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第14話 -商人兼父ときどき名代-

 リオンが怪訝に思いグレンへ説明を求めたところ、グレンはサーシャへと視線を移した。

「こちらが落ち着いて戻りたいと思えば戻って来ればいい。しかし今回のことで妻はもう少し目の届くところに娘を置いておきたいらしいのだ。だがローテンベルグで過ごすにしても、今回の騒動を知られれば肩身の狭い思いをするかもしれない。自業自得とは言え、父親としては今のうちにできるだけのことはしてやりたい」

「はあ・・・・・・」

 グレンが気安く接してくれることに甘えてこのような返事をした訳ではない。

 依頼内容を聞いていると、何やら面倒な話なのであまり気乗りがしなくなって自然と出てしまったのである。

「このような事情に巻き込んで申し訳ないが、君もローテンベルグの妻の家に滞在をして、娘が寂しい思いをしないように励ましてやって欲しい」

「はい? ローテンベルグの家ってご領主様のお屋敷ですよね?」

「そうだが何か?」

 この人は何も疑問に思わないのかと、珍しくリオンは苛立ちを感じた。

 彼には身寄りがない。

 この町でこそレギオンが育ての親としていてくれるので何の気兼ねもなかったが、他の町に行けば単なる流れ者の冒険者、場合によっては浮浪者とさえ言われたこともあったのだ。

 今回殺された身分にうるさい執事が居たようなところへ行って滞在するなど、とても考えられなかった。


「畏れ多いのですがご領主様のお屋敷はちょっと―――」

「何も気にしなくて大丈夫だよ。私もただの商人の出だが、そんな私を婿として受け入れてくれた家だから堅苦しく考える必要はないよ」

 心の裡の反発と、もやもやした気持ちを抑えながらリオンは断りを申し出たが、グレンにはまったく通用しなかった。

 そもそもが分け隔てのない考え方をしていることに加えて、名代より商人であることに誇りを持っているため、グレンには領主の家であろうが関係ないのである。

 けれど商人の出とは言っても、グレンはローテンベルグでそこそこ歴史のある商家の出身なので、同列には置かないで欲しいと思ったが説得はがあった。

 グレンは、あの執事が領主屋敷に居た時にミゼルを嫁に貰い受けているのだ。

 かなりの反対意見があっただろうと思われたが、領主に気に入られて名代にもされている。

 そのことを少しは信用してもいいかもしれない。

 それに様々な薬草の本が自由に読める機会は望んでも得られるものではない。

 降って湧いたような幸運を逃すのはとても惜しいと感じられた。

「―――分かりました。どこまでお力になれるか自信はありませんがお受けします」

 己の欲求に負けたリオンは、かなりの抵抗感を抱きながらもクエストを受諾することにした。


「ありがとう!! 本当に助かる! ローテンベルグへはそちらへ向かう護衛付きの隊商へ加われるようにもするので安心して欲しい!」

 グレンは真っ直ぐにリオンを見つめて自身の両手をリオンの手へと重ね、固く握りしめてお礼を言った。

 そして急に顔を崩し、と言うかニヤけた顔を近づけて小声になる。

「でもサーシャちゃんに手を出しちゃダメだぞ。もしそのつもりなら私に声を掛けてからするように」

「はあっ!?」

 この意外とお茶目なところもグレンの人気がある理由の一つだが、サーシャとザインの話があったくせによくできるなと逆に感心させられる。

「冗談だよ、冗談」

「当たり前です」

 急にひそひそ話になった二人の状況を理解できないカザスとサーシャが少し訝しむ顔をしている。

「では、よろしく頼んだよ、リオン」

「はい、お任せください」

「リオン、我儘なお願いを受けてくれてありがとう」

「サーシャ、正式なクエストだから気にしないで。それに隊商と同行だったら危険は少ないし、僕では決して目にすることができない本を読める機会があるなんて、逆にお礼を言いたいくらいだよ」

「嘘でもそう言ってくれると助かるわ」

「嘘じゃないから。だってサーシャと知り合いでローテンベルグ(あっち)へ行っても時間の取れる人がこのクエストの採用条件だよね。それだけなら僕よりもっと適した人がいくらでもいると思うよ。けど僕が選ばれたのは、流星号が僕に懐いているからだよね? なら流星にもお礼を言いたいくらいだよ」

 申し訳なさそうにするサーシャを気遣って、少しおどけた話を続ける彼の様子を見ていた名代とギルドの長が嬉しそうに頷き合う。


「カザスさん、お願いできますか?」

「承知しました。リオン、今回のクエストは期間が不定期なのでローテンベルグのギルドにも手続をする必要がある。そのため色々と準備が必要だ。今からギルドへ行って手続きをするぞ」

「はい、お願いします」

「グレン様、出発は明日の早朝でよろしかったですね?」

「ええ、そのつもりで同行する隊商に私は今から話を通してきます。明朝ここでまたお会いしましょう。リオン、娘をよろしく頼むよ」

「はい、お任せ下さい」

「リオン、明日からよろしくお願いね。カザスさん失礼します」

 リオンとカザスは、グレンらを見送ってから冒険者ギルドへと向かった。

いつもお読みいただきましてありがとうございます。

勝手に商人のおじさんが動き出し、当初考えていたものとは違った流れになり、結果、変なタイトルになってしまいました(笑)

拙作ですがよろしくお願いいたします。

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