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創世の龍が愛した神父と導かれし者の物語  作者: ナギノセン
移ろいの日々 ローテンベルグ編
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第44話 -修理店探し-

 水際の月見亭から大通りに出て、冒険者ギルドはほんの目と鼻の先にある。

 リオンは、目的の緑色をした建物の扉を開けて入ると、中のカウンターから受付のネイギーが声を掛けて来た。

「いらっしゃい、リオン。昨日の今日だけど、何か忘れ物かい?」

 今行っているクエストは、一週間に一回の定期報告をすることになっているが、まだ始めてから二日目で報告の時期ではないことから、不思議に思ったのだろう。

「まだこの辺りが良く分からないので、教えて貰いたいことがあって来ました」

「一体、何だい? 何でも聞いてくれていいよ」

 ギルドの中にはクエスト掲示板の前に男が二人いるだけで、見るからに彼は暇そうだった。

 お陰でリオンは、気兼ねすることなく聞くことが出来た。


「ローテンベルグにある武器屋と防具屋について教えてください」

 わかったよ、との返事に続いたネイギーの話は、大体こんな感じだった。

 ローテンベルグには武器屋も防具屋も三軒ずつあり、単純に扱う商品の品質と値段で上中下に分かれていると考えればよく、解かりやすくするために武器屋、防具屋と言っているが、どの店も両方扱っている。

 武器の品揃えが豊富なら武器屋という程度の分類らしい。

 望んでいる革の修理だけであれば、一番安い商品を扱う防具屋か、革製品を売っている道具屋が適当と思われるが、道具屋の場合は、別途、縫製を自分でするか、服屋に出す必要があるとのこと。

 ただ、革と錘の接合部分は、特殊な形をした金属の留め具を噛み合わせて固定されており、新しい革を付け直すためにはそれを外して破れた革を取り除く必要があるので、一番上質な商品を扱う防具屋が適当と思われるとのこと。

 一番上の店と聞いたリオンは、ヒューから貰った金貨と銀貨が入った袋を確認した。


「それで、その店はどこにありますか?」

「君の来たローテンベルグ家の方へ大通りを戻って、広場に入る前の道を右手に曲がり、暫く行くとガザリー防具店と看板が出ているからすぐわかるよ。その道の反対側にはペニーの武器屋がある。この二店が上中下の上の店だ。ついでに中下の店も教えようか?」

 一瞬、教えてもらおうかとも思ったが、早めに修理をしたかったので、また今度聞せて下さいと言って、ギルドを後にした。

 ガザリー防具店へと向かうために大通りを歩いていると、周囲を圧倒する大柄な筋肉質の若い男が、屋台で買ったらしい焼いた鳥の足を左右の手に握り、交互に齧りながら、他にも何か美味いものはないかと物色をしている光景が目に入った。

「ヴォルト、お昼ご飯ですか?」

「むぐっ、リオンか。いきなり声を掛けるな、喉を詰めそうになっただろう」

 喉を詰めそうになったのは頬張り過ぎだろう。

 正確な理由をリオンは賢明にも口にしなかった。

「お前も食うか?」

 ヴォルトは、右手に握った食べかけの足を差し出したが、丁重にお断りする。

「先程、食べましたので大丈夫です」

「そうか、俺もさっき衛兵舎で食ったが、あんなのでは全然足りんから買い食い中だ。お前こそ、こんなとこで何をしてる?」

「午前中の訓練で破れた革の修理のために、店を探しているところです」

 リオンが左手首を見せる。

「ああ、それか・・・・・・。よし、俺も付き合わせろ。で、当てはあるのか?」

「・・・・・・ありますけど、付いて来る気ですか?」

「面白そうだからな。で、何処だ?」

 こちらは何も面白くないし、付いて来るなとも言えない。

 困惑しながらもリオンは答えた。

「・・・・・・ガザリー防具店です」

「ふむ、いい判断だな」

「そうなんですか?」

「そうなんですかって、お前が決めたんじゃないのか?」

「はい。良く分からないのでギルドに相談したら、そこを教えて貰いました」

「なるほど、なら連れて行ってやる」

 いやいや、買い食いしてうろついてて下さいと言いたいのを我慢して、リオンは黙ってついて行った。


 ネイギーの教えてくれたとおり、広場からそう遠くない場所にその店はあった。

 建物は、周りの建物と同じくらいでそこまで大きくはなかったが、頑丈そうな赤茶けた煉瓦造りで、通りに面して出入り口の扉と窓が二つ付いており、そこから店の中が見える。

 ヴォルトが無造作に扉を開けて、店へと入ったので、リオンも続いた。

「いらっしゃ―――、なんだヴォルトかい。まだ注文の兜は入ってないよ」

「よう、ガザリー。今日は催促じゃねえよ。お客を紹介してやろうと思って連れて来たんだ。感謝しろよ」

「お客? どんな?」

「おい、リオン、前に出ろよ」

「お客ってのは、こちらさんかい?」

 リオンを見るガザリーに、彼は驚いた。ガザリーはお婆さんだった。

「初めまして、リオンです。先程ギルドからここを紹介されて来ました」

「ギルド? おいヴォルト? 話が違うじゃないかい?」

「おい、話を合わせろよ。上手くいけばこの婆さんを値切れたのに、バカ正直が」

 大きな手で頭を抱えたヴォルトに、リオンは思わず苦笑いを浮かべた。

いつも拙作をお読み頂きましてありがとうございます。

なぜこいつはしゃしゃり出て来るのかと言うくらい出てきますヴの字は(笑)

お陰で思わぬ方向に進みながらも何とか書き上げることができました。

本日もよろしくお願いいたします。

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