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創世の龍が愛した神父と導かれし者の物語  作者: ナギノセン
移ろいの日々 ローテンベルグ編
78/682

第74話 -正解-

20170812 見直しました。

「でもキーンが―――」

「ミゼル様のお話からすると、あの人はどうも憶測だけで物を言っていたみたいだね。あんな奴の言葉なんて何も聞かなくていいよ。でたらめばかりじゃないか」

「リオン、キーンは他に何と言っていましたか?」

「確かムケシュさんは無能者だから、ダイク家の執事にされたとか色々ありましたが」

 間接的にダイク家の悪口を言っている気が下リオンは罪悪感で声が小さくなった。


「それは逆ですよ。ムケシュは使用人頭では勿体ないから、一つの家を宰領させようとしてお兄様がお決めになられたのです。キーンなどはその候補にさえなっていません」

「そうだったのですか・・・・・・」

 サーシャから色々とムケシュについての文句を聞かされていたので、ムケシュが高い評価を受けているという話をリオンは素直に納得できない。

 ミゼルがそのことを感じ取って言葉を付け足した。

「彼は領民の範となる家に必要な格式や慣例などの才はありましたが、融通が少し利きにくかったのは事実です。ただそのことを差し置いても、ムケシュとキーンとでは比べものになりません」

「分かりました。でしたら尚更キーンさんの言っていることなど気に掛ける価値もありませんね。サーシャ、君は何も悪くはないよ」

 ミゼルは彼女の腕を掴むサーシャの手の力が抜けたのを感じ、上出来だと言わんばかりに表情を緩めてリオンへ頷くと、リオンの伸びた背筋が少しだけ丸くなった。

 リオンが激しい緊張と戦いながら何とか正しい道を選択できたことに安堵したのだったが、ミゼルも実はそうであった。

 しかしそのようなことはおくびにも出さず彼女は話を続けた。


「ではもう一つ、お前の侍女についての話を聞かせなさい。ゼストから図書室での事故で修道院へ治療に行ったとの話を聞きましたが、容体はどうなのですか?」

「リオン、お願い」

「はい。暫くは歩くための杖が手放せないでしょう」

「つまりサーシャの身の回りの世話は出来ないということですね?」

「はい。まず階段の昇り降りに不自由すると思われます」

「わかりました。ではゼストに別の者を就けるように申し付けておきます」

「お母様、私には侍女など必要ないと思うのですが」

「セダンならお前の言う通りにしてもあげることも可能ですが、ここはローテンベルグ家です。今は、妾の言うことを聞きなさい」

「はい・・・・・・」

「では、リナ、ゼストを呼んで来なさい」

「畏まりました」

 侍女というのは主人達の邪魔にならないように気配を見事なまでに消している。

 リナはミゼルが物静かなことを好むので特に気を遣って振る舞っていたため、リオンもすっかり存在を忘れるほどであったが、部屋から本当にいなくなると勝手な言い分だがサーシャ達の家族水入らずの邪魔をリオンは一人でしているような気がして落ち着かない。

 サーシャは何となく居心地の悪そうなリオンに声を掛けた。


「リオン、もう用事は済んだから宿直室へ帰っても良くてよ」

「ありがとう。でも、僕一人ではこの階にある鍵が掛かった扉は通れないから、部屋の外で彼女が帰って来るのを待たせて貰うよ」

「あっ、そうか、ごめんなさい」

「やっと分かりましたか? ここでは何事にも侍女は必要なのですよ」

「はい、お母様・・・・・・」

「それでは、ミゼル様、僕は部屋の外でリナさんを待ちますので失礼致します。サーシャもまた明日ね」

「うん、今日はありがとう」

「リオン、妾からも礼を言います。よく娘を守ってくれました」

「当然のことをしたまでです」

 重い木の扉を開けて廊下に出たリオンは張りつめていた気が一気に抜けるのを感じる。

 本当に長い一日だった。

 後はリナが帰って来れば宿直室へ戻れる。

 そう思って背伸びをしているとゼストを連れたリナが廊下の向こうから姿を現し、部屋の前で気楽そうにしている彼をゼストが訝しげな眼で尋ねた。

「ここで何をしているのですか?」

「宿直室に帰ろうと思うのですが、この階の扉には鍵が掛けられており、僕一人では通ることができませんのでリナさんが帰って来るのを待っていました」

「そうでしたか。リナ、彼を連れて行っておあげなさい。ミゼル様には私の方から説明しておきます」

 ゼストは言い残してミゼルの部屋へと入り、マリサの後任となる侍女の話をミゼルらと行ったところ、直ぐには人の手当が難しいとの理由で取り敢えずリナがサーシャの侍女も兼ねることが決められた。


 一方リオンは屋敷の外へリナに連れ出してもらって礼を述べると、彼女は愛想も無く戻って行った。

 彼女の後姿を見送るリオンは、単に嫌われているのかマリサと同様にキーンの言い付けがあるのかどちらだろうか等と他愛もないことを考えながら、気を悪くすることもなく宿直室へと戻ると―――知らない間に筋肉男達の大宴会場と化していた。

いつも拙作をお読み頂きありがとうございます。

少し真面目パートが何とか終わりました、苦労しました(笑)

本日もよろしくお願いいたします。

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