練成の女神
土の国編、バトルシーンが少ないんですよね、構想の中では。
フェルナは魔法『炎陽球』を放った。
それも入場しようとしている土の国の門へ、だ。
「ちょ、・・・!!」
雷狼の乗員のほとんどが目を疑った。
だが、そこにいるものを見れていたものは驚かなかった。
そう、魔法は
「ちょっと、何するのさフェルナ!!」
門に当たる前に土の壁に阻まれたのだから。
ただの土の壁でないことは誰の目から見ても明らかだ。
では問題は誰がこの壁を出したのか。
その答えは土の壁から出てきた。
「いきなり魔法ぶっ放すなんて人のやることとは思えないよ!!」
「悪い悪い、つい、な?」
「ついで済む問題じゃないよ!!」
フェルナにもてあそばれている何かは見た目は肌が少し黒い少年のように見えた。
しかし少しでも魔法に精通しているものにならその少年がただの少年でないことが分かった。
「土の、精霊王・・・」
誰かがそうつぶやいた。
その言葉に少年は
「うん?誰か僕のこと呼んだ?」
もう間違いなかった。
目の前にいる少年は精霊王の中で最硬の防御力を誇る土の精霊王・レアードだった。
そんな一騒動の後、雷狼は土の国の中に入国し、近くの船倉庫に格納させてもらった。
そこでフェルナは1日の自由時間を与えた。
自由時間といっても
「せっかく土の国に来たんだ。自分の武器を新調するなり直すなりして来い」
とみんなに言った。
当然乗員は嬉々とした表情で土の国の鍛冶街へと散らばっていった。
フェルナは乗員に命令を出した後、レアードと近くの酒場に入った。
土の国はものづくりで栄えた国だ。
その技術は国外へ流出したことはなく、この国で作られた武器はどの武器よりも高値がつく。
というのもこの国は鉱山の上に作られており、その鉱山からは上質な鉱石が産出するからだ。
それだけではなく、レアードの恩恵でその鉱石の質がさらに上がっている。
このような理由があって土の国は今の姿をしているのだ。
「で、なんで門の外でオレたちのことを見張ってたんだ?」
と酒場でオレはレアードを尋問していた。
オレが先ほど魔法を放ったのはレアードの気配とはまた違った気配を感じたからだった。
それは
「幻惑の魔法を使ってたんだよ」
という言葉を信じることにした。
そしてその次の質問にレアードは
「・・・・・・」
だんまりを決め込んでいた。
オレは特に急かすこともせず、注文したノンアルコールの酒を飲んでいた。
そもそも乗員たちを散らばらせたのはこれが理由でもあった。
何か言いにくい事情がある。
そう思ったオレはこいつを酒場に誘い、2人きりで話しているのであった。
と、5分ほど沈黙していたレアードだったが、
「・・・フェルナ」
「うん?」
ついに沈黙を破り、レアードは真実を告げた。
「・・・!!」
そのことのフェルナはただ、驚愕するしかなかった。
フェルナとレアードが酒場で話している頃。
ミミも他の乗員たちと同じく鍛冶街に来ていた。
土の国は大きく城下町・鍛治街・住宅街の3エリアに分かれている。
その中でやはり鍛冶街が一番大きい。
「さて、鎌の鍛冶を行ってるところはあるかな?」
とミミは店を探していた。
ミミの武器は大きな鎌だ。
他の武器とは違い、『引く』という攻撃手段があるこの鎌をミミは愛用していた。
だが、特殊な武器であるがゆえに調整できる人があまり存在していない。
なのでこの機会に直しておこうと思ったのだが、
「ここでもいないのかな?」
と少し困り果てていると
「何をしているんですか?」
と後ろから声をかけられた。
気のせいかとも思ったが、振り返ってみるとそこには一人の女性がいた。
それもこちらをじっと見て。
「え、えっと・・・」
「何か困っているなら手伝いますが?」
女性は微笑みながらこちらに問いかけてきた。
女性は紅く燃え上がるような髪色で、長い髪を後ろで束ねていた。
背はすらっと高く、腰にはポーチを提げていた。
明らかにこの国の人とは違う装いをしている彼女は
「ああ、ここには結構来てますからね。ある程度は地図が頭に入ってるんですよ」
とまるで心を見透かさしたかのように答えてきた。
驚いたミミをみて、
「別に心が読めるわけではありませんよ?
