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創世の龍が愛した神父と導かれし者の物語  作者: ナギノセン
移ろいの日々 ローテンベルグ編
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第37話 -憤慨-

20170212 改訂しました。

「とりあえず、剣の素振り、型を一通りやったら軽く手合わせするか」

「僕は剣を持って来ていませんが」

「そうだったな、倉庫へ行くぞ」

 ヴォルトは、リオンを衛兵舎の横に併設された建物へ連れて行き、木の扉を開けて中へ入った。

「その右側の棚から適当な剣を選べ、そこならどれでも刃が落してある。左の棚からは選ぶなよ、刃が付いているからな」

 刃が落してある剣は、どれも相当傷んでいた。

「見ての通りもう使い物にならなくなった剣の再利用だ。訓練中にポッキリ折れることもある。気を付けて使えよ」

「あ、はい」

 そんな危険なものを使わせないで欲しい。

 リオンの目がそう言っていた。

 大きさや重さは色々あったが、彼は、普段使っているものに一番近い形で傷みがあまりひどくない長剣を選んだ。


「お前、どうしてわざわざそんな剣を選ぶ? さっき俺の速さへ付いてきた力があれば、それは軽すぎるだろう」

「使い慣れた大きさです。これがいいです」

「そうか? なら戻るぞ」

 ヴォルトは、まだ不満そうだったが、体力強化のメニューで疲れたのかもしれないと思い、リオンの選択に任せた。

 訓練場では、他の衛兵達は剣の素振りや打ち込みを始めていた。

「出遅れたな、急いでやるぞ。まず上段袈裟切り、中段胴払い、下段摺り上げ左右百本だ」

「上段? 中段?? 下段??? 何ですか!?」

「・・・・・・お前、剣はどこで習った?」

「冒険者の先輩からですが」

 初めてヴォルトがあんぐりと間の抜けた顔をした。

「・・・・・・そうだったか。いや、そうだな。うっかりしていた。なら、やめだ。お前、体は動くか?」

「はい? 昨日の疲れもないですし―――」

「違う! 打ち込みができるくらい体は温まっているかと聞いているんだ!」

「打ち込み!?」

「そうだ、素振りと型を見てからと思ったが、打ち込みのほうが手っ取り早く実力が分かるからな。何か問題があるのか?」

 今日手合せを了承した時から分かっていたことだ・・・・・・あのバカみたいな大剣(ファルシオン)以外は。

 リオンは覚悟を決めて頷いた。

「さっきの運動で十分温まっているので大丈夫です」

「ならやるぞ」

 ヴォルトは、ニヤリと頬を歪ませながら大剣を肩に担ぎ、リオンも先程倉庫から持ち出した長剣を腰に差し、石畳が敷かれている場所へ移った。


「本当にその大剣を使うのですか?」

 リオンにはとても信じられなかった。

「ああ、先に忠告しておいてやるよ。まともにこの大剣を受けたら、お前の剣など三合も持たないだろうから、そのつもりで注意しろよ」

 確かに、あの重量をこの傷んだ剣で受けるのは非常に心もとない。

「いつでもいいぜ、来い!」

 リオンは、ヴォルトの攻撃を受けるよりは先に仕掛けることを選んだ。

 彼は間合いを詰めて、剣を抜きがけに中段を右払いに一閃したが、ヴォルトは悠々と無造作に構えた大剣の腹で受け止めた。

 攻撃速度は、剣だけを見ればリオンの方が当然速いはずだが、彼は手足に(バラスト)を付けており、ヴォルトにしてみれば予想よりかなり遅かった。


「お前、本気でやってるか?」

「もちろんです」

 話をしながらも、リオンは中段を左右に突き、円弧を描いて剣を移動させ再び中段右払いをしたが、今度はその剣にヴォルトが大剣の腹を上から叩きつけた。

 リオンは、剣から伝わる振動と重さに堪らず剣を落とした。

「攻撃が単調すぎるな。それに二度も同じ技を短時間の内に見せるな!」

「すみません。もう一度お願いします!」

 最初は、衛兵と仲良くするためだけの手合せと割り切って、少し手を抜いていた。

 また、ヴォルトにケガをさせてもマズいと、本人が聞いたら憤慨するであろうことを考えて、力を抑えていたのも事実だ。

 しかしそれらは明らかに間違いだった。

 ヴォルトは、間違いなく今のリオンより遥かに強い。

 それを感じて、何故か今までにない高揚感を感じた。

 そして、持てる力全てを出し切って立ち向かった。

 結果、彼の剣は五本折れ、ヴォルトの大剣は折れることなく、完敗であった。


 しかし、五本目の剣が折れた時に、折れた刃先がリオンの方へ飛んでくる事故があり、とっさに左右の手首を交差させ、刃先を防いだので錘を着けていたことがはからずも知られてしまった。

「おい、お前、その腕見せてみろ!」

 ヴォルトは大股で歩み寄り、否応なく彼の手首を掴んで、表面は革であるが、その下は金属になっているものを確認した。

「何だこれは? 籠手の手先がないやつのようだな。お前、これを最初からずっと着けていたのか?」

「ええ・・・・・・」

「そっちも見せてみろ。左右同じか―――まさか足にも着けているのか?」

「はい・・・・・・」

「だからあの程度のスピードか。こんなもの着けても、俺には勝てると思っていたのか?」

 ヴォルトは、明らかに気分を害しているようだった。

 当たり前だ、自分より弱い人間がこんなことをしていたのだから。

「いえ、これには理由があって・・・・・・」

「訓練とはいっても下手をしたら死ぬかもしれないのに、お前は全力を出していなかったことを、どう思っているんだ?」

「すみません」

 何も答えられないリオンに、背後から救い船が出された。

「ヴォルト、その辺にしておきなさい


いつもお読み頂きまして本当にありがとうございます。

次へとつなげ方がまだ思いついていません(苦笑)

本日もよろしくお願いいたします

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