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創世の龍が愛した神父と導かれし者の物語  作者: ナギノセン
移ろいの日々 ローテンベルグ編
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第88話 -人定作業-

20170827 見直しました。

「問題ありません。予定日限は、衛兵見習いがいるので長めに取ることを、ワルター様に了解を頂いているとコーネル衛兵長が申しておりました」

「そうか、了解した。では着いて早々だが、人定をお願いしたい」

「分かりました。リオン、頼む」

 エリクに建物の一階奥の収監部屋へ案内され、扉に付けられた小さな覗窓からリオンが確認すると、セダンの風待ち亭で夕食を摂っていた男に間違いないことを告げた。

「確かに僕の知っている三人の中で、長剣を差していた二名のうちの一人です」

「そうか。ではこれで確定だな」

「えっ? これだけでですか?」

「心配するな。君以外にも人定に来てもらっていて皆同じ意見だ。それに君だけだ、あいつが長剣を持っていたことを言及したのは」

「そ、そうでしたか。でしたら他の二人は?」

 一人の人間の罪を問うのだから間違いでは済まされない。

 リオンは大きく胸を撫で下ろしながら疑問と感じたことを尋ねただけであったが、改めて大きな事件であったことをエリクから教えられた。


「あの男とは一緒には居なかった。それについてはローテンベルグに連れて行ってから改めて聞き出すことになるだろう」

「でもどうやってセダン襲撃犯であると判明したのですか?」

「ワルター様が、通常より細かい人相書きを領内全てに配布されたからだ。こう言っては身も蓋もないが、北の外れの田舎町の事件が、この南の端までかくも迅速に伝わっているとは思っていなかったのだろう」

「珍しいのですか?」

「この程度の事件で、領内全域にここまで早くお触れが回った例など聞いたことがない」

「では我々もワルター様のご意思に沿うように護送の手続きに移りましょう」

 リオンとエリクの話が長引きそうだったので、サンドが先を促す。

「そうだな。指令書では、人定の結果が犯人の場合の君たちの本日の任務は、帰路の準備作業とある。そして明日早朝出立とのことだ。また早々にこちらからローテンベルグへ連絡を入れることまで指示されている。これも珍しいな、通常は出立を確認してからなのだが」

「帰りは明日なんだって。今日このまま帰途につくことも出来るのに、衛兵長はわざわざ余裕を持たせているよね。やっぱりリオンがいるからかな? ねぇ、ヴォルト?」

「じじ――、知らねぇよ」

 天然系コンラードの感想なので悪気はないのは分かっているけど、リオンは何となく申し訳なく思ってしまう。

 さすがに他の町の分団長の前なので、ヴォルトが少し遠慮をして言葉を選んだことが肩身の狭い思いをしていたリオンに少し笑顔を戻した。


「では早々に連絡を入れよと指令があるので確認だが、帰りはどちらの街道を行くつもりだ?」

「ヴォルト、東でもいいのか?」

「……駄目だ。護送任務が発生したから西にしろ」

「分かった。西でお願いします」

「了解した。帰着予定日をどうする?」

「当初の指示は、往路七日、帰路十四日でしたが、五日で来ることができましたので、帰路も十日にします」

「ちょっと待て、サンド。俺とリオンは大丈夫だが、お前達は本調子じゃない。十四日にしておけ」

「大丈夫だ。大体戻ってるし、今日もこれから休める」

「僕もほぼ大丈夫だよ、ヴォルト」

「本調子ではないとはどう言うことだ、サンド隊長?」

 エリクの訝しそうな表情に、サンドとコンラードが携帯食料で体調を崩していることを告げると、ゲールの分団長はみるみる顔が高潮し、ヴォルトに引けを取らない怒号を発した。


「この馬鹿者がっ!! 帰路は犯人を護送をして、ただでさえ神経も使うし、日数も掛かる! 本調子で力を発揮できない者達が足を引っ張って、何かの手違いが発生したらどうする気だ!! 日限違反は重罪になるのだぞ!?」

 温和そうな彼が本気で怒っており、普段は口数の多いサンドが何も言えずにいるとコンラードが申し訳なさそうな笑みで歩み出た。

 普段は予測がつかない天然系だが、ヴォルトの周囲に居ることが長いので、このようなトラブルめいた場合の如才ない振舞いにはまったく隙が無い。 

「申し訳ございません、エリク分団長。我々二名は、このリオンの薬草のお陰でほぼ復調していると思っておりましたので、つい普段と変わらぬと思い違いをしておりました。しかし仰ることはごもっともですので、十四日に改めさせて下さいますか?」

「いや、こちらも声を荒げてすまなかった。私もコーネル衛兵長には大変世話になっており、彼の部下が無茶なことをして、意味のない懲罰を受けることになったら申し訳が立たないので黙っていられなかった。分かってくれたならそれでいい」

 エリクの熱い気持ちがコーネルを思うが故であったことを知ったリオンはふとレギオンを思い出す。

 彼の目標とする人物も皆からとても慕われていた。


「では西回り十四日帰着で早馬を出しておく。それと本日はこちらで泊まってもらえれば良かったのだが、生憎、田舎町の屯所なのでそこまでの部屋は用意できない。そこで町の宿の一室を手配したが、そちらの衛兵見習いの彼の扱いはどうすれば良いのか? これは帰りの携帯食料の配給についても確認をしたかったことだが、正規と同じ扱いで良いのか?」

 指令書には、帰路用の配給実績も記載することになっている。

「ああ、それでお願いする」

「駄目だよ、ヴォルト。僕はすべて自前でやるように言われています。だからお気遣いなしで結構です。宿の部屋は彼らと一緒にして欲しいのですが、代金は自分で支払います」

「まったくしみったれてやがる」

「仕方がないよ、決まりだから」

「了解した。そのように取り計らおう。では食料配給と犯人引き渡しを明日の早朝にするのでここへ来てくれ。宿は屯所を左手に出てしばらく行けば、雑貨屋と並んで建っている。小さな町だから迷うことはないだろう」

「分かりました。色々とご親切にありがとうございました。失礼します」

 ようやく平静を取り戻したサンドが代表でエリクへ礼を述べると、リオンらは屯所を後にした。


「何だか冒険者の生活に戻ったみたいだ」

「俺達は通常は兵舎に泊まるか野営だから、どちらかと言えばありがたい待遇だよな、ヴォルト」

「そうだな」

「コーネル衛兵長の知り合いだからじゃないー?」

「そうかもな。じじいも偶には良いことをする。しかしリオンのことは納得がいかん」

 宿へと向かいながら四人はそれぞれの思いを口にする。

「ヴォルト、ありがとう。僕は別にクエスト料を貰っているのだから当然だよ」

「そうかもしれないが」

「そうだ、僕は帰りの携帯食料を調達して来るから、先に宿へ向かっておいて」

「待て、俺も雑貨屋に用がある」

「じゃあ俺達は先に宿に入っているぞ」

 話しながら歩いているとエリクの言ったとおり雑貨屋と宿屋が見えて来たところで、サンドとコンラードは宿へと向かい、リオンはヴォルトと小さな雑貨屋へ入った。

いつも拙作をお読み頂きまして本当にありがとうございます。

結局元のスタイルに戻りました、この方が書きやすいです。

安易な方に流れてしまいました(苦笑)

また話が進まなくなったら考えます。

本日もよろしくお願いいたします。

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