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創世の龍が愛した神父と導かれし者の物語  作者: ナギノセン
移ろいの日々 ローテンベルグ編
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第58話 -引っ越し-

20170529 見直しました。

「昨日のことですが、彼はどういった経緯かは分かりませんが、衛兵達の訓練に参加していたらしいです」

「昨日? ああ、グレンが例の件で兄ワルターへ面会を求めたので、妾がサーシャを屋敷から連れ出しました。彼には空き時間になったので、屋敷の若い者同士で誰かに誘われて訓練に参加したといったところでしょう」

「それについては衛兵長のコーネルも承知とのことです。しかし彼は衛兵ではありませんので、屋敷内の秩序としては好ましくありません。そこで馬屋の手伝いと同様に衛兵の手伝いもさせるということで、彼を扱おうと思うのですが、よろしいでしょうか?」

「そなたも分かっているとは思いますが、衛兵となると妾だけの判断では無理です」

「その点は私の方からワルター様にお諮りします。事前にミゼル様のご内諾を頂いていると説明が出来ましたら、前向きにご検討頂けるのではと考えております」

「内諾を与えることは問題ありません。しかし今の彼には衛兵の手伝いは無理でしょう。まずは訓練にしっかり参加をして、様々な規律を身に着ける必要があるのではないですか?」

「はい、仰る通りと思われます。そこでリオン君に役目として訓練参加を正式に認め、非常時には衛兵の手伝いをさせるという線で進めたいと考えますが、そうなると彼の住まいも使用人建物の部屋では少々不都合が出てまいります」

「それはどうしてですか? 彼をあの部屋に入れる様にと、グレンからお願いをしているはずですよ」

「存じております。しかし訓練参加をするとなると、昼夜関係なく行われるものもあります。使用人達は朝早くからお勤めをして夜の早くには休む生活をしている者もおります。彼が夜中に訓練参加をしたりすると彼等の生活へ差障り、屋敷のことへ不都合が起きるのでは懸念しております」

「―――では兵舎へ入れるつもりですか?」

 ミゼルはようやくゼストの真意に気づいた。

 全ては彼の行動規範である正しき屋敷の秩序のためにリオンを追い出したいができないので、せめて目の届かないところへ追いやりたい。

 そして続いた言葉は彼女の考えが正しかったことを証明した。


「リオン君は正規の衛兵ではありませんので難しいでしょう。その代わりに、今は使われていない宿直室をあてがうことを考えております。あの建物は馬屋にも近く、何もかもが持って来いの場所です」

「―――それで大切な秩序は維持できそうですか?」

「はい。まずは屋敷の中に彼を取り込むことから始めたいと考えます。現状、彼の処遇は宙に浮いていて皆も扱いに困っております。しかしこのお話がワルター様にお許し頂けましたら落ち着きを取り戻せると考えます」

「そこまで頭を悩ませるほどのこととは思いませんが、この屋敷の執事であるゼストに任せます」

「ミゼル様のご配慮、心より御礼申し上げます―――しかしながら彼がこちらの意図とは違う動きをした場合、サーシャ様には大変申し訳ありませんが屋敷から彼の排除もあり得るということだけはお忘れないようにお願い申し上げます」

「・・・・・・分かりました」

 屋敷の内々に関することについては、領主であり屋敷の主でもあるワルターの次に力を持つゼストの考えはほぼ決定事項である。

 彼の家は代々執事を務めて来ており、ローテンベルグ家の光と闇を最もよく知る者でもあった。

 グレンと結婚をして屋敷を出たミゼルが仮に彼を止めようとした場合、相当の覚悟をもってすれば可能ではあるが、この件に限ればそこまで真剣に考える程のものではなかったので、彼の考えに反対はしなかった。


 ミゼルとの話し合いの翌日、ゼストは早々にワルターとコーネルに話をしてリオンの処遇についての了承を得た。

 こうして大人の事情により、リオンは期せずして宿直室へ居を移すことと、衛兵達の訓練へ参加することが彼の知らないところで決められたのだが、当の彼は朝からサーシャ達と昨日に引き続いて宿直室の掃除を行っていた。

 その後、昼過ぎになって侍女のリナが宿直室へとやって来て彼をミゼルの部屋へ連れて行くと、状況の変化を知った。

 話を聞いた彼としても望むところであった。

 居心地の良さから宿直室の話は勿論であったが、訓練参加についても正規の剣術の訓練を受けたことのない彼は非常にありがたいと考えていた。

 それにサーシャの相手をすることがローテンベルグ(ここ)での最も大切なクエストだったが、彼女の周囲には常にマリサがいるので、彼が思っていたほどは彼女に拘束されず、自由な時間を持て余すことも分かりつつあったからだ。


 こうしてリオンがなんとか落ち着ける己の居場所を手に入れて衛兵の訓練参加と、ヒューから依頼される簡単なお使いクエストを少しずつこなして一月ほどが過ぎようとしていた。

 実のところ、ヒューからの依頼は引きっ切りなしにあったが、リオンが徐々に訓練を優先し始めると偶にしか受けることができなくなっていた。

 そのせいで最近の依頼料はえらく跳ね上がっている。

 正直クエストとはとても言えない商会関係の雑用なので、冒険者ギルドを通して指名を受けて高額な報酬を貰ってもいいものかとリオンは頭を悩ませてはいるが、ローテンベルグで不自由なく過ごせるようにとのヒューの計らいなので甘んじて受けている。

 ヒューがここまでするにも別にしっかりとした理由があった。

 リオンがキーンらと揉め事を起こしたのを報告した際に、ヒューは使用人達がリオンへ馬丁の仕事を横取りしたとなどの難癖をつけて屋敷から追い出そうとするかもしれない危惧を抱き、そのことををリオンへも告げた。

 そしてもし屋敷を追い出されても、グレンのクエストを継続できるだけの蓄えを作れるように協力すると改めて申し出てくれたのでリオンもありがたく好意を受けることにしたのである。

 そうしたある日の朝、いつも通り流星号の鬣を梳いてから馬草を与えていると、屋敷が少し騒がしいことに彼は気づいた。

いつもお読み頂きまして本当にありがとうございます。

残念ながら本日は特に拙作です(苦笑)。

それでもよろしくお願い致します。

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