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創世の龍が愛した神父と導かれし者の物語  作者: ナギノセン
移ろいの日々 ローテンベルグ編
88/682

第84話 -軍務-

20170821 見直しました。

「お前が来たから、僕が今回の任務に加われなかったんだぞ。余所者のくせに生意気だ」

「チロ、それは違うよー。相手の顔を知っているリオンが今回の任務では必要なんだから」

 小柄なチロが、苦労して流星号を操って来たリオンを見上げながら噛みついているとコンラードが宥めに入る。

 チロも当然分かっているのだが、心の整理がつかない最中にヴォルトがわざわざリオンのために剣帯を準備してやったこと、それを手伝わされたことが気に入らず、早い話が八つ当たりをしているだけであった。


「何だよ、コンラードまでこいつの味方なのか? それにお前、何とか言えよ」

 責められているリオン当人は、宿直室での宴会の時から決して好意的ではなかったチロに困惑しながらもコンラードに任せるのが正解と判断して黙っていたところへ、ヴォルトが静かに割って入った。

「チロ、何をやってる?」

「ヴォルト・・・・・・」

「お前も、分かっているだろう。こんな事をしても何も変わらないぞ」

「・・・・・・」

「出立の邪魔をすると言うことは、俺達に命令違反をさせたいのか?」

 彼は怒っている訳ではなく感情の籠らない言葉で淡々と話しており、それが逆にチロにはきつかったらしく、今にも泣きそうなチロを庇ってコンラードが慌ててヴォルトを止めに入った。


「ヴォルト、少し言い過ぎじゃない?」

「コンラードは黙ってろ。チロ、この任務に日限が付いていることは知っているな」

「・・・・・・うん」

「だったら俺が言いたいことも分かるな?」

「・・・・・・うん」

「リオンに謝れ」

「・・・・・・」

「―――お前、今、こいつに謝らないなら、今後一切俺に話し掛けるな」

 ヴォルトが吐き捨てるように口にするとチロの顔が一瞬で真っ青になり、サンドもさすがに容赦無さ過ぎる言葉に黙っていられなくなった。


「ヴォルト、お前らしくないぞ!」

「どこがだ?」

「どうして仲間にそこまできついことが言えるんだ!?」

「お前こそ勘違いするなよ、サンド。俺達はこいつが余所者と言ったリオンに頼らなければ任務が遂行できない。それを理解した上で、個人的感情を優先させて任務の邪魔をしている。あまつさえ今回の任務には何の役にも立たないくせに、正規の衛兵と言うだけでリオンを蔑ろにしている。リオンがもし気分を害して、自分は余所者の冒険者だから任務から降りる、後はチロに任せると言ったらどうなる?」

「―――任務失敗で俺達全員懲罰ものだな・・・・・・」

「バカバカしいがそう言うことだ。それに―――いや、いい」

「何だ? 他にも何かあるのか?」

「ともかく、謝れ、チロ」

「待ってよ、ヴォルト。チロも完全に委縮しているし、君が強制したから格好だけ謝るのはどうかな? 本心からでないとチロにもリオンにも、心のしこりが残るだけじゃないかな?」

「何が言いたい、コンラード?」

「今はチロに頭を冷やす時間を与えようよ。帰って来てからしっかりと謝罪すると言うことで、チロも良いね?」

「・・・・・・」

 相変わらず顔を背けているチロに思わず手を伸ばしかけたヴォルトの肩をリオンが掴んだ。


「僕は別に謝って貰わなくても構わないよ」

「お前、こんなところで何を遠慮する必要がある!?」

「だって部外者なのは間違いないし、彼の気持ちも分かるからね」

「まったく何も分かっていない。それに優しすぎるぞ。こいつはお前も含めた俺達の任務遂行を邪魔しようとしたのだぞ。それ自体、軍法会議物だ」

「軍法会議? それってどういうこと?」

「ああ、そうだった―――お前には知らされていないが、俺達がゲールに辿り着く期限は命令で七日以内と決められていて遅れると懲罰対象だ。勿論お前は除かれるが、これは正規の軍の任務なんだよ」

「そうだね、誰が正しいかと言えばヴォルトなんだよ。リオンは冒険者だから無理はないけど、もし戦争だったら本部の命令に基づいて各部隊が手足の様に緊密に連携して、決まった時間に決まった行動を起こさなければ、作戦は適切に実行されず敗北してしまうよね。事の大小はあるけれど、基本的な考え方は同じなんだよ」

 ヴォルトは見たことがないくらい厳しい表情をして、コンラードにも先程の柔和な面影は全くない。

 それは本当に大変なことだとリオンにも分かり始めると、流星号のせいで命令違反になる可能性へと思い至り嫌な汗が止まらなくなってきた。


「あのさ、ヴォルト・・・・・・・」

「何だ? チロを庇う必要はもうないぞ」

「いや違うんだ。今の話でとても気になることが出てきた」

「じゃあ、チロは庇わないんだな?」

「庇うも何も、僕は彼を責めてないから」

「・・・・・・端から相手にもならないか。まあ、お前ならそうだな」

「いやいや、違う違う、誰もそんなこと言ってないよ」

「―――だそうだ、チロ。リオンは気にしてないらしいから、もう行っていいぞ。だが、さっき俺が言ったことは本気だからな。コンラードのとりなしを無駄にするなよ」

「チロ、もうお帰り」

 コンラードに促されたチロは脱兎のごとく駆け去ってしまった。


いつもお読み頂きましてありがとうございます。

本当にお願いだから出発して下さいよと思います(笑)

本日もよろしくお願いいたします。

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