10.真剣なカップルにかっこつけてみた俺
魔女こと、魔王の奥さんが現れた翌日。
すっかり忘れていた二人がPC画面から出てきた。
俺の事が嫌いなのか、というレベルで咳をかぶせてきた病弱王子とドジっ子姫だった。
「やあ、久しぶりだゲッホ、ゲッホ!!」
「だ、大丈夫か?」
「ゴッホン、あぁ。僕は大丈夫だ。君は元気にしていたかい?」
「あ、うん。」
何か、王子の病状が前より悪化してませんか?
初っ端から咳をかましてくるんですが……。
「どうやら僕達二人の相談にのってくれたみたいだね。ありがっケホッゴッホ」
「落ち着いて。私達、貴方に感謝してますの。おかげで、和解できましたの!」
「本当にありがとう。僕らは、お互いを思ってとった行動が思わぬ事態をよんゲッホケホ、よんでいた。だから、君には感謝をしきれなゲホッ」
「感謝は解ったんだけど、悪化してない?」
俺は思った事を率直に言ってみる。
だって、ここで倒れられても困るもの。
「あぁ。その事もあって今日、僕達は来たんだよ。」
「本当は良いお話だけもって、貴方に会いたかったのですが深刻な状態になってしまって……。」
「本当に申し訳なゲッホゲホッ」
もう、王子は黙ってろ!!
しゃべるな!!見てるこっちが怖いわ!
「大変申し上げにくいのですが、ご相談があるのです。」
「……。」
何か凄い、深刻な雰囲気になったぞ?
怖い、何を言われるんだ俺は……。
で、でも、今まで来た奴らの中じゃ一番親身になってやりたい。
だって、俺が恋のキューピットみたいなんだもん!
「彼の病は、今現在では治らないと言われました。ですが、魔法使いなら作る事ができ、彼の病を治せる薬があるようなのです!テラペイアーと呼ばれるものらしいのですが。だれか、良い魔法使いの方をご存じないでしょうか?」
「……今のところは。」
「どうか協力だけでも、魔法使いを探すお手伝いだけでもして頂けませんか?」
そういうと、ドジっ子姫は俺の手を取り懇願する目を向けてくる。
どうしよう、俺こういう場面出くわしたことないから凄い「うん」って言いたくなるんだけど。
けど、PCから出てくるのにろくな奴いないしな……。
この二人はまともだけど。
魔法使いって言えば、魔女の奥さんだけど魔王の嫁だから、あてにできないしな。
むしろ、薬は薬でも毒薬渡されそうだし。
あー、何で普通の善良な魔法使いは出てこないんだよ。
魔法使い、魔法使い……うーん、誰か……あ。
一か八かだけど、善良そうなのがいる。
いや、あの勇者がリーダーっぽい事を考えると不安だが対魔王勢力の一人なのだから魔王の奥さんよりは安心だろ……たぶん。
「悪かった。無理なおゲッホゲホッゲボ、ん、お願いをしてしまった。僕の事は気にしないでくれ。」
「でも、もう私達では尽くす手が……。」
「いいんだ「良くない!」
「「っ!?」」
俺は王子の発言に食い気味に応えた。
諦めるのは、まだ早い。
「俺は直接あった事は無いが、魔法使いが知り合いに居る奴なら知っている。もし、そいつが来てくれれば交渉できるかもしれない。」
会いたくないってのが本心だが、こいつらのためだ!
俺がやるしかないんだ!!
「本当ですの!?」
「ああ。けど、テラペイアーってのを知ってるかも解らないから賭けだけどな。」
「希望が持てるだけも私嬉しいですわ!!」
「本当に君は、僕達にいつも希望を与えてくれるな。感謝してもしきれない。」
「それは、無事にテラペイアーを入手してからにしてくれ。」
「本当にありがとう。こちらの紙に私達の住まいを記しておきました。もし、テラペイアーが手元に来ましたらこちらまで届けてください。」
「ああ。」
「それじゃ、今日のところはこれゲボっゲフン、これで失礼する。ありがとう。」
そういうと、王子は姫の手を取りPC画面からお帰りになられた……って、おい!
普通に相談のったうえに何かよく解かんない薬用意しないといけなくなったんだけど!?
何、ムードにのまれてんだよ!俺!!
馬鹿なの!?
てか、勇者なんて一生会わなくていいんだけど!?
何で『会いたくない』で止めとけばいいものを『だが』とか打ち消しちゃったの!
本当に馬鹿じゃないの、俺。
しかも、さらっと交渉してやるとか何かっこつけてんだよ、何様のつもりだよ。
その前にテラペイアーって何?
魔法名なの?薬品名なの?それとも薬草名なの?
もう、わけがわかんねーよ……。
俺の頭の中はパンク寸前である。
何か、もう疲れた……。
でも、あいつらすっげぇいい奴だからな……。
何もしないと俺の残り少ない良心が痛みそうだ。
あ、そういや何か紙預かったな。
異世界の住所ってどんな感じなんだろ?
【⊕←→↑↑↖∋∌⌒∇∞¶¬∉$♯↘↑↓→←←∵】
わかんねぇええええ!!!
え?何これ?暗号??
これ、俺読めないんだけど?
どうやって、届けろと?
てか、俺はPC画面からどこも行けないんですけど?
おい、よくよく考えると問題点だらけじゃねーか。
つんだ……。
俺、どうしたらいいんだよ。
呆然とPC画面を見つめ続ける、俺。
残り少ない良心が痛むより先に心が折れるのが早いと悟るのだった。
続く……




