封魔殿
「はぁあ!」
フェルナとセイレーンは封魔殿への侵入を成功していた。
そこに待ち受けていたのは無数の機械人形だった。
機械人形一体の攻撃力はそこまでだが、数が数である。
フェルナは紅月を抜き、手加減抜きで機械人形を壊していった。
「村雨六之型・六花の花吹雪!!」
紅月は視認不能の速さで機械人形を破壊していった。
しかし、その数はいっこうに減る気配がない。
「あ~、雑魚のくせに数だけは多いな」
「一応はこいつらも守護者だからね」
守護者というのは、遺跡ごとにいる番人のようなものだ。
この封魔殿も一種の遺跡なので当然守護者はいる。
「でも、こいつらは守護者の分身だろうな」
「ええ、数を見てもね」
そこでフェルナはセイレーンにこんな頼み事をした。
「セイレーン、オレが魔法を発動するまで守ってくれないか?」
セイレーンは驚いた顔で答えた。
「あら、珍しい。
貴方が守ってなんて言うなんて」
「この魔法はすごい集中力がいるんだよ。
20秒でいい、頼んだぜ」
「任せなさい」
そう言ってフェルナは魔力を集中させた。
セイレーンは近づいてきた機械人形たちを水の刃で蹴散らした。
が、数百体倒したところでセイレーンは少しバテていた。
「フェルナ、まだ?
流石にこれ以上は・・・」
と振り向いたセイレーンは驚いた。
「それって・・・」
「想像している通りだと思うぜ。
さてセイレーン、絶対に防げよ?」
フェルナがそう言った瞬間、このフロアの床全体を覆う魔法陣が浮かび上がった。
その色は・・・黒。
セイレーンは慌てて防御魔法を展開した。
それが合図だったのか、フェルナは魔法を発動させた。
「地獄の怨嗟!!」
魔法陣は黒い光を放ち、その中に機械人形を飲み込んでいった。
闇属性魔法『地獄の怨嗟』。
闇属性の中でも上位に位置する魔法を20秒で展開してしまった。
その結果、無数にいた機械人形は全滅した。
「恐ろしいわね・・・」
「まあそう言うなって」
フェルナはそう言って下へと続く階段を探した。
が、それは見当たらなかった。
「あれ?階段がないぞ」
「うそ、そんな・・・」
セイレーンもあたりを見渡したが確かに階段と思しきものは無かった。
「どうする?」
「どうするって言われても・・・」
このままではあの子を助けられない・・・。
私はどうすれば・・・
そう頭を抱えて悩んでいるセイレーンにフェルナは
「なあ、一つやってみてもいいか?」
「何を?」
そう問い返すとフェルナは手のひらに魔力を集中させた。
「いや、この床をブチ抜いてみようかと思ってね」
「へ・・・?」
フェルナは手のひらの魔力を使って魔方陣を描いた。
色は、黄金のように輝く黄色。
「じゃあ景気良くいくぜ!!」
―――――雷属性の擬似神魔・雷神の槍、発動!!
魔法陣は雷の大きな槍を作り出し、
ドカンッ!!
と大きな音と共に床を貫いた。
「な・・・」
「いや~、きれいに貫通したな」
フェルナは笑いながらそう言うと下に降りていった。
「あなたは本当に馬鹿ね!!」
と悪態をつきながらフェルナを追って下に降りた。
下に降りるとそこは水晶で出来た神殿のような場所だった。
そこにある祭壇にひときわ大きい水晶が鎮座していた。
その中に見覚えのある顔があった。
「レイラ・・・」
「・・・」
レイラと呼ばれるその女性は、水晶の中で静かに目を閉じ眠っていた。
「さて、じゃあこいつを一旦水の国に持って・・・」
そこまで言った時、フェルナたちの後ろの壁が大きな音と共に爆破した。
そこから出てきたのは大きな巨人像だった。
「守護神!!今になってか・・・」
「どうするの?このままだと・・・」
フェルナは考えた。
このままではレイラの水晶が壊されてしまう。
転送しようにも魔法陣を展開するのにかなり時間がかかる。
フェルナはその点をふまえセイレーンにこう頼んだ。
「セイレーン、オレがこいつを食い止めているうちに転送魔法を用意してくれ」
「・・・わかったわ。
20分だけ頂戴」
「オッケー」
それだけの会話をすると二人はそれぞれの役目を果たすため、場所についた。
フェルナは巨人像の前に、セイレーンは水晶の前に。
「さて、久しぶりに本気出さないとな」
フェルナは口元に笑を浮かべ、魔法陣をいくつも展開した。
そのすべてが違う属性の魔法だった。
「さあ、始めようぜっ!!」