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創世の龍が愛した神父と導かれし者の物語  作者: ナギノセン
移ろいの日々 ローテンベルグ編
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第90話 -憶測-

20170829 見直しました

「あいつの主人はお前だよ。でないと、あんな馬鹿正直に自分が傷つく茨の茂みに入ろうとするか?」

「それを言われると……何も言えないよ」

 出発前に荷物のバランスが悪かったことに気づかず、流星号が勝手に曲がって進むと考えたことをリオンは恥ずかしく思い出した。

「お前さ、あいつを何回も助けているだろう?」

「良く分かるね。かれこれ五回くらいかな」

「その時にはお嬢ちゃんも一緒だったのか?」

「セダン襲撃の時は居なかったけど、それ以外の時は居たよ。だって流星はサーシャの馬だからね」

「あいつが蹄鉄を傷めたり、良く分からない理由で苦しんでいる時に、お前が得意の薬草で助けてやったんだろう?」

「凄いね、誰かから聞いたの?」

「お前を見ていたら分かるさ。人でも馬でも分け隔てなく全力で助けようとするだろうからな」

 ヴォルトは機嫌が悪いわけではなさそうだった。


「そしてサーシャお嬢ちゃんもその場には居たが、助けてくれたのはこのボーっとした男だった。だからお前を信用した、てな感じか」

「ボーっとって間違っちゃいないけど、もっと言い方がないのかなあ」

「なら、ヌボーっとの方が良いか?」

「……もういいです」

 やはりヴォルトは気分を害しているのかもしれない。


「お前は分かっていないみたいだから教えてやるが、もしお前かお嬢ちゃんを選ばなければならない場面が来た時、あいつは必ずお前を選ぶぞ」

「……えっ、嘘、何で!?」

「お嬢ちゃんには、仔馬の頃から優しく育てて貰ったかもしれないが、今はお前の方が自分を助けてくれて頼りになる人間だと認めているからだ」

 リオンは嬉しくないかと聞かれれば嬉しい、何とも言えない気分にさせられたが、ヴォルトは気に掛ける様子もない。

「さっきのも俺の勝手な見立てだが、俺達の馬が汗を掻きまくってモルドビ山を登っているのに、あいつは大した汗もかかず、重いお前を乗せて悠々としてやがった。そんな馬を俺は今まで見たことが無い。あいつはやっぱり噂に聞く三影だよ」

 そのでかい体を乗せていればどんな馬でも大汗をかくよ、などと言ってヴォルトのご機嫌をこれ以上損ねるのはリオンも避けたい。

 しかし本当に三影などというとんでもない馬だったらと考えるとかなり頭が痛かった。

「自分用にサフランでも買おうかな……」

「どう言う意味だ?」

「頭痛に聞く薬草だよ。あんな見るからに高そうな馬に選ばれるなんて考えただけで頭が痛いよ」

「確かに今のお前では荷が重そうだな。しかしお前が本当の飼い主になる可能性がないわけでもないだろう? サーシャお嬢ちゃんのお気に入りなんだし」

「そ、それこそありえないし、どっちも絶対ないからっ!」

 話がおかしな方へ行きそうになったのでリオンが慌てて全力で否定すると、ヴォルトも言いたいことは言えたのでそれ以上深入りはしなかった。


「分かった分かった。結構時間を食っちまった。あいつらも待たせているから、そろそろ行くか」

「うん、そうだね。必要な物は見つかったから行こうか」

 リオンとヴォルトはそれぞれ手にした物を店の主人に見せて代金を支払い、隣の宿屋へと入った。

 サンドとコンラードは、食堂になっている宿の一階の椅子に待ちくたびれた様子でだらしなく座っていた。

「遅いよ、二人ともー」

「悪い、ちょっと話し込んじまった」

「くっついたら離れないにもほどがあるって――」

 サンドのおしゃべりな口は、ヴォルトのごつい拳で完全に閉ざされた。

 見慣れた光景にリオンももう何も感じなくなって、普通に宿屋の感想を口にする。

「思っていたより大きいんだ。それに食堂は結構人が入ってるよ」

「そうだな。あのおっさん、小さいって言ってなかったか?」

「町と屯所が小さいって言っただけでー、宿屋が小さいなんて一言も言ってないよー」

「そうだったか。良く覚えているな、コンラード」

「分団長さん、怒らせちゃったからねー。色々、注意して聞いていたんだよー」

 どうせならいつもそのくらい気配りをしてくれたらありがたいのにと、リオンは思ったが言葉にはできない。


「だったらそこに寝ているやつは放って行くぞ。部屋は何処だ?」

「二階だよー。僕達はもう荷物を入れたから案内するよー。ん? ヴォルト、その大きな包みは何?」

「じじいへの土産だ。気にするな」

「へー、そうなんだー」

 ヴォルトが大きな布袋を四つ担いでいることをコンラードは一瞬だけ気に懸けたがあっさりと納得してしまった。

 三人は、エリクが借りてくれた部屋へと荷物を運び、再び食堂に戻った。

「まだ寝てるのかサンドは。しようがないな、起こしてやるか」

「――起きてるぜ」

「また寝た振りか。お前も飽きないな」

「起きたら誰もいねえしよ、冷たい奴らだ」

「こうやってすぐ戻って来たんだからさー、拗ねない拗ねない」

 絶妙のフォローをするコンラードと、傍若無人ヴォルトが夫婦に見えてきた。

 しかしサンドの二の舞にならないためにもリオンは決して口にはしない。

いつも拙作をお読み頂きありがとうございます。

しかし当初では想定していないほど物語を引っ張ります(笑)

本日もよろしくお願いいたします。

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