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 自由とは─


 自由とは鎖である。

 常に他者を縛り、時に自分をも縛る鎖。


 僕がまだ中学生だった頃、担任の先生がこんなことを言っていた。

「自由ってのは、たぶんみんなの思っているものとは少し違う、統制やルールがあってこそ成り立つもんだ」

 お前達にはまだ分からないかもしれないな、と。

 僕の通っていた中学校は市内でも指折りのヤンチャ学校で、そんな先生の話も、授業中にも関わらずほとんどの人が聞く耳を持たずに、各々が好きな話題を好きな友達と好き勝手喋っていた。

 当時いじめられていた僕はといえば、その話を真面目に聞き、理解していた数少ない人間の1人だったと思う。

 そしてその話を聞いてから、僕は自分の自由を縛っているのはあいつらの自由だということに気付き、頭の中は毎日ヘイトで満ち溢れるようになる。

 あいつらに自由さえなければ。

 あいつらの自由さえ剥奪できれば。

 自由が欲しいと感じる代わりに、自由を奪いたい思う毎日。

 しかし僕はどうしようもなく弱者で臆病者なので、奪いたい、剥奪したいと思っていてもそれを実行に移すことはできず、ただ耐えるしかできなかった。

 自分の持つ自由が、自分自身を縛ったのだ。


 そんなことを考えていたら、いつの間にか卒業の日がやって来た。

 自由が鎖として作用するのは、特殊な環境下だけのはず。そう考えていたその頃の僕はようやく自由から解放されると思い、大変喜悦していたものだ。

 しかしそうはならなかった。

 この世界にこの身体がある限り僕はそれに縛られ続けるし、僕は誰かを縛り続けるのである。

 関わりを持てば持つほどそれは固くきつく自分を締めあげる。


 そして現在、高校三年生の僕は非常にイライラしながら、八つ当たりをするように家へ自転車を走らせていた。

 イライラの原因は(経緯は割愛するが)あるクラスメイトの長い長い無駄話を聞かされた所にある。

 彼は僕よりテストの点数は何倍もいい、というかこのクラスの誰よりも頭がいい、いいのだが、今日は何故か僕が10分程度で理解した問題を20分も考え込んでいた。

 僕が理解し終わってから彼が理解し終わるまでの10分間、僕は何度も同じ説明を彼に対して説得するように言うのだが、彼は決まって

「いや、違う」

 と一蹴し、挙句の果てに彼は僕が彼のシンキングタイム中に投げかけていた言葉とほぼ同内容の説明を僕に向かって誇らしげに語り始めたのである。

 頭がよくなるとここまで人の話を聞かなくなるのだろうか。あるいは僕のことを相当馬鹿にして見ているのだろうか。どちらにせよいい思いをしないのは揺るぎない事実であった。

 

 そんな僕のストレス解消法といえばゲームと、こういったその日に起こった嫌な出来事を小説として原稿用紙に綴ることであった。

 ここで重要なのは、日記としてではなく小説として綴るという点である。

 いつかネットや出版社に投稿して小説家になることを予定している、からではない。物語をそこに書くことで、そこにもう一つの、自分だけの世界が形成されるような感覚を覚えるのである。

 そしてそこでは、僕の投影たる主人公が、その時自分の鎖に縛られて言えなかった言葉をズバッと言ったり、その時できなかった行動をサクッと行うことで爽快に解決する。

 これが僕が信じる唯一の世界だ。現実ではなくとも、僕のいる世界はここにある。そう考えないとやっていけない弱い人間にいつの間にかなってしまった。あるいは元々僕は弱かったのかもしれない。


 僕はこれをかれこれ5年間も続けている。止めることができず幻覚を見るという点で言えば麻薬と同じかもしれない。

 今日の分を綴り終わり、その原稿用紙を机に付いている鍵付きの引き出しの中に入れて鍵を閉め、その鍵を隠し、スマートフォンのゲームアプリをしばらくプレイしてから布団に入る。

 これが僕の寝る前のルーティーンである。部屋の電気を消し、いよいよ寝る体勢になってから僕はふと思った。

 もう5年も書き続けているのか、あの小説。

 それに書かれている内容はほとんどが僕の人生で起こった嫌なことである。

 僕は少し可笑しくなって自分以外誰もいない部屋でひとりでに笑った。

「そろそろ死に時かな」

 そう呟いてから僕は目を閉じ、暗闇の世界へ落ちて行った。

 はじめまして。

 三日月仁一と申します。

 おそらくこの小説は、なろうに投稿されている大部分の小説とは違うタイプのものになると思います。

 その為、もしかしたら退屈なものになってしまうかもしれません。

 しかし僕は伝えたいことがあってこの小説を投稿するに至りました。

 これから小説を通して少しずつ表現できればいいなと考えております。

 もしこのような退屈な小説を読んでいただける人が居れば、本当に嬉しい限りです。

 これからよろしくお願いします。

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