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創世の龍が愛した神父と導かれし者の物語  作者: ナギノセン
移ろいの日々 ローテンベルグ編
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第57話 -屋敷の秩序-

20170529 見直しました。

 リオンが宿直室の掃除を続けていた頃、屋敷本館にある執事室では三人の男がそれぞれの立場を表す姿勢で話をしていた。

「―――と言う訳でございます、ゼスト様」

 部屋の主であるゼストは、上質な細工が施された椅子に厚手の織物を敷いて腰をかけ、怜悧な刃物を思わせる妖しい笑みを浮かべて目の前でさも賢し気に口を開く男の話を聞いていた。

 話をしているのは使用人頭のキーンで、内容は先程のサーシャ達と馬丁の間での揉め事についてである。


「つまりサーシャ様とリオン君の振る舞いは、屋敷の秩序を乱していると言いたいのですね?」

「はい。馬丁のハッサンが申します所では、責められることは何もないにも関わらず、身分を笠に着て居丈高に彼の行動を非難し、自分の馬の世話を命令したとのことです。そうだな?」

 キーンの後ろで、隠れる様に立っていた腰の曲がった男が慌てて頷く。

「ふむ。あのお嬢様は、馬も使用人も躾が必要だということをご存知ないようですね。だから―――いや、それはともかく屋敷の秩序が乱されているのであれば看過できないところではあります。キーン、よく報告してくれました。しかしそう大事にするような話ではないので、まずはミゼル様にでもご相談申し上げることにしましょう。二人共、下がっていいですよ」

「―――失礼致します」

 ゼストに報告をしさえすれば、直接サーシャ達へ何らかの働きかけをしてくれると思っていたキーンは、些か拍子抜けをして退室をした。

 勿論キーンが望んでいたのは、サーシャ達への苦言、できれば叱責である。

 二人が退室をした後の部屋の主は、酷薄な表情を浮かべ独り言ちた。

「我が従弟ムケシュのことは、彼の狭量が原因なので恨みはありませんが、今後も私の領分であまりに騒ぎが続くようだと、大変僭越ではありますがご退出頂くことになるかもしれませんね・・・・・・」

 サーシャらが滞在するのは長くて三カ月と聞いており、少しのお灸を据えることができれば特に大きな手を打つつもりはまだなかった。

 ゼストは気を落ち着けてから今回のことについて考えをまとめると本館のミゼルの部屋を訪ねる。

 執事である彼は当然のことながら屋敷のどこへでも自由に行き来ができ、領主家族の私的な場所さえも手続きなしで入ることが出来る。

 とは言え時は既に夕刻を過ぎており、また領主の妹の部屋への訪問であることから侍女の一人に先触れをさせることも忘れなかった。


「御夕食前の多忙なお時間に失礼致します」

「構いません、侍女から至急と聞いています。それで何用ですか?」

「はい。サーシャ様のことです」

 扉を開けても部屋へ入ろうとしないゼストの声にミゼルは少し眉を顰め、入室と話の続きを促した。

「妾の娘に何かありましたか?」

「先程受けた報告では、昼過ぎに馬屋で少し揉めたことがあり、その場にいらっしゃったとのことです」

 ゼストは俯いたまま話を続けるが、ミゼルの表情は徐々に険しくなる。

「揉めたとは?」

「お連れになった馬のことで―――」

 彼はキーンから聞いた話を大まかに伝えた。

「流星号ですか―――あの馬は、サーシャが十歳になった祝いに、母方のアッシェンバッハ家より贈られたものです。確かに気性が荒いですが、ここにいるどの馬よりも貴種で駿馬です」

 ミゼルは、ゼストがわざわざ至急の用だと言った割には大したことはない馬屋の揉め事持ち出す、その真意を測りかねていた。


「そのような素晴らしい馬だと分からずに鞭を打ったことは、目の利かない馬丁の落ち度です。大変失礼致しました。後できつく申し付けておきます。ただ、そうなると彼の手に余ることは明らかですから、リオン君に馬の世話を手伝ってもらうことはできますでしょうか?」

「それは問題ありません。不慣れな馬丁の世話では流星号がかわいそうです。リオンはサーシャの付き人としてここに居ますが、御者でもあります。彼ほど流星号の扱いに慣れている者は、いないとも聞いています」

「では明日から、彼に馬屋の仕事を手伝わせるということで、使用人達へ伝達致します」

「サーシャには妾から伝えればよいのですか?」

「はい、よろしくお願い致します」

「用はそれだけですか?」

「―――ご明察恐れ入ります。もう一つ、リオン君のことですが、彼は衛兵の真似事を始めたようで、これをどう扱ったものかと思いまして」

「衛兵の真似事?」

 ここに来てゼストは初めて顔を上げ、ミゼルと視線を合わせた。

いつも拙作をお読み頂きありがとうございます。

やっと話の流れを引き戻せそうです(笑)

本日もよろしくお願いいたします。

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