レモンとカボスのコンビが咲かせるおしゃべりの花(寸劇)
レモン「やあ、カボス」
カボス「よう、レモン」
***
野原、晴天。
果樹園を抜けだし、落ちあったレモンとカボス。元気よくキャッチボールを……
……するでもなく、くだらないおしゃべりに花を咲かせている。
レモン「突然だけど、僕が日頃から思ってたことを打ち明けるね」
カボス「突然だな」
レモン「ああ、突然だよ」
カボス「おお、おう……」
レモン「僕はつくづく、いつも野原で待ちあわせて、こうやってとなりに並んでおしゃべりする相手が、カボスのようなきみでよかったなって思うんだ」
カボス「カボスのような、って、俺はカボスなんだが」
レモン「間違えた、『きみのようなカボス』だった」
カボス「間違えるなよ。なんなんだよ、『カボスのようなきみ』って。そこらへんのお兄さんに言ったらぶん殴られるぞ」
レモン「それはエイプリルフールの冗談かい?」
カボス「……」
レモン「なあ、カボス」
カボス「なんだ、レモン」
レモン「嬉しくないのか」
カボス「なにが」
レモン「隣にいるのがきみのようなカボスでよかった、って言ってるんだぞ。しかも本気で」
カボス「それはエイプリルフールの冗談かい?」
レモン「ぶん殴るよ」
カボス「……」
レモン「つまり、僕が言いたいのはね、僕の隣にいるのが、アントシアニンたっぷりのナスビじゃなくてよかった、ってことなんだよ」
カボス「ああ……、え、なんでだ?」
レモン「ほしょくだよ、ほしょく」
カボス「ん、ホショク?」
レモン「僕って黄色だろう、だから、紫が補色にあたるんだよ。補色っていうのは、お互いを引き立てあう色の組み合わせではあるけれど、お互いに引き立てられると強烈で疲れちゃうから、僕はアントシアニンナスビくんとは、できれば隣になりたくないんだ」
カボス「ああ、なるほどな……」
レモン「もちろん、食べるぶんにはナスビくんも好きだけどね」
カボス「食べるんかいっ」
背景に文字「ほしょくしゃレモン」
レモン「がおーう」
カボス「……手の込んだ装置を使いやがって」
レモン「……ほしょくしゃレモンが果樹園をおそう、B級映画ごっこだ、がおーう」
カボス「……」
スピーカーから、ライオンのうなり声。
レモンとカボス、恐怖に青ざめ、口々にわめきながら退場。
レモン「絵郎はさ、何回使いまわしすりゃ気がすむんだろうね」
カボス「なにをだ?」
レモン「僕たちの絵」
カボス「……ああ」