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創世の龍が愛した神父と導かれし者の物語  作者: ナギノセン
移ろいの日々 ローテンベルグ編
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第92話 -生意気で律儀-

12/4 間違い修正しました。

「間違いない。そのDクラスはハッタリだな」

「衛兵さんの仰るとおりです。その後、Gクラスの若者が、体格からは思いも寄らない速さで犯人の後ろへ回り、腕を捻り上げてそのまま簡単に地面へねじ伏せたのですから」

「ほう、俺と同じ位のでかさで、同じ様な腕輪をしながら、かなり俊敏な動きをねぇ」

 リオンにはヴォルトの視線が益々痛かった。


「本当に電光石火の出来事でした。その時に彼が言った言葉が、なかなか印象的でしたよ」

「その若造は何と言ったんだ?」

「DもGも関係ない。強い人は、そんなものに関係なく強いんだ。僕はそれを二人の尊敬する人から教えられた。お前など足元にも及ばない、凄い人達だ。そして僕はその人達に追いつく努力をいつも怠っていない。こんなくだらないに騒ぎを起こしているお前になどに決して負けはしない、と」

「ほう、若造のくせに言うことは一人前だな」

 ヴォルトはその若者に好意を持ったらしく、興味津々でサビーノの話を聞いている。

「それで終われば、私も彼の事を鼻っ柱の強い少し生意気な若者とだけ思ったのでしょうが、その後が大変可愛らしかったので好感を持てたのですよ。犯人を倒してしまうと、急に冷静になったのか、彼は焦ってオロオロし始めたのです」

「極端な奴だな。一体何歳くらいだ?」

「そうですね、十五、六でしょうか。こちらの衛兵さんより少し若いとお見受けします。でもその若者の方が、少し大きかったでしょうね」

「ふーん、お前より少し若くて、大柄か。それにクルス教徒だ。心当たりはないのか?」

「クルス教徒自体、珍しくもないだろう? それに僕より大きい人なんていくらでもいるよ、現に目の前にいるじゃないか」

 リオンはヴォルトとはわざと視線を合わさずに、素っ気なく答えた。


「まあいい。で、親父、その後どうなったんだ?」

「ええ、オロオロとしながらも犯人を縛るための縄を求められたので手渡しますと、手際よく縛り上げました。そして焦った様子で私へ向かって、こんなことが神父様に知られたらまた怒られてしまいます。親父さん、僕はもう帰りますけど、この人が勝手に躓いたとか適当に誤魔化して下さい。お願いします。それとお代はいくらですか? と」

「何だか良く分からないが、そいつもバカっぽいな。親父が誤魔化したところで、犯人が喋れば分かることだろう」

「本当におかしかったですよ。犯人を倒した時のふてぶてしさがまったくなかったですから」

「だが、神父様とやらをえらく恐れているのと、妙に律儀なのが良く分かるな。何もかもどこかの誰かによく似ている」

 ヴォルトが益々意味ありげな視線を送るが、リオンは必死になって顔を合わせようとしなかった。


「本当に律儀な若者でした。もちろん私もお世話になった彼からお代を頂くつもりは毛頭ありませんでしたから、要らないと言ったのですが、彼はその場でバタバタ走る格好をして、早く教えてと繰り返しました。私も要らないと言い続けたのでらちが明かないと思ったらしく、銀貨を数枚取り出して置いて逃げようとしたのです。もう私も根負けをして、銀貨一枚で十分だと伝えると、安すぎるね、でも、ありがとう、と払うなり走って出て行きましたよ」

「そいつ、俺と同じくらいの体なら相当食っていたんだろう?」

「ええ、銀貨三枚は軽く。そりゃ気持ちの良い食べっぷりでした。そしてすぐに衛兵さんが来て、犯人を屯所へ連れ帰ってからはご存知のとおりです」

「犯人も下らんところでヘマをしたもんだな」

「そうですね。屯所へ連れて行かれるときに喚いていましたよ、あいつがGクラスのわけがない、絶対モグりのDクラス以上だと」

 もう一人似たような奴がいるぞと言わんばかりに、ヴォルトはリオンをニヤニヤと見る。

 リオンは必死に気づかない振りをしながら、聞いた話から一人の少年のことを思い出していた。

 クルス教徒、神父様に怒られる、ヴォルト並の体格。

 そこまでは、一致するが冒険者だけが違う。

 記憶の限りでは、彼はまだ十五歳になっていなかったはずだ。

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