表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/22

21.逃げてきた魔法少女

朝の迷惑な来訪から二度寝したところ、再びゆすり起こされた。


「変な男の人がテラペイヤーを渡せと乗り込んできたんですけど!!助けてください!!」


「……。」


嫌々ながらも顔を確認してみると、勇者バカの彼女の魔法少女だった。


「そもそも、テラペイヤーってなんですか!?私が作っているのはテラペイアーです!!というか、作っている事実を知っているのは私と貴方だけのはずなんですけど!?」


すごい勢いで、まくしたてられる。

てか、多分それシスコンだよね?

寝ぼけてたのもあって、適当に聞いてたのもあるしな。


「どうしましょう!実は魔王の手下だったりして……。そうなると、あのポンコツじゃどうにもならないかも……。」


何か一人で考えこんでいってしまっている。

魔王の手下なんて事は、100パーセントない。

なんなら、味方だと思う。

てか、ポンコツって勇者バカの事さしてる?


「そういえば最近、視線をどこからか感じるって話も出てたし、さっきの男がその正体なんじゃ!?」


あー、的外れな推理になっていってる。

それこそ、魔王の手下だよ。

というより、実の息子だよ。

しかも、視察じゃなくてストーカー行為を働いてるから。


「私、どうしたらいいですか!?」


「とりあえず落ち着いたら?」


「はっ!それもそうですね……。」


何とか冷静になってくれたみたいだ。


「訪ねてきた男については、何かご存知ですか?」


「たぶん、依頼主の兄だと思う。」


「そうでしたか。薬の名前は間違っているし、どうもただ者では無い感じがしまして……。一番頼りになるパーティーメンバーが、こんな時に限って不在で……。思わずこちらまで、助けを求めに来てしまいました。」


「……。」


この頼りになるパーティーメンバーは、どっちだ?

たぶん、ポンコツじゃなさそうなのっていう2択にすると、一人しか該当しないんだけど……。

まあ、わざわざ聞くのもアレなので聞かないことにしようか……。


「あ!テラペイアーは無事に完成しましたよ!」


「まじで!?」


「はい!!完成した所に、男が現れ急いでこちらに来てしまって現物を……!?すみません!!急いでこちらに来てしまって、置いてきたみたいです……。」


「あ、そう……。」


あのシスコンに迫られれば忘れてくるのもわかる。

てか、持って来られても困る。

住所が解読できないんだもん!!


「あの、私一度戻って、こちらにテラペイアーを届けますね。」


「それなんだけど、シスコンに渡してくれない?」


「しすこん?とは?」


「あー、依頼主の兄に渡してくれ。そしたら、多分早いだろ。」


「あ!依頼主のお兄さんでしたか!それもそうですね。」


よし、納得してくれた。

これでややこしいのに会わなくてよくなる。


「では、これで。」


「おう、って、ちょっと待て。」


「はい?」


「薬の報酬として、最初来た時のってやれなかった相談事、受けおってやるよ。」


「本当ですか!?」


「お、おう。」


余程話したかったのか、目が輝いている。


「聞いてください!!私は優しく尽くしてるはずなのに、あの勇者ポンコツがたぶん浮気してるんですよ!!」


「……。」


その通り!!

その通りだよ!!

あってるよ!!

だから、何も言えね……。

てか、ポンコツってやっぱり勇者バカの事だったんだな。


「相手は解らないんですけど、見張りとか鍛錬とか何かと理由をつけてパーティーを離れるんですよ。おかしくないですか?」


「ま、まぁ……。」


「でしょ!!だから、私の計画では一発、勇者ポンコツを殴って武闘家の人とパーティー作り直そうかと思ってるんです。」


「……。」


うん、俺もその意見に賛成だよ。

相手知っちゃったら余計だよ。

あんな奴居ても居なくても変わらないと思うんだよね。

……あれ?

何か今、自分の事言ってるみたいだったのは、気のせいか?


「そこで、相談なんですけど殴って罵倒しても大丈夫だと思います?」


「……。」


なんていう質問だよ。

そんなの決まってんだろ。


「して大丈夫に決まってんだろ。」


「ですよね!!よかった。武闘家の彼は、人が良すぎてパーティーから外すとしても、仲間だったからそういうのは良くないって言い張るもんで……。」


武闘家いいやつだな!!

信仰してる神様は、ろくでもないじじいだけどな。

とりあえず


「気が済むまで殴って、罵倒してこい。俺が大丈夫だと保証してやる。」


「わかりました!!同意してもらえて、スッキリしました!」


「おう。」


「では、テラペイアーは依頼主のお兄さんへお渡しします。ありがとうございました!」


そう言うと、魔法少女は輝かしいまでの笑顔で、PC画面へと帰っていった。


魔法少女には、ぜひとも幸せになって欲しい。

あんな勇者バカは、ボッコボコにしていいと思う。

てか、俺のフィギュアとセーブデータの怨みも含めて、殴って欲しい。


異世界の魔法少女へ、俺は密かに思いを託した。

そして、問題が一気に片付いた事に気づくのは数時間後である。



続く……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