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創世の龍が愛した神父と導かれし者の物語  作者: ナギノセン
移ろいの日々 ローテンベルグ編
30/682

第26話 -領主の妹-

20170211 改訂しました。

町の門でクリシュナを見送り、ヒューから別れ際に暇があれば訪ねて来るようにと商会の地図を受け取って、リオンらはローテンベルグ伯ワルターの屋敷の門をくぐった。

 ローテンベルグは、小高い丘の上にある領主の屋敷を中心にした、地方都市規模の大きな町である。

 道には石畳が敷かれ、水道も引かれている。

 町の中は、王都イズミルを参考に職種で区画整理をしており、領主が力を入れている商業区画が最も幅を利かせ、現在、ミュルツ国内で最も活気があると評判の町である。

 

 屋敷では暫く待たされた後に応接室へ通され、当主でありミゼルの兄でもあるワルター=フォン=ローテンベルグに今回の事情を説明して、屋敷に滞在する許可を得る面談へと臨んだ。

 ワルターには、事前にグレンより詳細が伝わっており、どちらかと言えば屋敷内にいる者に伝達するための儀式であった。

 そのため公務を行う執務室ではなく応接室で行われたのだが、リオンはこれまで入ったこともない大きな建物や、贅沢な調度品にも圧倒され、その中で平然としているサーシャにも少し引け目を感じずにいられなかった。

 部屋の真ん中には十名ほどが座って会議できるであろう真っ白なテーブルクロスが掛けられた円卓が、窓際には重厚な長方形の黒檀の机が置かれており、そこにワルターは座っていた。

 彼はミゼルの兄らしく、茶褐色の髪に菫色の瞳で穏やかな顔立ちをしており、サーシャの目鼻立ちは間違いなくローテンベルグのものである。

 入口の脇には、真っ白な細身の執事服を着た三十代くらいの、怜悧な顔立ちをした男性が無表情で立っていた。


 ミゼルは、起立したまま挨拶や世間話を一通り終えたところで申し出た。

「それではお兄様、妾と娘とその付き人二名の滞在をお許し頂けますか?」

「お母様、リオンは付き人ではないわ!」

 ミゼルの言葉に、サーシャが耐えられず反論する。

「お黙りなさい。申し訳ございません、お兄様。躾が行き届いておりせんことをお許しください」

「ミゼル、今は身内の者だけだから、そこまで畏まらなくていいよ」

「いえ、ここはセダンとは違います。最初のうちに慣れさせておかなければ、屋敷の者達に示しがつきません。お兄様の評判を落としては、せっかく滞在をお許しいただいても、恩を仇でお返しすることになります」

「僕の評判は、もうとっくに地に落ちてるよ。商人に成り下がった伯爵様ってね」

「そのようなことはございません。うまく領地経営ができない頭の固い古狸どものやっかみです。お兄様は立派にローテベルグ領を導いておられます」

「相変わらず外の者には手厳しいね。まあ、僕への身贔屓は置いておいて、彼、リオンだったかな、今なら客分ということにもできるが、付き人でいいのだね?」

 ワルターは、一瞬リオンを見て、すぐにミゼルへと視線を戻した。

「はい、結構です。彼は、屋敷においてサーシャの話し相手兼御者という役目がありますので、客分ではありません。また屋敷内を自由に動ける立場のほうがありがたいのです。彼が図書室へ入れるよう、グレンから文にてお兄様にお願いするように託っております」

 母の考えを聞かされたサーシャは、何も考えずに反論したことを恥ずかしく思った。

 リオンも、普段の鷹揚な彼であれば、ミゼルに対して馬車の中で陽を嫌うだけのおばさんじゃなかったのか、と些か失礼な感想を持つ程度であっただろうが、今日は雰囲気に圧倒されており、殊更ミゼルを頼もしく感じていた。

 彼にとっては、客分だろうと付き人だろうと、三か月の間、サーシャの近くにいてクエストを遂行できればどちらでもよかったが、この大きな屋敷の客分などにされると居心地が悪そうなので、内心では付き人のほうがありがたかった。


 サーシャらの反応を確認したミゼルは、グレンからの文を侍女のリナに渡し、ワルターの座る机の前へ置かせた。

「この文の件は了解した。ゼスト、図書室を管理するキーンによく伝えておいてくれ」

 ワルターは一読してミゼルに了承を伝え、部屋の入口にいる執事へ声をかけると、 ゼストと呼ばれた執事は無言で優雅に頭を下げた。

そしてワルターが徐に立ち上がると、ミゼルがすぐに低頭したので、慌てて残りの三人も頭を下げた。

「ミゼル、サーシャ、侍女リナ、付き人リオン、屋敷の滞在を許す。細かいことはゼストに聞くとよい。では下がれ」

「お許しを頂戴し心より御礼申し上げます」

 ミゼルは顔を下げたまま代表してお礼を言い、姿勢を戻すとすぐに退出しようとした。

 その後ろ姿にワルターが声を掛けた。

「ミゼル、サーシャ、後で食事を一緒にしよう」

「はい、お兄様。では後ほど。失礼致します」

 ミゼルに続きサーシャ達も退出の挨拶をして部屋を出たところに、ゼストと黒の執事服を着た三名の男が待ち構えていた。

いつもお読みいただきましてありがとうございます。

あまりお気付きではないかもしれませんが、実は第2章の第1話です(笑)

章管理という機能があるらしいので、そのうち使ってみようと思います。

相も変わらぬ拙い文章ですがよろしくお願いいたします。

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