、貴女には女性としての記憶をお持ちではありませんのね…」
「え、ってことは…光は持ってるわけ?」
「はい、ただ貴女からなかったとはいえ、莉緒や灯、麻琴や陽菜からメッセージが私の元に来ましたね…皆が女性としての記憶もお持ちになられていることも拝見致しました。」
補足だが、光が挙げた面々は私たち去年のクラスメイトである。それより…頭をよぎった不安が、そのまま言葉に表れる。
「まさか、記憶ないのは私だけ…?」
「今知りえる段階では…すみません、このような場所で立ち話は滅入ります。」
「そう…なら教室行こ。」
「はい、お持ちでない方が見つかるとよろしいですね…」
やがて私たちが教室へと着けば、そこには既に多数の生徒が…これからクラスメイトとして付き合うことになるのだろう。小中、そして高1のときも見慣れた光景でこそあるのだけれども…みんな、再開を楽しんでいるように見える。すると、去年からの知り合いの一人…坂本 亜希が私たちに声をかけてくる。まあ、僕の時の世界では誰だったかはわかるが…こちらでの名前がわからない。
「あ、小倉ちゃんに福山さん。おはよ?」
「おはよう…して私のこと、ファーストネームで呼んだっていいじゃん?」
「ええ坂本さん、ご機嫌うるわしゅう。」
友達の前なのに…光はフォーマルに、腰を軽く落としてスカートの両端を軽くつまんでの一礼をするんだよね…
「ごめん…一希?慣れないの、他人行儀ってのはわかるんだけど…でも福山さんはもう少し…一希を見習ったほうがね?私、そういうの苦手。ねえねえ、それより2人とも、見た?七里のサイト。」
「ううん、家まだPCないし…私の携帯だとサイズ足りないし。」
「なーんだ残念…携帯版あればいいのにね?」
補足ばかりでしつこいのだが七里とは快活なキャラが得意な、天然なことで知られている亜希が大好きな男性の声優さんのことだ。
「ほんとだよね…仕方ないから私は立ち読み。」
「まあ広く浅くならそれでいいけど、深くは入れないんだよね。」
「七里さんならわたしも好きです、あの方は一希並に天然で面白くて。」
なぜか光はしばし間隔を置いてから話に交じり、それにすぐに切り返す亜希。
「あ、さすが福山さん、いいこと言う!」
「ふふ、ドジでは一希に勝てませんけど。」
「もう、なんで笑うの〜!!」
さすがに声が大きすぎたのか、教室にいるみんなが一斉に私を見る…
「一希…耳が、痛いです…」
「わ、私も…」
当然近くにいた2人は耳をふさぎ、そのなかでみんなにすまなそうに謝り…すると後から教室のドアが開く。振り返れば、今年度1年間担任してもらう、背の高い白髪混じりの先生がいた。
「小倉、もう少し静かに言ってくれ…」
「すみません、神城先生。1年間、よろしくお願いします…」
「うむ、それより諸君…講堂に向かうように。」
その指示に時間が早く流れたことを痛感しながら、私たちは始業式へと向かう…
さて、だいぶ時間はかかりましたが第2話です。時間の流れをうまく表現できてない気がしますが、密度は前回よりあると思います。
それでは、今回登場する中で主要な2人を紹介します。
福山 光
16歳、清明高校2年A組。
一希の親友で某鉄道会社の社長令嬢、外見と中身の両方が大人っぽい。
モデルのような出で立ちをしているがそういう関係にはあまり興味がなく、むしろアニメや声優などの部類が好きだったりする。
その一方口調や行動、容姿のせいなのかどこかお高い印象を受け、時として近寄りがたい雰囲気すら醸し出すこともある。
本人いわく属性はリバならぬNとのことで、一方かなりの苦労人体質。
そして至って考えはNLで、BLGLはナンセンスと考えていることもあってか一希を制御しつつも振り回されている。
世界史がやたら得意で、だいたい学年で一桁にいるほど。
それ以外はバランスがとれていて、あまり苦手な科目こそないがどちらかといえば文系。一人称はわたし。
坂本 亜希
16歳、清明高校2年A組。
一希と光の友達で背は低め、外見中身ともに両性から好かれるタイプ。
黒い髪はそこまで長くはなく肩より少し長めな程度で、見た感じに違わずそこそこしっかりもの。
一希に同じく声優系統に詳しいが、光に同じくNLにしか興味はなく一希の行動には時々困惑している。
一方乙ゲーにはそこそこ詳しく、七里が好きなため彼の出演作品は大体揃えているとのこと。
どんなことにも努力を惜しまないタイプだが、グロに対する耐性が間違った方向に進むこともあり一部からはあまり好かれていない。
根っからの文系で英語と国語はかなり得意で、理系科目が苦手にも関わらず学年ではよく上位に食い込んでいる。
ただ、実技科目は体育を除きすごく苦手だったりもする。一人称は私。