森の仲間 ふくろう兄さん
どうぞごゆっくりお読みになってください。
遅くなってごめん。待たせちゃった?
茶を飲むだけの筈が、坊と一緒にお昼寝してた。坊はきっと変なオーラを出してる。坊といるとよく眠くなるもの。
今回は誰の話をしようか。
色っぽいうさぎ姐さんかな。物知りなくま先生もいいね。
ああ、そうだ。今日はとても空が綺麗だから、こんな夜空が似合うふくろう兄さんの話をしようか。
夜空と三日月が似合う、優しい人。
〟ほうほう〝
「ふくろう兄さん」
ぼくと坊はそう呼んでる。
銀色の丸眼鏡と分厚い書物。柔和な笑みと控えめな態度。そう、彼ってとても穏やかなんだ。
ふくろう兄さんはいつも右翼に分厚い書物を抱え込んでる。ぼくの頭より分厚い書物。体の大きさに合わないそれをよく抱えていられると思う。物理に反してるよ。
ある時、ふくろう兄さんにその本を見せてもらった。彼が片時も離さずに持ってる本。気になるでしょ。でも残念、ぼくには分からない言葉で書かれてた。だけど読めないのも悔しいから、本に何が書いてあるか直接聞いてみた。何て答えたと思う?
「そのものの望むことが書かれてる」
だって。
読めなければ望むことも分からないんだけどね。そう思いながら嘴を鳴らしたらふくろう兄さんはいつか分かるよって少し困ったように笑った。
本に書かれてる、ふくろう兄さんにとっての望み。無性に気になったから、坊みたいに馬鹿正直に聞いてみた。ぼく、いつもはそんなに深いこと聞かないんだけどね。それでも彼は答えてくれた。
「森のみんなが笑顔でいること。その方法」
ずるいよね。そんなことを静かに笑顔で言われたら参ってしまうじゃないか。ふくろう兄さんはずるい。ずるくて、優しい。
最近気づいた。ふくろう兄さんの本が少しずつ厚みを増していってること。本の言語を操れるのは森の中でもふくろう兄さん一羽だけってこと。ふくろう兄さんが本を書き足してるってこと。
最近知った。ふくろう兄さんの持つ書物には森のみんなの好きなことや好きなもの、苦手なことが書かれてるってこと。
ふくろう兄さん、忘れるのが嫌なんだって。些細なことでも、忘れてみんなが嫌な思いをするのが嫌なんだって。
誰が教えてくれたかは内緒。
だからそれとなく聞いてみた。ぼくの望んでることについて。
「きつつきくんが望んでることかい? うーん、なんだろうねえ…」
ふくろう兄さんは悩んだ素振りを見せてからこそっと耳打ちをしてきた。
〟今日が永遠に続きますように、かな〟
どうやら情報は間違っていないようだね。
ふくろう兄さんはどんなフクロウか。
ぼくはこう答える。
他の動物のために情報を集める、そんなフクロウ。
〟ほうほう〝
今夜はふくろう兄さんと夜の散歩に行ってこよう。
じゃあ、またね。また聞きにきてよ。約束だよ。
お読みいただきありがとうございました。




