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神々の黄昏  作者: 天魔の担い手
水の国編
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ナリスナ平原の戦い4

フェルナは目の前の騎士の攻撃を凌ぐので精一杯だった。

一応まだ気刃は残っているがそれも擬似聖剣に万が一触れてしまったら消えてしまうだろう。

ゆえにフェルナはただ避けることしかできない。

しかし


「フレア」

「・・・!?」


フェルナの周りに突如として炎の壁が現れた。

それに気をとられフェルナは騎士の攻撃をもろに受けてしまった。


「がはっ!!」


鋭く重い一撃。

そんな攻撃を食らったフェルナは軽く十数メートルは吹っ飛ばされた。

地面をバウンドし、勢いが落ちてからしばらく地面を転がり、やっと止まってもフェルナは立ち上がることは出来なかった。


「くっ・・・」


幸いなことに腕にヒビが入った程度のようだった。

しかし、体には先ほど受けた衝撃がまだ残っていた。


「ここまでとはな・・・」


あの騎士は俺では勝てない。


実のことを言うとフェルナは戦う前、というよりもセイレーンと会議したあのときよりも前からいやな予感がしていた。

だからこそ紅月、カエデ、ナギサには残ってもらったのだ。

万一にも彼女たちに危害が及ばないように。

その予感が的中してしまったようだ。


フェルナは自分の体に治癒魔法をかけた。

しかし治癒魔法が完了するまで、フェルナでも時間がかかる。

そんな時間を騎士がくれるはずは無かった。

でかい質量の騎士はそれに見合わない速さでフェルナに接近し、擬似聖剣を振り上げた。


「『疾風』高速発動!!」


フェルナは『疾風』を詠唱や魔方陣を描くのを省いて一瞬だけ魔法の効果を得る高速発動で使ってその場から緊急離脱した。

一瞬後にフェルナがいた場所には擬似聖剣が振り下ろされていた。

間一髪、擬似聖剣の攻撃を凌いだフェルナだったが、そこまでだった。

ボロボロの状態で使った『疾風』はフェルナの体に更なる負担をかけてしまった。

治癒魔法も切れ、フェルナにはもう何もする力が残っていなかった。

その場に倒れ、手を地面につけた。

そこに迫るは止めを刺そうとする騎士。

絶体絶命だった。






もしここに誰か傍観者がいたのであれば、誰しもがそう思うだろう。

もし騎士に心があるのであれば、間違いなくこれで終わりだと思ったであろう。

もし倒れているのがフェルナでなければ、ここで終わっていただろう。

だがしかし、そこに倒れているのは・・・


「さて、茶番はここまでかな?」


瞬間、騎士の下に現れたのは巨大な魔方陣。

それを見た騎士は


「危険度大、回避不可と判断。

 防御体制に移行し、

「やらせるかよ!!」


防御体制をとろうとした騎士はしかし、とることは出来なかった。

その前に魔法は発動した。

魔方陣から溢れるは雷の嵐。

それは魔法であるにも関わらず、対魔結界を展開している騎士にわずかだがダメージを与えた。


「ちょっと危なかったかな?」


そう言ってフェルナは何事も無かったかのように立ち上がった。

その体には怪我一つついてはいなかった。

まるで先ほどまでのことが嘘だったかのように。

まるで、世界すらも騙したかのよう。

そうこうしている間に騎士は擬似聖剣を魔方陣に突き立て、魔法を消した。

その体には無数の刀傷が刻まれていた。


「修復・・・」


すぐに修復を始めたが先ほどまでより少し時間がかかったかのようにも思えた。

しかし、そんなのは誤差の範囲内ですぐに修復は終わった。

その間にフェルナも体制を立て直した。

先ほど発動したのは攻撃魔法だけでなく、その中に治癒魔法も織り込んでいたのだ。

攻撃魔法によって稼いだわずかな時間でフェルナは傷を癒したのだ。

しかし、これでやっと振り出しに戻っただけで圧倒的に不利な状況であるのは変わらなかった。

さきほど魔法があたったのは、対魔結界の隙間を不意打ちでうまくつけただけだった。

だから、次の瞬間に起こったことは完全にフェルナには予想していなかったことだった。

それは氷炎の斬撃。

騎士はまたもや完全に不意を突かれた形となり、傷を負った。

その傷を負わせた張本人たちは騎士に背を向け、フェルナのところへと歩いてきた。


「・・・お前たちにはお使いを頼んだはずだが?」

「あんなのすぐに終わったわよ」

「私たちにはとても簡単でしたので」


二人、カエデとナギサはそういってフェルナの前に立った。

その手には剣が握られている。

そしてその剣をフェルナに突きつけ、こう言った。


「さてフェルナ、私たちに言うことは?」

「寛容な私たちは置いていかれたことに怒っていませんので」

「・・・」


十分怒っているじゃないかと心で思いつつ、フェルナは二人に


「ありがとう」


ただ感謝の言葉を言った。

そうだ。

オレは一人なんかじゃない。

なら一人で戦うなんてのは、あまりにも馬鹿だった。

二人はフェルナの言葉を聞いて、突きつけていた剣を収めた。

そして何も握っていない手を差し伸べた。


「私たちはあなたの剣」

「さあ、行きましょう」


フェルナは二人の手を取った。

すると二人はその体から光を放ち、その体を剣の形に変えた。

剣は炎と氷を纏っており、その姿は原初の大地を彷彿とさせた。

騎士はその姿を脅威と感じたのか、擬似聖剣の輝きが先ほどよりも増した。

しかしフェルナは負ける気がしない。

先ほどまでは危険だからという理由で二人を連れてこなかった。

だが、握ってわかった。

こいつらを握っているだけで力がわいてくる。

危険?

ああ、それは二人に使う言葉ではなかった。

むしろ、


「お前に使うべきだったな、騎士」

「・・・」


騎士は何も言わない。

だが、その無表情な目に少しの恐怖が映った気がした。

フェルナは剣を構え、不適に笑って宣戦布告した。


「さあ、第二ラウンドの開始だ!!」

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