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創世の龍が愛した神父と導かれし者の物語  作者: ナギノセン
移ろいの日々 ローテンベルグ編
83/682

第79話 -身丈-

20170820 見直しました。

 ヴォルトがカウンターの上を指差した。

「開けてみろよ」

「何で僕が?」

「いいから開けろ。心配するな、ガザリーも承知している」

 彼女を見ると珍しく普通の笑顔で頷いていたので益々怪しさが募ったが、二人ともがじっと見ているのでリオンは諦めて布を広げると、一本の青白い金属で作られた幅広の長剣が出てきた。


「これは・・・・・・?」

「お前の錘と同じ金属で作られている。俺とガザリーからの贈り物だ」

「えっ、何で?」

「アイデア料さ。わたしゃこれから錘を売って儲けまくる。ヴォルトは隊内で売って儲けたのをこの剣の代金に充てる」

「そんな、僕は何もしていないし、理由もなくこんな高価な物は貰えませんよ」

「お前が何もしていないと言うなら、これはセダンに帰ってからレギオン神父に渡してくれ。錘のアイデア料ですってな。それまでは弟子のお前が預かれ。ただレギオン神父もこんな物を貰っても困るだろうし、結局お前に託されるんじゃないか?」

「人が迷惑がる物を渡そうとするなよ・・・・・・」

 苦笑いしながらも、ヴォルトの方便がリオンは嬉しかった。


 リオンの長剣は、冒険を始めた当初に先輩冒険者から譲り受けた物で、今ではヴォルトの言う通りボロボロだった。

 それでも問題なく過ごせて来たのは、彼自身が戦いの場に身を置くことがあまり無かったからであり、そのため買い替える程の必要性は感じていなかった。

 しかし彼も冒険者の端くれとして、いずれは良い剣が欲しいとは思っていたのである。

 ヴォルトはと言えば、初対面の時から彼の装備の貧相さがとても気になっていた。

 腕は良くても装備が悪ければ命の危険にさらされるし、実力に比してレベルが低いのも装備の悪さが一因だろう推測していた。

「ここにあってもどっちにしろ邪魔だから、こいつはお前が持って帰るしかない」

「―――聞いてもいいかな?」

「どうせ、値段だろう? と言っても教えないがな」

 貧乏性のリオンはとても気になっていたのだが 先読みをしたヴォルトが言い当てた。

「これってイリドスミンだよね、かなり高価だよね? それにヴォルトが錘を隊員に売って儲けるって、隊員達にいくらで売るの?」

「売る金額はいずれ店にも並べるので教えてやってもいいが、原価が分かってなければ儲けは分からないし意味はないよ」

「細かいことは気にするな、命の値段と比べれば安い物だ」

 ガザリーの言い分もその通りだし、ヴォルトの言葉も真実を突いていたため、リオンは気持ちだけは受け取めることにした。


「二人の気遣いはありがたく頂戴するよ―――でもこれは受け取れない」

「はあっ!? お前何言ってるの?」

 ヴォルトが丸太の様な両腕を伸ばして今にも掴みかかって来そうなので、リオンは大慌てで狭い店の中を逃げ回った。

「うわっ、ちょっと、待ってよっ。理由があるんだ!」

「ヴォルト、待ってやりな。話を聞こうじゃないか。まったくお前達は私の店を壊す気か。図体だけでかくなった脳みそ筋肉のガキが二人もいると、コーネルはさぞ大変だろうねぇ」

「ちっ、うるせぇ。ほら早く話せその訳とやらを」

 いずれヴォルトには打ち明けることになると思っていたのと、彼も魔法が余り得意ではないと言っていたので、不思議と気負わずにスリングショットを使う理由や経緯をリオンは話せた。


「スリングショット? お前、そんな物まで使っていたのか! ほんと面白いほど隠し玉を出して来るな」

「隠し玉って、何も隠してないし、スリングショットの弾は見えるよ」

「バーカ。誰もそんなことは言ってねぇよ。しかし間接攻撃武器にスリングショットとは、衛兵では決して出ない冒険者らしい発想だな」

「そもそも必要ないじゃないか」

 リオンは少しだけ気分を害した。

「そうじゃない。衛兵なら陣形を組むから、魔法以外は大抵は弓になると言ったんだ。しかしもっと小回りの利くスリングショットか・・・・・・ガザリー、イケそうか?」

「そうさね、もう少し話を聞いてからじゃないと分からないね」

「そうか。リオン、今は持ってないのか?」

「・・・・・・持ってないよ」

「そいつは残念だね」

 ヴォルトとガザリーが何を考えているかは直ぐに分かった。

 この商魂の逞しさは領主の影響かもしれない。


「まあいいさ、明日からは持って来るんだろ?」

「勿論、クエストに出るのだから持って行くよ」

「その時にでも見させてもらうさ。ガザリーには帰って来たら教えてやるよ」

「そうかい、頼んだよ」

「で、それが剣を受け取らないのと、どう繋がるんだ?」

「正直、これは僕には重過ぎるんだよ」

「お前がこれを重い? はあ? 嘘付け。さすがに片手で振り回すのは少し難しいが、両手を使えば何の問題も無い―――ああ、そう言うことか」

 やはりヴォルトは理解が早かった。


「そうなんだ。スリングショットと剣を同時に持つ場合、剣が重過ぎると狙いが定められなくなって致命的なんだよ」

「だからお前は盾も持ってないのか。長剣持ちは普通に盾を持つけど、錘を知ってからそれが盾替わりかと思ったが、やっぱり役不足だしな。やっと分かったよ」

「残念だけど、これは受け取れないよ、ゴメン」

「そう言うことは早く聞かせろよ、どうすんだよこの剣」

「ヴォルトが使えば? これって持ち上げるだけでも結構大変だし、それを戦いで使えるとなると、僕の知っている限りではヴォルト位じゃない?」

「おい、ガザリー、これを適当にぶった切って、こいつに合う重さに鍛え直せないのか?」

「出来ないことはないけれど、多分、バランスが崩れるだろうね」

「ちっ、そんな剣、戦いの場では安心して使えないしダメだ。仕様がねぇ、俺には少し軽いが使うことにするか」

「それはどうだろうね?」

「何っ? やいババァ、俺がこの程度の剣を使えないと言うのか?」

いつも拙作をお読み頂きましてありがとうございます。

どんどん進めます。良い感じです(笑)

本日もよろしくお願いいたします。

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