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創世の龍が愛した神父と導かれし者の物語  作者: ナギノセン
移ろいの日々 ローテンベルグ編
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第77話 -後見人の使い-

20170817 見直しました

 次の日、いつも朝一で連絡に来てくれていたマリサは暫くは来ないだろうと少し気怠い頭で考え、サーシャの部屋に向かう用意をしていたら彼女が先に宿直室へとやって来た。

「おはよう、リオン」

「おはよう、気分はどう?」

「うん、ありがとう」

「マリサさんは?」

「自分の部屋から動かなくてもいい仕事を任されているわ」

「そうなんだ」

「でね、彼女が歩ける様になるまでの間、お母様の侍女のミサさんが私の侍女になる予定なの」

「あー、あの人ね」

 昨日屋敷から出る時に世話になったが、当初のマリサ以上に無愛想な人だった。


「でもお母様の侍女になる人がまだ決まっていないから、まだ私付きではないの」

「だからサーシャが一人でここに来たのか。そう言えば僕もサーシャにお礼をしっかり言ってなかったね。昨日は庇ってくれてありがとう」

「そんなこと当然じゃない。私の方こそ本当にありがとう」

「僕は何もしてないよ。マリサさんの手当はサーシャがしたのだし、サーシャが元気になれたのはミゼル様のお陰だよ」

「いつもそうなのね、リオン」

「何がだい?」

「だって、いくらでも何でもできるのに、人に遠慮してばかり。自分がやったとは絶対に言わないわ。どうして?」

「どうしてって言われても・・・・・・」

 レギオンを見習うとこうなっただけだから、リオンには説明のしようがない。

 しかし納得のいかないサーシャは追及の手を緩めなかった


「それはリオンの良いところでもあるし、悪いところでもあるわ―――なんて何時もなら偉そうに色々言っちゃうところだけど、とてもあなたにそんなこと言う資格は私にはないわ。全然、敵わないもの」

「サーシャ、言っている意味がよく分からないんだけど?」

「簡単なことよ。昨日のことはリオンが居たから全て解決できたし、リオンが居たから今の私が居る、それだけよ」

「だから、そんなことはないって」

「いいのよ、私がそう思っているのだから。それとお母様の侍女が決まるまでは、ミサさん一人で私とお母様二人の相手をしなければいけないから、余りこちらに来られないの」

「だったら僕の方から毎朝行くことにするからミサさんに言っておいて。それに用があったら何時でも呼んでよ」

「ええ、お願いね。とりあえずこのことを伝えに来ただけだから、もう帰るわね」

「だったらお屋敷まで送るよ」

「じゃあ、私も流星号の前に乗せて貰おうかしら?」

「・・・・・・冗談でしょ?」

「―――もちろん冗談よ」

 自分でも何故この様な事を言い出したのか分からないサーシャは曖昧な笑顔を残し、屋敷に向かってリオンより先に歩き出した。


 特に話をするわけでもなく、お互い無言のまま彼女を屋敷に送り届けて宿直室へ戻ると、ヒューの使いでドアボーイのラスが扉の前で待っていた。

「リオンさん、噂になっていることについてお聞きしたいことがあるのですが、少しお時間はよろしいでしょうか?」

 恐れていたことがとうとうやって来た。

 ヒューは何だかんだ言ってもローテンベルグでの後見人を自負してくれているので、余り恥ずかしい報告はしたくはないのだが今更どうしようもない。

「早耳ですね」

「誰でも知っていますよ」

「うそ?」

「ただし誰なのかはっきりと分かっている者はまだ少ないですが、流星号を知っている私ども商会の者の目は誤魔化せませんよ。まあ、遅かれ早かれみんな知ることになるでしょうけど」

「そうですよね・・・・・・」

「そこで人の噂も何とやらで、暫く姿を消すのが一番じゃないかと手前どもの主人が申しておりますが」

「それは長期クエストと言うことですか?」

「はい。ただしサーシャ様の付き人クエストに支障があるので、行けるかどうかの確認も忘れずにして来る様にとのことでした」

「どの位ですか?」

「一月くらいかと」

「―――それはサーシャに聞かないと即答できないですね。どの様な内容ですか?」

「それはまだ申し上げられないとのことです」

「分かりました」

 ミゼル様の侍女が決まれば行けるかもしれないが、今は何とも言えない。


「ではサーシャ様に確認をされたら商会へお越し下さい。主人には一先ずその様に伝えます」

「・・・・・・町へ出るのは結構勇気がいりますね」

「ふふふ、左様にございますね」

 他人事だと思って気楽にラスは笑うが、リオンにしてみれば深刻極まりないことである。

 眉を寄せたリオンの反応に少し悪いこと言ったと思ったのかラスは商人らしく揉み手を見せた。

「でしたら―――商会の馬車でお迎えに伺いましょうか?」

 それはそれで商会の前で馬車から降りる時におかしな注目をされそうなので、リオンは丁重にお断りをした。

「ところで返事はどの位お待ち頂けますか?」

「二、三日位は待てるとのことです。それ以上になると申し訳ありませんが、他の方にお願いすると申しておりました」

「分かりました。では、明後日の夕方までにお伺いできなければ、僕の方が無理だったとお考え下さい」

「その様に主人へ伝えます」

 ラスは丁寧に一礼して帰って行った。


 彼の話で、益々町へ行くのが億劫になった。

 しかし食材の調達には行かなければと考えていたら、昨日、ヴォルト達が山ほど持って来た食材の残りがかなりあることに気が付き、食材調達のためだけには行く必要がないことが判明し、正直ありがたかった。

 ヴォルトはここまで読んでいたわけではないだろうが、彼の最近の言動はただの脳筋ではないような気がリオンにはしている。

 しかしマリサの方はケガで外出こそ出来ないけれど、女の子だからもっと困っているかもしれない。

 明日にでもサーシャへ忘れずにその辺りを聞いてみることにしよう。

 そう考えると、折角のヒューの計らいではあるが、クエストを口実に逃げるのは何だか卑怯な気がして来たのでリオンは断ることに決めた。

いつも拙作をお読み頂きありがとうございます。

成程こうなるのかと書きながら繋がる不思議さを感じております(爆)

本日もよろしくお願いいたします。

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