この状況であなたが考えそうな疑問を推察したまでです」
その言葉にさらにミミは驚いた。
その女性は口に人差し指を当て
「これは秘密ね?あいつに知られるとちょっとまずいから」
「あいつ?」
「ええ、まあそんなことより」
と女性は無理やり話題を変えて
「何か探しものがあったのではないんですか?
鍛冶なら少しはできるし、多少ならお力になれると思いますよ」
「・・・じゃあ」
とミミは女性に鎌のことを伝えた。
すると
「確かに鎌の鍛冶を行ってる店はこの国にはありませんね」
「そうですか・・・」
少し残念だったが、まあ仕方あるまい。
旅をしているうちにいつか見つかるだろう。
そう割り切ろうとしたミミに、女性は
「まあここで会ったのも何かの縁ですし、今回は無料で行いましょう」
「え?」
「ついてきてください」
と女性はどこかに歩いていった。
何のことかわからなかったがミミはその女性についていった。
ついたのは人のいない鍛冶場みたいなところだった。
「ここはフリーの鍛冶スペースで、店とか自分の火事場を持っていない人に貸している場所なんです」
女性は炉の一つの前に立ち、
「あなたの武器、少し貸してくれますか?」
「あ、はい」
どうぞ、とミミは女性に自分の鎌を渡した。
それを見て女性は
「・・・いい鎌ね。本当に大事に使っているんですね」
「ありがとうございます」
自分ではそう思っていても改めて他人に言われると少し照れくさかった。
女性は魔法で炉に火をともし、ポーチからいくつかの鉱石を取り出した。
そして
「では、鍛冶を始めますね」
「・・・え?」
そう、女性は今から鍛冶を行うというのだ。
それも鎌の。
しかも、鍛冶に必要な道具を一つも使わず。
女性は左手にミミの鎌を持ち、右手に鉱石を持ちながら魔法陣を書いた。
「魔法陣形成・聖炎の炉起動・練成開始・・・・」
機械的にそうつぶやきながら、女性は鍛冶を始めた。
女性の書いた魔法は最初は赤色だったが、今は黄金色に変わっていた。
その中にミミの鎌を入れると魔法陣は鎌を包み込んだ。
そして
「・・・練成終了。形成せよ」
その言葉を合図に魔法陣は一瞬で消えて、そこにはミミの鎌だけが残っていた。
その鎌は見た目は変わっていなかったが、ずっと使ってきたミミは変化したことがわかった。
しかし、その変化は本来ありえない。
なぜなら
「鎌に精霊を宿らせた・・・?」
「正解、まあ一種の精霊だけなんですけどね」
本来武器に人間が精霊を宿らせることなんてできない。
それを目の前でやってのけた女性は
「はい、どうぞ」
「・・・・」
驚きすぎて御礼すら言うことができなかったミミだったが、何とか落とさずに受け取ることができた。
女性は炉の火を消し、
「それじゃあ、私はこれで失礼しますね。
また会えることがあれば、そのときはまたよろしくお願いしますね」
と言って去っていこうとした。
だがギリギリでわれに返ったミミは
「ありがとうございました!!
あの、お名前を効いても良いですか?」
と女性に聞いた。
女性は歩み始めていた足をとめ、振り返りこう言った。
「私の名前はフェイ。
またの名前を『練成の女神』アイシスと申します」
名前では2人目、登場は初となる神様です。
まあ、アイシスは自分の構想の中ではちょこちょこ出てくるキャラなのでよろしくお願いします。
あと、新作を書き始めました。
理由は、まあこれの息抜きのためです(笑)
もしお暇があればそちらのほうも読んでいただけると幸いです。
今回はこれで!