18.不覚にもご降臨
魔王一家の明るい未来が見えたと思われる日から早数日。
俺は優雅な午後を過ごしていた。
誰もPCから現れない。
それを喜ぶかの様に軽快な音楽とともに、さくさくと進んでいくゲーム。
手元には熱々のココアにクッキー。
ああ、何ていい日なんだ。
素晴らしいくらいにだらけてる。
まあ、いつもこうだけど。
これが俺の日常だったじゃないか。
あー、もう誰も来るな。
1個解決したっぽいしいいだろ。
そんな甘い事を考えたからだろうか。
不覚にも熱々のココアが入ったコップを倒した。
そして、火傷するんじゃないかなと危機を感じたその瞬間。
俺の背後が眩しく光り、勝手にココアがコップに戻っていった。
コップもひとりでに立った。
「危ない所だったな。大丈夫か?」
背後から光だけじゃなく声まで聞こえてきた。
そして、俺は振り返った。
そこに神々しい光に包まれた神様がいた。
「クソじじい!どっから出てきた!?」
「お前はクソガキ!!何でお前が護符を持っているのだ!?」
お互いがお互いに疑問を投げかけた。
そして、お互いがお互いにやけくそ気味に答えた。
「武闘家がくれたんだよ!」
「護符からに決まってるだろーが!」
お互いに息切れ気味である。
「え?護符?何?んじゃ、あの武闘家はお前みたいなクソじじいの自称神様の信徒なの?」
「それが何だ。何も問題ないだろ。」
「いや、大有りだから!あんな人の良さそうなやつ!てか、ストーカーから守ってやれよ!」
「ストーカー?そんなもん護符でどうにかできると思うな。ワシが護符から召喚される時は、持ち主が身体的に危害が加わるときだけだ。」
何て使えないんだ。
心身ともに助けてやれよ。
てか
「火傷の危険くらいで現れてんじゃねーよ。」
「何だとクソガキ!誰のおかげで火傷せずに済んだと思ってるんだ!」
「火傷なんて生きてりゃある話じゃねーか。しかも飲み物こぼす程度の火傷なんて、日常だろ。」
「やっぱり、お前みたいなクソガキ可愛くない!」
「可愛くなくて結構だ!てか、とっとと帰れ!」
「こっちだって帰りたいわ!」
ん?
今の返しおかしくね?
護符の力で来たんだから用事終わっただろーよ。
「この護符に召喚されると1時間は帰れんのだ。」
「……。」
ふっざけんな!!
何なの!?
1時間も居るの!?
耐えられないんだけど!
てか
「何で口だけで、そこから動かねーんだよ。じじいなんだから立ってんの疲れるだろ。その辺くらい貸してやるよ。」
俺は空いてる床のスペースを指差し言った。
でも、クソじじいの表情はみるみるうちに怒りへと進化していった。
「誰がじじいだ!!ワシは現役だ!!」
凄い勢いで怒鳴られた。
「それと簡単に動けと言うな。今お前に見えているワシは、分身みたいなものだ。だから、護符の半径50センチ以上は動けん。」
……短っ!!
行動範囲狭っ!!
普通は1メートルから3メートルはいけるだろ!
神様の護符のくせに使えない……。
肌身はなさず持ってないと本気で、何もできない役立たずじゃねーか……。
でも、動けないって事は邪魔もされねーな。
よし
「俺、ゲームの続きやるから。帰れるようになったら勝手に帰れよ。」
「何!?お前が原因で呼び出されたというのに!げーむとは何だ!」
「ゲームはゲームだよ。んじゃ。」
そう言うと俺は、引き出しからヘッドホンを取り出した。
そして、PCへと接続しクソじじいの声をシャットアウトしたのだった。
自称神様は自分がどれだけ凄いのかわかっているのか?的な話を、俺にしていた気がするが俺は知らない。
俺は気合を入れるためにも、こぼす前に戻ったココアを一気に飲み干した。
続く……




