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第15話 -ギルドの長-

20161123 改訂しました。

 カザスと共に冒険者ギルドへ戻り、IDカードを渡すと、彼は関係者以外立入禁止の控室に入り作業を始めた。

 ギルドにはまだいつもよりも多くの人が出入りしており、それぞれが今回の事件についてあることないことを話している。

 アリサは、リオンが戻ってきたことに気付きながらも他の者達への対応に追われ、彼の側に近寄ることができず、笑顔こそ崩していなかったものの唇の端を引き攣らせていた。

 お陰で彼は今回のクエストについて、落ち着いて整理をすることができた。

 三月間ほどセダンを不在にする。

 いつも安くで泊めてくれる宿屋のナダルに説明が必要になる。

 修道院にも説明へ行かなければならない。

 道具屋のカクトや門番のロペス、いつも良くしてくれる人達のところには顔を出しておきたい。

 しかしそれではとても時間が足り無さそうである。

 初めてのことに頭を悩ませていると、カザスが書類とIDカードを持って控室から出て来た。


「これが今回のクエストの依頼票だ。内容を確認して名前を書いて欲しい。そして、今回少し勝手が違うのが、長期滞在型のクエストなので、週単位でこちらへ状況連絡が必要になる。それがされないと報酬の支払いが滞るからくれぐれも注意してくれ。今から渡す書類をあちらのギルドに見せれば、こちらへ状況連絡するために必要な手続は随時やってくれるようになる。だからローテンベルグに着いたら、早めにギルドへ行くことを忘れないようにして欲しい」

「わかりました」

「そしてIDカードだ」

「・・・・・・カザスさん、クラス石が間違ってますよ」

 彼は、カザスでもミスをするのかと思いながら、クラス石が黒から茶色になっていることを尋ねた。

「間違っちゃいない。お前は今日からEクラスだ」

「でも、僕はまだFクラスになったばかりで、全然クラスチェンジの基準を満たしてないですよ?」

「何を言ってやがる。昨日、ハイオークとオーク、併せて五匹もまとめて討伐してるだろう。あれで十分だ。誰にも文句を言わせやしない。ハイオーク一匹は、オーク五匹に匹敵するとギルドでは考えている。つまり、ほぼハイオーク二匹を無傷で倒したことになる。そんなやつを、いつまでもFクラスなんかで遊ばせてられるかっ!」

 参った、本当に参った。

 どうやらアリサの誤解を解くのに失敗したらしいことをリオンは悟った。

「あれは偶々運が良かっただけなんです!」

「聞いてるよ、罠にうまく掛かってくれたんだろ? だけどなリオン、それらもすべて含めて、ギルドの長である俺が判断した。正面から戦うだけが戦いじゃない。お前にはお前の戦い方があるし、間違いなく結果が出ている。それで良いんだ」

 カザスは、リオンが昔から人知れずとてつもない努力をしていることをレギオンから聞いて良く知っている。

 また、彼が自身を過小評価し過ぎていることも。

 ハイオークなど彼の敵ではないのだが、それを言っても受け入れないだろうから口にはしないが行動で示したのだ。


「そう言う訳だから、お前はEクラスだ」

 カザスの強い眼差しに、どういう訳だよとは言えず、リオンは仕方なくIDカードを受け取った。

 何だかんだ言いながらもクラスが上がるのは、彼のような冒険者にとっては嬉しいことである。

 ただ実力が伴わなければ命に関わるだけに、あまり過大評価をされると困るという、嬉しさ半分、戸惑い半分が正直な心情だ。

「何か困ったことがあったらすぐに連絡をして欲しい。グレン様と一緒にできる限り力を尽くすつもりだ」

「はい、ありがとうございます。じゃあ早速ですが・・・・・・」

 まさに今、頭を悩ませていた出発の挨拶周りについて彼は相談を持ち掛けた。

 カザスは、彼の生真面目な性格とまだまだ経験不足なところを好ましく思いながら、引っ越すわけでもないからそこまで気にしなくて構わない、冒険者とはそういう職業だと教えてやる。

 適切なカザスの助言に感謝をしながら、依頼票への署名と、石が入れ替わったIDカードを受け取ると、彼は修道院へと向かった。


 暴れ馬騒ぎやグレンのクエスト受諾などで忙しく過ごしていると、気が付けばもう午後の遅い時間になっていて、思い出したかの様に少し空腹感を感じたので、パンを買い求めることにした。

 セダンでは、道具屋の孫娘のセリが少し前からパンを焼いて評判になっている。

 彼も好んで食べており、足早に通りを歩き決して広くない建物へ入ると、左手には革紐などの雑貨類が所狭しと並べられ、右手には昼前に作られた売れ残りであろうパンが竹籠に入れられていた。

 店には主人のカクト祖父さんはおらず、セリが薬草の陳列をしている。

「こんにちは、セリさん。パンを頂けますか」

「いらっしゃい、リオン。ちょうどよかった、今日はあの騒ぎでお客さんがあまり来なかったから結構残ってるのよ。いくつ買ってくれるの?」

 見たところ竹籠には五、六個のパンが入っているが、修道院は、レギオン神父を含めて十三人が暮らしており、これではとても足りない。

「黒パンが二十個ほどあれば欲しいのですが」

「そんなに買ってくれるの!? ありがとう、リオン!!」

 セリは店の奥へと入り、パンがいっぱい盛られた竹籠を持って来る。

「これに十五個入っているわ。そこの籠には六個、合計二十一個でどう?」

「セリさん、手持ちは銅貨十枚しかないので二十個でお願いします」

「いいわよ、一個くらいおまけするわ。リオンのことだから修道院への差し入れでしょう? 本当に優しい子ね。私もリオンみたいな子供なら欲しいっ・・・・・・あ、ごめんね、変なことを言って」

「大丈夫ですよ、気にしないでください。そんな風に思ってもらえることのほうが、僕は嬉しいですから」

「本当に優しい子ね。じゃあ二十一個で銅貨十枚ね」

 セリは、彼が孤児であったこと思い出し少し気まずい思いをしたが、彼女がそう思ってくれることのほうが、リオンは本当に嬉しかった。

 誰かに求められていると実感できたからだ。

 そして、セリにもセダンを暫く離れることを手短に説明して店を後にした。

 彼が修道院へ着くと、礼拝所の前にある広場には珍しく子供達が誰もいない。

 そこでレギオンの診療室がある建物へと向かったところ、見覚えのある金色の髪をした綺麗な女性と子供達が元気に扉から出くるところであった。

いつもお読みいただきまして本当にありがとうございます。

やっとここまで辿り着きました(苦笑)

頑張りますのでよろしくお願いいたします。

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